第一話
高校一年生の春、真新しい制服を身に着けドキドキワクワク胸が躍るような空間の中、
鬱に近いような顔をしている俺はさぞかし場違いなことだろう。
親が二人とも医療関係におり、父親に関してはでかい総合病院の医院長を務めている。
父は厳格な人で他人にも自分にも厳しいといった人だ、だからこそ「医院長」という地位につけたわけだがそんな親をもつ俺は幼い時から英才教育を受け親の敷いたレールを走る汽車のようなものだった。
だからといって父の跡を継げるわけでもない、なにせ俺は「次男」だから。
長男の瑞希は人あたりもよく容姿端麗、勉強もできるそしてなにより親に愛されていた、俺は?といえば人一倍にはできるものの兄ほどではなく、中学校の中でトップクラスの有名校を同じダントツの首席トップで卒業はしたものの兄には遠く、まさにあいつは天才だった。
兄という巨大な壁に押しつぶされ、ろくに愛情も注がれなかった俺はまっすぐ育つはずもなく無愛想で人を信じられない人間になってしまった。
当然そんなやつに友達なんてできるはずもなく、元より俺自身も必要なかった。
あんなの弱い人間、1人じゃなんにもできない奴らが集まっているだけ、自分は誰の力も必要としない。
だから、幼少のころからこんな風に考えて生きてきた俺にとって「高校の始まり」なんてものはただの「中学の延長」それだけ。
ただ毎日が刻々と過ぎてゆくだけ…
キーンコーンカーンコーン―――…
校長の長話中、ふとチャイムの音がなった、
だが校長は話を早めるでもなく悠々と話を続けていた。
生徒達はけだるそうに肩を落とすも黙ってきいていた。
もう小1時間は話してるぞ…
ハア…と重い溜息を吐きもう1度意識を飛ばそうか…と思ったときに声が飛んだ
「おいッ!おっさんッ!何ピーチクパーチクしゃべっとんねん!
さっさと終わらせんかい…ボケェッ!」
一瞬で場を凍りつかせたその言葉は声の高さからして女性のようだった、
気の強そうな声にしっかりとした方言の関西弁
皆があっけにとられている中いち早く回復して分析した。
一人で生きていくためにはそんなスキルも重要なのだ。
次に回復した教師が声を発した女生徒を連行しようと発信源へかけよった。
校長はといえば恐縮したように言葉を失っている
1~10組に分かれるクラスの中俺は8組にいたのだが、騒動の元のクラスは大体1~2組らへんらしかったのでくわしくは聞き取れなかったのだが何やら口論したあと強制的に連行しようとしたらしいが女生徒が暴れて男性教師3人がかりで運ばれていった。
騒然とした中一瞬遅れて生徒達がざわざわし始めた。
そこを教師が無理やりおさめて校長が短めにあいさつをしてその場は終了となった。