天使の正体
とりあえず今日は3話更新します
歩いて歩いて、ようやく着いた村には外国の方しかいませんでした。
来客が珍しいのか黒髪黒目が珍しいのか村人は俺を遠目から見てザワついている。
決して俺のブサメン具合に驚いてるのではない…そう信じたい。
村の建物は木造の小屋みたいな物が多い。
そして村人の着ている服は中世の布の服みたく見える。
(おいおい、二十歳過ぎて異世界かよ。しかも明日はパスタフェアーの初日なんだぜ)
こんな時まで仕事の事を心配するとは我ながらなかなかのワーカーホリック。
「そこの男。この村にどんな様だ」
異世界で初めて声を掛けてくれたのは、お約束の美少女ではなくフル武装の中年戦士でした。
「いや、ゲイルとか言う天使に違う世界から連れて来られて近くの草原に放置されたから、この村に歩いて来たんだけど」
信じてもらえる訳はないが、下手に言い訳するよりはマシだろう。
「嘘をつくな!!」
怒鳴りつけてくるフル武装のおじさん。
そりゃそうだよな、天使なんて信じる訳がないか。
「ゲイルなんて名前の天使様はいない!!来い、天使様を語った罪を神殿で裁いてもらう」
どうやら、この世界に天使はいるらしい。
それと俺を連れて来た奴は本当に自称天使の可能性が出て来た。
――――――――――
木造の小さな神殿にはお約束の白髪にヒゲのお爺さんがいた。
「神官長様、この男がゲイルなんて言う居もしない天使様の名を語りました。しかも異世界から連れて来られたなんて嘘までついて」
「ルドア、落ち着け。ゲイル様は実在する、まぁチャントだからお前が分からなくて仕方がないがの。ほれっ、ここを見てみろ」
神官長は辞典の様に分厚い本の最終ページを開いてフル武装おじさんルドアさんに見せている。
神官長の指差した先には小さな文字で何かが書いてあった。
「本当ですか!!あー、チャントの最終組に書いてますね。つまりこの男の言ってる事は本当なのですか?」
「困った事にの。そこの者、ゲイル様はお前に何か授けなかったか?」
とりあえず一番困ってるのは俺なんだけども言いたい所なんだけど。
「この本をぶん投げて行きましたよ」
自称天使が俺にぶつけてきた本を神官の爺さんに手渡す。
「やれやれ。契約の本があるなら信じない訳にはいくまい。残りグローリーは400か」
あからさまに溜め息をつく神官の爺さん。
「400?あの天使は500グローリーをやるって言ってましたが」
「アルバ言語の習得に100使われておる。後400グローリーの中で覚えた方が良いスキルはアルバム文字の習得じゃの」
あの天使勝手に人授けたとか言いながら勝手に使いやがったな。
「それでそのグローリー文字を使えれば何が特なんですか?」
言葉が通じるなら無理に読み書きを覚える必要はない。
「契約の本はアルバ言語で書かれてるいるんじゃ。スキルを覚えるのに最低条件じゃよ」
神官の爺さんの説明では契約の本には自分が習得出来るスキルがアルバ文字で浮かび上がるらしい。
「それでアルバ文字を覚えるのにはいくら掛かるんですか?」
「アルバ文字を覚えるのには100ゲイル掛かるんじょ。どうしますか、異世界の人」
「異世界の人って、俺の話を信じてくれるんですか?」
俺だったら絶対に信じないで愛想笑いで終わらせると思う。
「昔から天使様は異世界から人を連れて来ていましたんですよ。でも8年前から禁止されたのです、異世界の人にも生活があるから自粛するとお告げがありました」
いやいや、自粛してないし。
それに8年前か…。
「とりあえずアルバ言語を覚えます。それと迷惑でなければ一晩泊めて下さい」
寝袋もテントもないから野宿は避けたい。
「それは構いません。それと異世界から連れて来られた事はあまり話せないで欲しいのですが」
神官長としては天使がルールを破った事を広めて欲しくないんだろう。
「分かりました。とりあえず疲れたのでアルバ言語を覚えたら休ませて下さい」
「すみません、天使ゲイルよ、汝の信者にアルバ言語を授けたまえ」
神官長がそう叫ぶと蛍みたいな小さい光が俺に飛び込んで来る。
ふと、天使のよこした本を見ると契約書の入門編と書かれていた。
――――――――――
気遣いからなのか気まずさからなのか神官長は妙に俺に優しくしてくれた。
「さあ、こちらでお休み下さい」
案内された部屋は小さな窓とベッドが1つあるだけの簡素な部屋。
神官長が部屋を出たのを確認してベッドに横になる。
(異世界か…こりゃ完璧にルーチェとの再会は夢だな)
情けない事に、俺は8年前に突然姿を消した恋人にまだ未練タラタラらしい。
下っ端天使と10級契約で、しかも入門編。
これが坂本虎馬のアルバでのスタートだった。
新連載は感想が来るまでがドキドキします