魚釣り?蛙釣り?
蛙の鳴き声を追って行くと広い草原に出た。
「トラ、あれ蛙だよな?牛よりでかい蛙なんて初めて見たぞ」
ロークの言う通り、草原で大型トラック並みの茶色い蛙が一匹、一生懸命に鳴いている。
「あれがプロテクションフロッグか…でかい上に皮が硬いんだよな。ザコ、どうやって倒すんだ?」
「誰も倒すなんて言ってないだろ?ルーチェさん、天使を拘束出来る法具で紐状の物はある?」
「あるけどプロテクションフロッグには効かないし10級以下じゃなきゃ効果は薄いですよ」
ルーチェはそう言うと白い紐をザコに手渡した。
「ありがと、次にゲイルって天使を喚んでもらえますか?」
「ゲイル?分かりました…光の天使の長、ルーチェ・ピェールビィの名において命ず、ゲイルよ姿を現せ!!」
ルーチェの声に呼応して地面に魔方陣が現れ光の奔流が溢れだす。
「ルーチェ様、命によりゲイル馳せ参じました。何なりと御命令を」
ゲイルは俺の時と違い、別人もとい別天使の様に真面目な表情をして膝まずいている。
「あー、俺も用事が、あるけどその人に頼まれて喚んだんだよ」
「いやー、感激っす。感動っす、まさかあの高名な天使ゲイル様にお会いできるなんて!!良かったら卑しい私に祝福を与えてもらえるっすか?」
ザコは土下座したままゲイルに近づいていく。
「本来なら応じないのだが、他ならぬルーチェ様の紹介だ…おい、何で俺に紐を巻き付けるんだ?」
ザコは騒ぐゲイルを無視して、紐と釣糸を結びつけた。
「ダチが世話になったみたいだから意趣返しだよ。とりあえずグラビティウエポン」
「か、体が重くて動かない。これは拘束法具だと?」
「ほい、トンマ。活きの良い生き餌が手に入って良かったな」
ザコはそう言うと、ゲイルが繋がれている釣竿を俺に手渡してきた。
「醜く卑しい人間が高貴な天使を拘束するとは天罰がくだるぞ」
「残念ながら俺が信仰してる神様は、この世界の神様じゃないか天罰はくだらないんだよ。トンマ、蛙は動くモノに食い付く習性があるんだぜ。異世界で魚釣りじゃなく蛙釣りと洒落こむか」
「先輩、財津先輩はゲイルでプロテクションフロッグを釣るつもりなのか?」
「多分な。まあ、蛙は食い物じゃないと分かったら吐き出すらしいから大丈夫かもな」
でも口で押し潰すらしいし、蛙に食われるなんてトラウマになるだろうな。
「生き餌?止めろ…じゃなく止めて下さい。あんな蛙倒せば良いじゃないですか?」
「天使に棲息地を奪われたのに、それじゃあんまりでしょ。ルーチェさん、トンマを抱えて飛んで下さい。トンマ、蛙の目の前でうまく動かせよ」
「お、おう。ルーチェ、いいのか?」
ルーチェにしてみればゲイルは部下になるんだし。
「とりあえず飛ぶね。先輩、落ちたら困るからギュッとするからな」
「ルーチェ様、なんでそんな猿人と親しくしてるんですか?助けてくださいよ」
「面白い事を教えてやろうか?お前が無理矢理連れてきた坂本虎馬はルーチェさんの想い人なんだよ。せいぜい蛙の口の中で反省するんだな」
ゲイルに追い討ちをかけたザコにみんながドン引きしていた。
ドン引きはそれだけじゃなかった…ザコはプロテクションフロッグがゲイルをくわえた瞬間に何かを投げてきた。
「必殺、トリモチシールドボール」
「ザコ、トリモチって蛙の口が開かなくなるだろ?」
「大丈夫!!蛙は鼻呼吸だから。ルーチェさん、蛙を傷つけない様に網の法術で拘束して下さい。やるのはお仲間さんでも良いんで。そうしたら出来るだけ大勢の天使で蛙の仲間がいる所まで運んで下さいね。あっ、ロークさんを一番目立つ位置にして下さい…領民にの皆様に見える様にね」
それは幻想的な光景だった、大勢の天使が蛙を運んで行く。
それを指揮するのは行方不明になっていた公爵家の長男。
「先輩、財津先輩ってすげえな。実質的な被害を出さずに解決したんだぜ。その上、領民の心をロークに移しちまった」
ちなみにザコに復讐しようとしたゲイルは逆恨みしたイスラにボコボコにされていた。
虎馬は次が終章になります




