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The illegal City ~罪人の宴~  作者: 裏通
Case1: ~三詰友也~
3/13

story2: ~ Home run or Strikeout ! ~



 今日は転入生、“三詰友也”と共に昼食を取った。と、言うのも彼にはどうも緊張感が足りない。もしかしたら、それは“ココ”での生活のセオリーに則った上での態度だったのかも知れない。しかし、“ココ”にやって来てすぐの人間がココまで抜けているものだろうか?三詰クンには申し訳ないが、私には彼が素で分かっていないとしか思えなかった。


「じゃあ、私は先生に用事があるので先に失礼……」

「え?ああそうなんだ。じゃあ、またあとで~!」


 昼食を早めに終え、私は夢路先生の元に向かうことにする。ちゃんと彼に関する事情を聞いておく必要があるだろう。流石にクラスメートを“見殺し”にはできない。

 呑気に笑顔を見せる三詰クンに軽く会釈をして、私は少し早歩きで職員室方向へと未だに賑やかな話声のする廊下を抜けて行った。




 夢路先生は大体いつも2階職員室に居るので、階段を登り、残った昼休みの時間に気を配りながら、ノックをし、職員室の扉を開ける。


「失礼します」

「あれ?継観さん。どうかしたの?」


 職員室入り口付近に席を持つ夢路先生がすぐに視界に入った。昼食も既に取り終えたようで、次の授業に使う資料を整理している所だったようだ。


「あの、お話よろしいでしょうか。三詰クンに関して」

「うん、大丈夫。何かあったの?」


 先生はすぐにそばにあった椅子を引き寄せて、座るように促す。私は軽く頭を下げて、椅子に腰かけた。


「三詰クン、彼はこの町の事をちゃんと理解してるのですか?どうも彼、何も分かっていないようで」

「え?知ってると思うけど……だって、この町の事を何も知らないのに何でわざわざこの学校に来るの?」

「いえ、彼にも聞いたのですが、思い当たる節はないようで……」

「え~?おかしいなあ」


 夢路先生は少し困った表情で首を傾げた。

 

「普通は説明とか忠告くらいは受けてると思うけど……本当にそう言ったの?」

「はい」


 夢路先生は三詰クンが“ココ”の事情を知らないとは思いもしなかったようだ。確かにこの町、この市はその性質上、“個人の過去には踏み込まない”という暗黙のルールのようなものがある。きっと彼にもここに転校してくる“事情”があったのだろうが、そこまで夢路先生は踏み込んでいないようだった。夢路先生は暫く難しい表情を浮かべた後、机の引き出しを開き、新聞を取り出す。


「う~ん、困ったなあ。三詰君に説明しても、今すぐに“ココ”から離れる事も出来ないだろうし……そしてさらに困ったことに」

「……もしかして、“出た”んですか?」

「ええ、しかも“4人”も新人がね」


 経済的に厳しいし、普段なら何も“問題ない”ので新聞は取っていなかったので、私はその新聞を見せてもらう。無数の物騒な事件の記事の中で、先生は4つを指さした。


「……名を売る為に入ってきた“新人”ですか」

「そう。特にこの“野球屋”は怖いわね。どうやら無差別に殺してるようだし、“殺し”を楽しんでるタイプみたい」


 “野球屋”、その奇妙な呼び名は他者によって与えられた物ではなく、自らが名乗り出したものらしい。犯行現場に自らの名前と“アピール”を刻むその殺人鬼の犯行が発覚したのは1週間前程から。2日前に3人目の犠牲者が出た事を新聞は伝えていた。

 被害者は共通して全て“金属バット”で頭を割られており、その死体の口には“野球の硬球”が詰められていたという。そして、硬球には血文字で刻んだ「野球屋参上」の文字。

 明らかに“名売り”の殺人鬼。しかも犠牲者に共通点はなく、無差別殺人のようだ。


「……う~ん、他の皆は大丈夫だろうけど、そうなると三詰君だけは心配ね。どうしよう、銀二君にちょっとの間、ボディーガードしてもらおうかな?」

「それじゃあ、先生が危ないですよ」


 夢路先生が自身の彼氏であり、ボディーガードでもある男の名前を挙げる。確かにあの人なら、この町に新しく入ってきた新米殺人鬼程度、一捻りだろう。しかし、そうすると夢路先生が自分の身を守れない。私は“あらかじめ決めていた通り”、これからの予定を先生に話した。


「私が暫く彼に付きます。事情も状況が整ったら説明しようかと」

「え?……まあ、継観さんなら全く問題ないかも知れないけど……」


 夢路先生はあまりいい顔をしなかった。多分他の先生ならすぐに任せてくれただろうが、彼女はこの町、この市でも“異質”だと言える。


「……継観さん。貴女は“女の子”なのよ?そういう危険な事はあまり任せたくないの」

「大丈夫ですよ。新人の快楽殺人犯なんかに遅れをとりません」


 この人は“ココ”では珍しく、“外の感覚”を持ち合わせている人間だった。最後まで私にこの仕事を任せる事に納得がいかないようだったが、最後には諦めたように首を下げた。


「……無理はしないで。絶対に」

「ええ、分かってます。では失礼しました」


 私は立ち上がり、礼をしてから職員室から立ち去った。

 先生は職員室から出ていく私の姿をずっと不安そうな目で見つめていた。




     ~~~~~~~~~~




「当たればホームラン」


 ああ、腹立たしいフレーズ。オレの高校時代、野球部の時の呼び名だ。これは別にオレが優れたホームランバッターだから付けられた呼び名じゃない。


 昔からオレは体がでかくて、力だけはあった。そりゃあ人並み外れてな。しかし、オレは鈍い。残念ながら鈍いんだ。自分でも嫌になるくらいにな。


 そう「当たればホームラン」ってのはオレが絶対に「当てられない」バッターだったから付けられたあだ名だ。いつもオレは馬鹿にされていた。いつも。いつも、いつも、いつも、いつもだ!


 だからオレは「当てて」やったのさ。ボールよりもずっと鈍い“クソ野郎共”にな!


 あのクソ共、あんなにオレを馬鹿にしてたくせに、簡単に“潰れやがる”。しかも、泣きながら助けを請う始末……クソが!クソが!クソが!

 オレはその時、快感を感じたね。バットに当てられなかったオレが、始めてバットに当てたんだぜ?頭が砕けるあの感覚、いいねえ、オレの力が良く分かる!泣き叫ぶクソ野郎、いいねえ、オレの偉大さが良く分かる!


 オレは決めたのさ。オレはボールを打つ“ホームランバッター”じゃなく、クソ野郎共の頭をぶち抜く“ホームランバッター”になろうとな!


 殺人鬼“野球屋”ここに参上って訳だ。オレは大好きな“野球”を楽しんでる!最高だ!


 もっと力を試したかったオレは、高みを目指してこの“イリーガルシティ”にやってきたってわけだ。殺人鬼共が徘徊するここで力を示せば、オレはさらに認められる!


 この“殺人鬼の町”でもオレの恐ろしさが良く理解されてきたようだ……と思っていたが、今朝の新聞の記事はまだまだ小さかった。今日の新聞の一面を飾ったのは有名な殺人鬼を殺したっていう“ダルマ落とし”とかいうふざけた野郎だった。


 ふざけんな……!どうやら、もっと殺してオレの凄さをアピールする必要があるらしい。今度はもっと派手なアピールを考えなきゃな!




 狂った巨体の殺人鬼“野球屋”は不気味な笑みを浮かべ、金属バットを片手に掲げた。そして、人気のない路地裏に迷い込んだ哀れなネズミを見つけ、その背後に忍び寄る。

 猫を愛でるその高校生は、地面に映った影を見て、始めて自分の後ろに迫る鬼の存在に気付く。震える体、抜けそうな腰、目に涙を浮かべながら少年は静かに後ろを振り向いた。


「オハロ~、クソボーイ!」





   ~~~~~~~~~~




 隣を歩く継観さんをちらちらと見ながら、俺はこの上なく幸せな気持ちを抑えきれず、にんまりと顔を綻ばせた。継観さんはその顔を見て、不思議そうな表情を浮かべる。


「どうしたんだ?」

「いえ、誰かと下校するのって夢だったんですよ~!」


 可愛い女の子と、とは恥ずかしくて言えなかった。


「……前の学校で友達はいなかったのか?」

「うぐっ……!痛い所つくなあ……」

「あ、すまない」

「あ、謝られると余計に……」


 俺はちょっと傷付いた風なフリをする。すると、継観さんは本気で心配したような顔をしてこちらを見てくるのだ。ああ、いいなあ、こういうやり取り……たまらん!

 継観さんは少し困ったような表情を浮かべる。別に俺は気にしてなかったのだが、ちょっとした演技が効いたのか、彼女は気まずそうに話を切り替えた。


「……ま、まあ、この町では良い人間関係を気付くように心がけた方がいい。それはきっと自分の身を助けるからな。まあ、こんな事言わなくても、もうその努力はしてるみたいだが」

「ありゃ、頑張ってるように見えちゃいます?やっぱり不自然かなあ?」

「フフ、意外と皆にはウケが良かったじゃいか。もう友達もできただろう?」

「ええ、まあ何人かは話しかけてきてくれましたけど……それって友達ってことでいいのかな?」


 確かにクラスメートは親しげに話しかけてくれたし、色々と話はしたけれど、それは本当に友達として接してくれてるのかは甚だ疑問だった。実際に、親しげにしていても、俺の事を“友達”と思ってくれてるかは不安が残る。継観さんはそんな俺の表情を見て、微笑んだ。


「親しくお喋りしたらそれはもう“友達”だろう?それとも、君は私を“友達”と思ってくれてないのかな?」


 俺は思わずドキッとする。少し、俺をからかうように浮かべたその微笑みが強く、俺の目に焼きつく。可愛いと思っていた。でも、その時はもっと可愛かった。可愛い。やばい。どうしよう。こんなこと初めてだ。もしかして俺……


「ん?返事がないが?もしかして本当に私を友達と思っていなかったのか?」

「そ、そんなことないっすよ!」


 慌てて答える俺を見て、彼女はまたフフっと笑った。その優しい微笑みが妙に夕暮れ時の中で映えて、何故だかとても綺麗に俺の目に映った。ああ、俺、継観さんに完璧惚れてしまったかもしれん。そう思い出すと、俺はなんだか喋り出しづらくなり、妙に照れくさくなってきた。


「……どうした?」

「いえ……何も」


 静かに二人並んで歩く。継観さんは俺が喋らないなら喋らないで、別段表情を変える事無く、黙々と歩いていた。俺はこのまま黙って歩くのもどうかと思い話題を考える。じっと周りの風景に目をやる。小さなビルが並ぶこの通りには特に話題になりそうなものはない。俺はそれでも何かないかと、意識を周りに張り巡らせる。


 すると、思わぬ声が俺の耳に飛び込んできた。それは遠くで、微かに聞こえる程度のものだったが、確かに聞こえた。


 子供のような悲鳴。


 俺はすぐに右を振り向いた。ビルとビルの間に空いた隙間。その奥に目をやる。俺はその時、何も考えずに走りだしていた。


「え!三詰クン!?」

「ごめん、継観さん!俺、ちょっと用事があるから!」

「そんな所に何の用事だ!?」

「ごめん!」


 継観さんの言葉を振り切って、俺はその隙間に掛け込んでいった。駄目だ。継観さんは多分来てはいけない。これは俺の“直感”。この先には、「何かがある」。


「おい!どうした!」






 汚らしい狭い道を駆け抜けると、少し広い場所に出た。ゴミ箱が並び、ゴミが散乱する汚い場所。人目に付かないその場所に一人の、俺と同じ制服を着た少年が頭から血を流して倒れていた。俺はすぐに彼に駆け寄る。こういう時にどうすればいいか分からないが、とりあえずゆすらない程度に確認をする。


「おい!大丈夫か!」

「う、うううう……!」


 声は出した。生きてはいるようだ。早く病院に連れていった方がいいな。あ、病院何処か知らないな。救急車だ!救急車を呼べばいい!俺は携帯電話を取り出し、電話をかけようとする。すると、突然、呻いていた少年は目を見開き、大声をあげた。


「う、うわああああああああ!」

「どうした!?」


 その視線が俺の後ろに向いている事に気付いたのは少し後の事。俺の後ろには、にやりと笑いながら金属バットを振り上げる大男が立っていた。


「オハロ~、そしてバハハ~イ、クソボーイ共!!」


 俺がその声の主を見ようとした瞬間、バットは既に振り下ろされていた。













ガンッ!


 鈍い音が響き渡る。


 俺が見たのは、通学カバンで、その金属バットの一撃を受け止める、継観さんの後ろ姿だった。




     ~~~~~~~~~~




「何だお前はぁぁぁぁ!?」


 醜い大男は声を荒げる。突如駆けだした三詰クンを追いかけていった私は、彼に襲いかかろうと静かに背後から忍び寄る大男と、彼の間に割って入り、何とかその凶器を受け止める事に成功した。


 カバンで何とか受け止めたものの、腕に痺れが走る。何ていう馬鹿力……!


「三詰クン、離れろ!」

「継観さ……」


ドンッ!


 私はバットをカバンに当てたまま硬直している大男を蹴り飛ばした。大きいだけあって、あまり効かなかった様だが、距離を取るのには成功する。


「……もしかして、同業者か?」

「……一緒にするな」


 恐らくコイツが“野球屋”。前情報からだと、大して特徴のある殺人鬼とは思えなかったので、少し甘く見ていたが、この大男、力だけなら確かにヤバい。

 しかもこの頑丈な巨体。並みの攻撃は通用しないとみていいだろう。決め手が欲しいが、運の悪い事に今日は体育があったから“武器”は家に置いてきている……


 私は仕方なく、通学カバンの筆箱の中から何本かのペンを取り出し、片手に文房具を、片手にカバンの盾を構える。


「何だ?それは……まさかそんなもので戦うのか?このオレと?……馬鹿にしやがって!」


 “野球屋”は怒りを露わにして、バットを振りかざし飛びかかってくる。そのスピードは大したものではなかったが、後ろには三詰クンとロクに動けない怪我人がいる。避ければ後ろに被害が及ぶだろう。私は覚悟を決め、左手の通学カバンを前に突き出した。


ゴッ!


「ぐっ…………!」


 重い一撃が腕を通して体に響き渡る。しかし、何とか耐え、私はバットを受け止めたカバンの下を潜り抜けるように“野球屋”の懐に潜り込んだ。


「なっ……!」


 思わず“野球屋”は声を上げる。今まで反撃などされた事が無かったのだろう。その表情は見るも無残に崩れていた。その表情を見て、私は「折れる」と判断する。

 最悪、このペンを“野球屋”の頭に突き刺してやろうとも考えていたが、その必要もないらしい。私はその懐から、勢いよく、“野球屋”の腹を目がけてペンを突き刺した。


グリュッ……


「あ?」


 間の抜けた声を漏らす“野球屋”。私は、その腹にペンを突き刺したまま、“野球屋”の「心を折り」にかかる。


「抜かないまま病院にいった方がいい。……他人に痛い目に遭わされるのは……始めてか?」


 “野球屋”の表情がみるみる青ざめていく。やはり予想通りだった。殺人鬼であるこの男は殺人鬼の中でも“一方的なタイプ”のようだった。このタイプは自分が返り討ちにあう事を予想していない。一方的な殺戮者だ。彼らは自分が傷つけられる事を予想していない分、受けるダメージは精神的にも肉体的にも大きいのだ。


「あ、あ、うあああああああああ!!!」


 「折れた」。私はそう判断した。しかし、直後、私は自分の「甘さ」を思い知らされる。


ゴキッ……


 鈍い音、重い衝撃。


「継観さん!!」


 一瞬、理解が遅れる。三詰クンの大きな声が響く。私はその声を聞いて時初めて、「自分の右腕に金属バットがめり込んでいる」ことに気付いた。


「つッ………あああああああ!」


 確実に腕の骨が折れた。激痛が腕だけでなく体中を駆け巡る。


「危ないだろうがァ!そんなもの刺しやがって…………!オレが“キャッチャー”じゃなかったらどうする気だ……!?」


 “野球屋”は服をめくる。そこにはペンの突き刺さった防具があった。ペンは奴には届いていなかったのだ。ああ、馬鹿か私は。使い慣れない攻撃で、刺した感覚の違和感に気がつかなかったか?いや、それ以前に私は何故、コイツの“頭”を狙わなかった?相手は殺人鬼、油断したらこちらがられるというのに……!


 “出来るだけ他人を殺めたくない”という、自分の“甘さ”。師匠からも注意されていたその“甘さ”が、完全に裏目に出た。


「っくぁ……あ……!」


 声が出ない。まずい。まずい。まずい。蹲りながら、自分を見下ろす“野球屋”の視線を感じる。ゆらりとその巨体が動くのを感じる。バットを振り上げたのだろうか?


 殺される。私も、三詰クンも……


 まだやり残した事があるのに、三詰クンを守ると先生に言ったのに、こんなにもあっさりと終わり……?動け、動け、動け!

 念じても念じても体は動かない。ただ、出したくもない悲痛な声が漏れるだけ。そして、頭上に無情な声が響く。


「バハハ~イ、クソガール……!」


 終わった。











 そう思った。


「くぁっ…………………あ?」


 バットが降りてこない。私は激痛で薄れている意識の中、残った力を振り絞り、上を見上げた。


 “野球屋”が大きく振りかぶった腕、それを振り抜こうとする、力が乗せられる“直前”、そこを狙い澄ましたかのように、その腕を抑え込む人影。


「み……みつ……め……クン?」


 それは三詰クンの姿だった。


「な……なにしやが……」


 “野球屋”は言いかけて、言葉を詰まらせる。それは明らかに、私からは見えない三詰クンの顔を見て、怯えているように見えた。“野球屋”はその腕を振りほどき、後ずさりする。


「何だ……何だお前!?」


 その一瞬、私は確かに得体のしれない“寒気”を感じた。それは目の前に立つ彼、三詰クンから流れ出していたようにも思えた。


「……さっきからいきなり過ぎて何が何やら……お前も不意打ち喰らわせてくれやがって……」


 ぶつぶつと彼は呟いていた。それは何処となく怒りを感じさせる強い言葉。お調子者のような彼からは予想もできない空気。


「しかも、継観さんにこんな事を…………ああ、そうか、そういう事か。お前みたいなのも“普通”にこの町では暮らせるのか。ああ、そうかい。」






 継観美月は勘違いをしていた。


 この男、三詰友也は“この町の事情を知らない”のではなく、”知った上でそれを当り前の事だと思っていた”のだ。


 危険な殺人鬼の楽園“イリーガルシティ”は、三詰にとっては自分が“普通”に過ごせる楽園だった。彼はその“恐ろしい顔”をむき出しにして、地獄の底から湧きあがるような声で、恥ずかしげもなく、その台詞を言い放った。


「俺の惚れた女に…………何してくれやがる……!」


 思わずたじろぐ“野球屋”。


 その隙を付くように、殺人鬼“三詰友也”は、その巨体を、思い切り、



 “押した”





次回、更新予定は土曜日です。

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