異世界料理事情
久しぶりの更新です。
我慢が出来ない、有り得ない、怒りで腸が煮えくりかえりそうだ。
怒りの原因は俺に出されたオークの腕の丸焼き。
(筋切りしてないから硬いし血抜きも半端で臭みも消してないし下味も着けてない。しかも毛が残ってんじゃねーか。素材を馬鹿にしてんのか!?)
最も、怒りの声は心だけに留めておく。
筋切りが出来るナイフがないのかもしれないし、胡椒が同じ重さの金と交換された時代もあったんだし。
何よりここはアルバで絶対的な権力を有している神殿だ、俺を人知れず始末出来る事も可能だろう。
「すいません、ちょうど料理スキルを持っている者が外出中でして」
(いやいや、スキル以の問題だろ?)
「いえ、素材を活かした素敵な味だと思います…きっと」
俺は評論家じゃなく料理人だ。
作り方を聞かれたんならともかく、ご馳走になった料理に文句をつける気はない。
「それなら安心です。早速ですがサカモト様にお願いがあります、街道に出る盗賊を倒して下さい」
来たー、早速面倒事が。
盗賊退治と言えば聞こえが言いが早い話が人殺し。
そして1人を殺せば、その家族や友人から恨まれる可能性が高い。
「私はまだこの世界に来て日が浅いので、自分の実力が分かりません。神殿に迷惑を掛けたくないので、仲間に相談をしてからで宜しいでしょうか?」
とりあえず詳しい内容が書かれた依頼状だけを受け取っておく。
…前金なんて受け取ったら断れないし。
当日の予約キャンセルで何回も仕込みが無駄になった俺にそんな事は出来ない。
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ロークと合流した俺は依頼書を手渡して依頼を受けるかどうかを相談した。
「確認されている盗賊は3人か…金も高いし受けても良いんじゃねえか」
「でも盗賊にしては人数が少なくないか?後詰めとかがいたらお終いだぞ」
ゲームならともかく多人数相手に無双なんて出来る訳がないんだし。
「こっちの世界の盗賊とか山賊は神殿からスキルを授けてもらえなくったスキル切りって呼ばれる連中だから大人数にはならないんだよ。それに盗賊退治はグローリーが高いから本来は騎士様とかに優先的に依頼がいくんだぜ」
つまり、神殿に逆らった上に悪い事をした奴には高いグローリーをかけて見せしめにしてやると。
「しかし、そんな事になるんなら何で盗賊なんかになるんだ?」
どう考えても神殿と敵対するのは得策には思えない。
「スキル切りをされたら町で生活をするのが難しくるんだよ。まっ、スキル切りなんて人殺し、詐欺、盗みの常習犯とかじゃなきゃならないがな」
神殿にしてみれば民衆はグローリーを稼ぎだすお得意様だから積極的にはスキル切りをしないのかもしれない。
「盗賊を殺したりしたら逆恨みされたりしないのか?」
お父様のかたきーっとか言って背中をブスリなんて勘弁して欲しい。
「それも安心しろ。スキル切りされた奴を一番なんとかして欲しいのは家族なんだぜ。でも生け捕りが一番だけどな」
「生け捕りか…怪我の具合は関係ないんだろ?」
それなら俺の得意分野だ。
「なんかやばい顔になってんぞ。トラの戦い方はえげつねえから飯が不味くなるんだよな。とりあえず長丁場になって良いように食料を買いにいくぞ」
ロークに連れられて町に出るとある疑問が解決した。
「シチュー、下味のついた肉、ドレッシングの掛かったサラダってなんだよ、これ?」
店には様々な出来合いの料理が売られていて客は木の箱に詰めていく。
だけどサラダ1つが2千ゾロートなんて高過ぎだろ?
「料理だよ。料理は料理スキルがなきゃうまく作れないんだぜ」
…サラダ作るのにもスキルが必用なのかよ。
「ローク、料理人としてはこんな高い金を払うのは馬鹿らしいんだけど。俺が作れば安く済むぞ」
「それはやめておけ。神殿に睨まれるし調味料は料理スキル持ちにしか売らないんだぜ」
絶対に盗賊を退治したら神殿と交渉してやる。
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アルバ某所
…先輩の作った太巻きが食べたい、先輩の作った鶏の唐揚げが食べたい、先輩が作ったチャーハンが食べたい、先輩が作ったティラミスが食べたい…
「ルーチェ様、お食事を残して具合が悪いんですか?」
だって先輩の料理は愛情がたっぷりとこもっていて味も抜群なんだぜ。
俺は体についている糸に手に持つ。
この糸の先には大切な愛おしい先輩がいるんだよな。
だけど俺はもう世界を渡らないって決めたんだ…。