異世界で焼き鳥を
久しぶりの更新です
社会人を誘惑する物の定番と言えばこれだと思う。
それは焼き鳥屋の匂い、あの誘惑に勝てる人は少ないと思う。
甘じょっぱいタレも捨てがたいが手持ちの調味料じゃ納得いく焼き鳥は出来ないから今回は塩でいく。
「トラ、なんで掘ったって小屋まで作ったんだ?いくら何でも気合いが入りすぎだろ」
俺が小屋を作ったのは普段は夜営に使われている広場。
「小屋がないと折角の匂いが逃げちまうんだよ。ちゃんと後ろに通風口を作ったから酸欠も心配ない!!…よっし、炭がおこった」
皮、肉、手羽を金網の上に並べていく。
「ただの鳥の塩焼きだろ?なんでそこまで気合いをいれるかね」
ロークは俺の気合いに飽きれ気味だ。
「あのな焼き鳥は串打ち三年焼き一生って言われている料理なんだよ。単純な料理ほど誤魔化しが効かないし奥が深いんだぜ」
焼けた鳥から脂が炭に落ちる、脂の焦げた匂いが辺りに漂い始める。
「へぇ、良い匂いじゃねえか。トラ、1本くれや」
「まーだーだ。まだ焼きが不充分だ!!…よっし、食ってみろ」
プロとは比べ様のない出来だが丹精込めて焼いた焼き鳥だ。
「随分と自身満々だな…なんだ、こりゃうめえ!!」
この世界の料理はスキルに頼りきっているせいで進歩がみられていない。
スキルのない人間は冷めた料理を買うか焼いただけの料理を食っているらしい。
「これが料理だよ。手間暇惜しまず自分の技を磨いくのが料理人さ。皮も食うか?」
「皮がパリパリしてるし嫌な味が全くしねえ!!」
そしてロークは物凄い勢いで焼き鳥を食い始めた。
焼いて出して焼いては出してを繰り返してるとそいつらは釣れた。
「ここは誰のシマか分かってるんだろうな」
「良い匂いじゃねえか。俺達にも寄越しな」
「こんな場所で温かい飯を食うなんてまさか貴族様か?」
うん、街道に縄張りはないと思うし脅し文句もスキルがないと駄目なんだろうか。
「金はあるのか?恵んで欲しいならきちんとお願いするんだな」
「金はないから、これをやるよ」
男の1人がナイフを抜くと、残りの2里もナイフを抜く。
幸いにやり取りのうちにロークの戦闘体勢が出来ている。
「料理スキルなんて持っていても戦えないだろ?無理すんじゃねえよ」
「たかが料理で威張りやがって」
…たかが料理だと…
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トラがキレちまった。
「そうか、そんなに焼き鳥が食いたいか?それならこれを食らえ」
トラは真っ赤に焼けた金網を串で引っ掛けると男の顔に投げつけやがった。
「あ、あちいー!!」
「うまいだろ?ほれっ炭のお代わりだ」
トラはスタベンのおっさんに作ってもらった金鋏で炭を掴むと他の男達に投げつ始める。
「知ってっるか?火傷したら塩で消毒すれば良いんだってよ」
次にトラは火傷をしてのたうち回っている男の顔に塩を刷り込め始めた。
…手がつけれねえ。
「トラ、顔に串を刺すんじゃねえ。人を炭で焼くなー」
トラの前で料理を馬鹿にするのは止めよう。
「こいつらは人を殺したんだろ?それに殺すなって言われたけど怪我の具合は注文がなかったから平気だよ」
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アルバ某所
俺は朝から何回か溜め息を着いただろう。
先輩の写真を見て溜め息。
先輩から貰ったプレゼントを見て溜め息。
先輩を思い出して溜め息。
最近、先輩を思い出しす機会が増えている。
「駄目だ!!今日は休む」
「ルーチェ様、今日は大事な会議があるんですよ!!」
「それなら議題は先輩に会う方法にするぞ」
分かってる、あの時に貰った糸を手繰って行けば先輩に会えるって。
でも俺にはそんな度胸なんてない。
気づけばまた大きい溜め息をついていた。




