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味のない蜜  作者: megu
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最悪のバレンタインデー

初めての投稿になります。書くのがあまり早くない

ので、気長にご覧ください。


―第1話―


今日は2月18日。世間はバレンタインデーである。

この日私、笹川ひかるは、とある一大決心をしよう

としていた。


なんて…大袈裟に言ったけど、大抵の人が予想して

いるだろう。そう、好きな男子にチョコを渡すだけ

である。


しかし今改めて考えると緊張するし、私にとって

は人生の一大事と言える。似たような経験のある人

なら分かる筈であろう。


とりあえず、いつものように学校に到着し、なに 食わぬ顔で校門をくぐる。すると…


「おはよう、ひかる」


1人の少女が私に話しかけてきた。彼女の名は、

前山 千穂。私のクラスメイトで、良き相談相手

でもある。


「準備してきた?恋するお嬢さん」


千穂は、そう言って私を少しからかう。私はそれ

に対して、「してきたよ」と返す。


勿論、好きな男子に渡すべく、手作りのチョコを

持参した。校門の前で、しばらく千穂と喋っている

と、問題の 「彼」が現れた。


「―――っ!!」


私は思わず息を呑んでしまう。彼の名は、

一ノ江 佳。千穂と同じくクラスメイトであり、今回

私が想いを寄せている対象である。


「おはよう」


彼は出会った同級生に挨拶を施す。決して饒舌

とは言い難く、どちらかと言えば無口な彼だが、

礼儀正しく、また口調も丁寧である。


成績も良く、周りからの評判も上々である。更に

女子との浮わついた話もなく、真面目で品行方正に

従った優等生と言えよう。私なんかが好きになる

なんて、おこがましい程である。


彼は私と千穂にも「おはよう」と言葉を投げ掛ける。


「お…おはよう」


私は思わずどもってしまった。


「おはよう一ノ江くん!!」


千穂は元気よく挨拶する。私もあんな風になれた

らな…。


一ノ江くんは、そのまま下駄箱へと入っていく。


「はあ~…」


私は、顔を両手で包んで溜め息をついた。恐らく

相当、顔が赤かった筈だ。


「大丈夫?」


千穂が心配そうに言う。私は「大丈夫だよ」と答え

私たちも下駄箱へ向かった。


教室に入ると、早速千穂からの質問攻めとなった。


「で?どうやって渡すの?やっぱ机とかに入れとく?」


私は首を横に振る。


「直接渡そうと思う」


「へえ~…意外と大胆だね」


千穂はあからさまに驚いた顔をする。本人は素なの

だろうけど。


「でも大丈夫なの?さっき話かけられただけで顔

赤くなってたじゃない」


「それは…そうだけど…」


私は、少し距離をおいてクラスメイトと話す

一ノ江くんを見つつ、こう切り出した。


「やっぱり…好きな人とは…直接向き合わないと」


「ふーん…まあいいけど」


と…こうは言ってみたものの…なかなかタイミング

が上手くいかず、とうとう放課後となってしまった


皆が部活へ、帰宅へと動き出す中、私は困り果て

ていた。声をかけようにも、一ノ江くんはいつも

男子の友達と一緒にいるためかけづらい。


「どうするのよ…」


千穂がじれったそうに詰め寄る。


「うぅ…どうしよう」


「ああ、もう!!」


千穂は苛立たしそうに唸ると、一ノ江くんのほう

に顔を向け…


「ちょっと一ノ江くん!!」


「なんだい?」


「ひかるが話あるって!!」


「ちょ…千穂!!」


私は慌てて千穂を制止するが、後の祭り。一ノ江

くんは一ノ江くんで怪訝な顔をしている。


「本当かい?」


「え…あ…」


「ほら、ハッキリしなさい」


千穂に促され、私は頷く。


「ちょっと待ってて」


一ノ江くんは男子の友達にそう言うと、こちらに

向かってきた。


「で?話って?」


「あ…えっと…今は人が多いから…」


なんとなく察したであろう彼は、先ほどね友達に

先に帰るよう言った。千穂も、空気を読んで帰る

体制に入ると、こう呟いた。


「バシッと決めなさいよ」


「うん…ありがとう千穂」


…皆が帰り、教室は私と一ノ江くんの二人きりに

なった。


「話ってなに?」


日と状況からして気付きそうなものだが、彼は私に

質問してきた。


私は、今朝より顔が赤くなり、喉を詰まらせたかの

ように言葉が出てこなかった。


「あの…」


「ん?」


やっぱりダメかもしれない…と、先ほどの千穂の

言葉が頭をよぎった。


『バシッと決めなさいよ』


…そうだ。自分で決めたんだ。直接向き合うって…

だから…最後までやり遂げる!!


「あの…」


私はチョコを差し出し、想いを告げる。


「私、一ノ江くんの事が好きだった…これ、

受け取って下さい!!」


余計な言葉は加えず、本当に言いたいことだけを

言った。暫く、二人の間に沈黙が流れる。拒絶される

のだろうか、迷惑がられるだろうか、そんなことを

考えていた私だったが、彼が発した言葉は…


「ありがとう」


…私は、「えっ…」となった。しかしそれは、受け入 れられたという驚きではない。文章だけで見ると、

まんざらでもない状況に見えるかもしれない。違う

のである…


「ありがとう」と言った彼からは、何の感情も感じ

られなかったのだ。照れている訳でも、困惑している 訳でも、拒絶している訳でも、ましてや喜んでいる

訳でもなかった。全くの「無」であったのである。


受け入れられるとか振られるとか以前の問題だった。


「ありがたく貰っておくよ。じゃあね」


そう言って彼はバレンタインの、しかも本命チョコ

を、風邪で休んだ時のノートの写しのように扱い、

淡白な台詞を発するとそのまま足早に帰っていった。


私はと言うと、あまりの事に呆然となり、誰も

いなくなった教室に突っ伏してしまった。


あまりと言えばあんまりである。無関心にも程があ

るのではないか。期待をしていた訳ではないけど、

まさかこんな形で打ちのめされるとは…


私は、好きな人に告白して、見事に撃沈した。

本来ならこれで終わりだし、それなら最初からこの

一言で済んだ話である。


しかし、物語は寧ろ、これから始まるのであった。


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