ルーチェの正体
意外?にリクエストが多かったらトラマです
なんで、こうなった?
馬車に揺られながらさっきまでの流れを思い出してみる。
まず、盗賊を生け捕りにしましたと言ったらアドリフ神官長様は笑顔を見せて喜んでくれた。
そして、生け捕りにした盗賊を見せたらアドリフ神官長様は顔を引きつらせて苦笑を浮かべたんだよな。
それで、盗賊を見たアドリフ神官長は物凄い笑顔で隣町の神殿への紹介状と馬車の旅券やら20万ゾロートを押し付けてきた。
「ローク、俺やり過ぎたのか?」
「トラ、盗賊の頬に串は刺さってるし、顔には炭で焼かれた痕があるんだぜ。ドン引きして当たり前だろ。ご丁寧に足の指の骨だけ折ってたしな」
ロークの冷たい視線が俺を射抜く。
「あれは逃走防止の為に家の流派に伝わってるんだよ。それで隣町はどんな所なんだ?」
「ウーズィって名前の大きな町だよ。周りに畑や山が少ないから討伐や採集の依頼は少ないかもな。多分、護衛や用心棒みたいな依頼が多いと思うぜ」
用心棒か、先生お願いしますとか言われたりするんだろうか?
「って事は商人が多い町なのか?」
「ああ、ウーズィの色町は規模も質も段違いなんだぜ。トラ、楽しみだろ?」
「病気が怖いし何より興味がねえよ…情けねぇと思うかも知れねえが昔の女を忘れらなくて」
それから俺はルーチェと別れた経緯をロークに話した、ローク話した笑わずに真剣に聞いてくれている。
「よく8年も想っていられるな」
「俺はモテないから次の女を見つけられないし料理の修行もあったからな…会えないかったから、まだ好きなかもな。近くにいたら手痛く振られていた可能性もあるし」
ルーチェ並みに可愛くてルーチェみたいに俺なんかを好きになってくれる女なんていないのは分かっている。
でも会えないから想い出だけが美化されていく。
「ルーチェか…その名前はあまり言わない方がいいぜ。お前が会わなきゃいけない大天使のお1人に光の第1級大天使様がいる。その方の名前もルーチェ様って言うんだぜ、何しろ王族ですら大天使様と同じ名前はつけれないって決まりがあるぐらいだからな」
つまり、アルバでルーチェって恋人が居たって言うのは日本で天照大神様やマリア様、アテナと付き合っていたって言う感じになるらしい。
…不敬を通り越して痛すぎるな、しかもアルバは天使を崇める神殿が絶対的な権力を握っている世界なんだし。
「分かったよ、それでそのルーチェ様も誰かと契約をされてるのか?」
「第1級大天使様と契約なんて出来る訳がないだろ。人と契約して下さるのは3級の天使様まで、でも3級の天使様と契約出来ているのは王族か上級神官、高位の貴族ぐらいしかいないけどな」
「ちなみにチャントのゲイル様って天使は何級になるんだ?」
本当は、あんな奴に様なんてつけたくもないんだけど。
「ゲイル様?聞いた事がないお名前だな。でもチャントは100って意味だぜ」
…つまり、あの馬鹿天使は最下級と。
(ありえねー、ゲームならまだしも契約した奴が最下級で根性がネジ曲がった天使なんてなしだろ?)
盗賊を倒したお陰で馬車酔い防止スキルはとれたけど、残ってるスキルは後2つか3つしかない。
「契約って破棄出来ないのか?」
「人間側からはまず無理だな。たまに上位の天使様から勧誘されて契約相手が変わったって話を聞くぐらいだよ」
つ、詰んだ。
絶対に日本に戻れないしルーチェにも会えない。
「俺の契約させられた相手ってチャントの最下級らしいんだけど何とかならねえか?」
「…考えてみるよ」
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アルバ光の神殿
私は光の第1級大天使ルーチェ・ビェルービュー様にお仕えしているアトランジェ・ルヌイと言う者です。
ちなみに階級は光の第2級なんですよ。
「ルーチェ様、お仕事のお時間です。そろそろ出てきて下さい」
「嫌だ!!まだ先輩充電が足りない」
ルーチェ様がいるのは先輩コレクションルームと書かれている部屋です。
ちなみにドアには無数のハートとお世辞にも格好良いとは言えない男性の似顔絵が書かれていま…
「おい、アトランジェ!!今なんて思った?お世辞にも格好良いとは言えないだ?偉い!!お前に先輩の良さが分かったら盗られかねないからな。お前の目が節穴で良かったよ」
胃が痛いです、ルーチェ様がサカモト様に再会出来ない限りこの痛みは消えないと思います…でもサカモト様に会えないルーチェ様の胸の苦しみには比べ様はないんですけどね。




