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ルーチェの過去

今回はトラマは出ません。

 闇の第1級天使、チェーニー・ビェールビューは困惑していた。

 今朝、彼女の住む闇の神殿に突然の来客があったのだが


(アトランジェちゃんに何があったのでしょう?)

 闇の神殿を訪ねてきたのは光の第2級天使アトランジェ・ルヌイ。

 アトランジェは春光の乙女と呼ばれる美しい天使。

 光り輝く金色の柔らかい髪、透き通る様な白い肌、見るものを癒す柔和な微笑み。

 それが今は髪はくすんで痛んでいるし、寝不足なのか肌荒れが酷く、眉間には深い皺が刻まれてどこか遠くを見つめている。


「チェーニー様、今日は折り入ってご相談が…いえ、お願いがあって参りました!!ルーチェ様の想い人サカモト・トラマがアルバに来てるかもしれないんです」

 話を聞くと、ここ何週間かで最下位チャントに位置する天使が不自然な

程にグローリーを稼いでいるとの事。

 そのゲイルの契約信者の名前がサカモト・トラマ。

 ルーチェはサカモト・トラマがアルバに来ていると信じ込み、会いに行く気満々らしい。


「サカモト様、本人なのですか?」


「まだ確認は出来ていません。もし違った時のルーチェ様のお気持ちを思うと…」

 アトランジェはルーチェに仕えて400年以上経つ筈。

 ルーチェが凶悪な魔族と戦った時も、勇者を導いた時も、共に過ごし苦楽を共にした仲だ。

 

「分かりました、ルーチェちゃんは私にとっても大切なお友達ですから協力をします」

 チェーニーは8年前ルーチェが異世界に旅立った時の事を思い出していた。


――――――――――――――――


 8年前天界はある問題で揺れていた。

 アルバがスキルを導入したのは文明の進化に歯止めをかける為である。

 他の世界では文明が進化し、人は神や天使を蔑ろにし自然を破壊し、中には星を破壊する兵器まで作った世界もあるらしい。

 しかし、アルバの文明は緩やかに衰退していた。

 異世界から人を連れてきて、新しいスキルを導入してもそれは変わらなかった。

 さらにある異世界人はこう言った。

「お前らは天使じゃない!!傲慢な悪魔だ、俺を元の世界に帰せ!!家族の元に帰せ!!お前らは人間を弄んでるだけだっ」

 そして、この世界は絶対に滅びていくと。

 人は天使に尽くすのを喜ぶと信じて疑わなかったアルバの天使達には衝撃的な言葉であった。

 そこで天使の代表が文明の進んだ世界に渡り、その世界の人間と接し、新しいスキル制度を作り上げる事にしたのだ。

 その代表に選ばれたのがルーチェ、かつて彼女は異世界人の料理人を雇っていた事もあり、異世界の知識も豊富である。

 出掛けにある天使はこう言った。

「人の文明に毒されたらたらどうする。かの者達と接し、恋に溺れた天使もいたそうじゃないか」

するとルーチェはこう答えた。

「俺は弱い奴には興味ないなんだよ、脆弱な人間と恋なんて馬鹿らしい」

 そして3か月後、彼女は帰って来た。

 誇り高い彼女が涙と鼻水も流しながら、泣き喚きながら帰ってきたのだ。


「ぜっだいにーずぇんばぃにーぎらわれだー。ずぇんばいにあいだいよー!!」

 チェーニー達は自室に閉じ籠ってしまったルーチェをなだめすかし何とか部屋から出てもらう事が出来た。

 部屋から出て来たた彼女はこう言った。

「俺達の世界は俺達だけで作るべきだ!!家族や愛し合う恋人達を離ればなれにするなんて駄目だっ…ずぇんぱぁーい、嫌だよー、わがれだぐないよー」

 

(結局、ルーチェちゃんは恋する乙女になって帰ってきたんですよね)

 そのお相手の名前がサカモト・トラマ。

 

(サカモト様本人として問題は2つです。彼が結婚していたり他に彼女がいないか、それと500才近い天使のルーチェちゃんを受け入れてくれるかです)


 それにいきなり”俺本当はこの世界の天使なんだっ”と言われても困惑するだけ。


「まずはルーチェちゃんに会いに行きます。全てはそれからです」


――――――――――――――――


 光の天使が輝いているのは、当たり前。


(ルーチェちゃん本当にサカモト様の事が好きなんですね)

 今のルーチェは歴代のどんな光の天使よりも輝いているだろう。


「チェーニー、久しぶりだなっ!!元気かっ?幸せか?俺はとっっっても幸せだぜっ!!」

 ルーチェは溢れんばかりの笑顔でチェーニーに声を掛けてきた。


「ルーチェちゃん、話はアトランジェちゃんから聞いてます。まずは私と一緒に火の神殿に行きましょう。サカモト様のパーティーには火の第7級天使が守護しているウムヌーイ公爵家の長男がいるそうです。まずは彼女に探らせましょう。いきなり天使と言われても困惑させるだけですよ」

 渋々頷くルーチェと共にチェーニーは火の神殿を目指した。


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