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アグロンド王国物語-妖精国家の英雄譚-  作者: ガーレ
第1章-アリス編-

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第9話-希少-

「ごきげんよう、アリー」

……夢?

「そうよ、夢よ」

 そうよね。学院を離れたんだから。ナリーと話せるわけないもの。

「何を言ってるのかしら。夢の中で話せてるじゃない」

 屁理屈ばっかなの本物のナリーそっくり。腹立つわね。

「もう、酷いわ。アリーったらすぐそうやって酷いこと言うんだから」

 悪かったわね。それで、夢の中のナリーは何話しに来たの。

「久しぶりにジョンとの恋バナが聞きたいな、なんて。あら? 顔色が悪いわね」

 ジョンと……ひと月、口きけてない。

「ええ!? 嘘でしょ!?」

 ぷ、ふふっ。ナリーってそんな顔できたのね。

「まあ酷い。それなりに歳はとってるけれど、まだ表情筋は死んでないわよ」

 表情筋と歳って関係あるのかしら……。

「そんなことより!」

 そんなことより?

「私忠告したわよね……。『何があっても、絶対に、彼の心を離しちゃあダメだからね』って」

 あぁ、なんか、言ってたわね。

「私の言葉なんてすぐ忘れちゃうのね……。学生は皆そう。幾ら先生が熱く語りかけても、皆すぐに忘れちゃうんだわ……シクシク」

 泣き真似下手すぎ。表情変わってないわよ。

「てへ。まぁでも、うん、そっか。ジョンと喧嘩したのね。ここ最近あなたの魔力サンプルが濁っていくもんだから、どうしたのかと心配で心配で」

……魔力サンプル?

「い、いや、何でもないわよ!」

 ふーん、そう……。

「そ、それよりも! えーと、うーんと。あ、そうそう。夢に私が出てきたこと、他に誰にも言っちゃ駄目だからね」

 どうして?

「これって禁止行為なのよ、ほら、その、宗教的なやつ。特に、他の天使種には絶ッ対、言っちゃダメだからね」

 ! 因みにナリー、言ったらどうなるの?

「そんなことされたら上司に言いつけられて堕天しちゃうわぁ……。私の教師生命のためにも、ね? お願い!!」

 ふふーん。良いこと聞いたわ。

「……もしも私が堕天しちゃったら、地国の果てまであなたを追っかけてあげるわね。ああ、今から楽しみだわぁ」

 地獄行き前提で話すのやめなさいよ……。悪かったから。

「ふふ。あら、そろそろ時間ね。久しぶりにアリーとお話しできて楽しかったわ」

 時間制限あるのね。夢とはいえ、私も楽しかったわよ。

「じゃあ、お礼に私からのお節介、受け取って」

 いいわ。受け取ってあげる。

「あなたの仲間に幼魔種の子いるでしょ」

 幼魔種?

「あー、えーっと、ルーナって子。彼女といると良いことが起こるかもしれないわよ」

 幼魔種って初めて聞くけど、何なの?

「もー、時間がないのよ。詳しいことは本人から聞いて。じゃあ、元気でね!」




――――――――――


……朝、か。


「うわ、夢の内容はっきり覚えてるの気持ち悪」


……。ちょっと、2人に相談してみよう。


「ねぇ、カリン。急で申し訳ないんだけど……たまにはルーナ隊の方に行ってきても良いかしら」

「もちろん、構いませんよ。気をつけて行ってらっしゃいませ、ボス」

「ボス! 来てくれる、の? です? わぁい」


 飛び跳ねてるルーナ、可愛いわね……。


――と、いうわけで、夢ナリーのお節介に素直に従い、今日はルーナと一緒に行くことになったわ。


「ルーナ、いつもどんなルートで巡回してるの?」

「隊の皆に、道順が描かれた地図、貰ってます、です」

「わぁ、あなた小さいのに地図読めるのね!」


……


「迷った、です……」


 まだ拠点の門から出て30分も経ってないわよ、ルーナ。


「ルーナ、実はいつもは地図読める人とパーティ組んでたり、とか」

「いえ、私いつも1人なの、です」


 えぇ、いつもどうしてるのよ。私も実は方向音痴だから、一緒に遭難しちゃったりして……。


「あら、ルーナちゃん。今日もお仕事?」

「リーおばちゃん!」

「あら、ここに行きたいのね。それなら道を真っ直ぐ行って、3つ目の路地を右よ」

「ありがとう、です」

「あら良い子ね、飴あげるわ」


……


「ルーナちゃん、今日もお仕事かい。その道はこっちだ」


……


「ルーナちゃん、お、これはね――」


……


「ルーナちゃん――」

「ルーナちゃん――」

「ルーナ――」


……


 な、なるほど。町の皆に聞きながら毎日歩いてるのね……。というか、人に会う度お菓子貰ってるわ、この子。


「ボス」

「何かしら」

「お昼ごはんにします、です」


 ルーナ、彼女は4歳にして学院への入学を認められた天才だと聞いたことがある。つまり、今の彼女の年齢は10歳か、11歳……。


「ねぇルーナ、ちょっと聞きたいことがあるのよ」

「ボス、なあに?」

「『幼魔種』ってな――」


 空気が、明らかに変わった……。ってあれ、ここどこよ。真っ暗じゃない。


「ボス……」

「ッ! あなた、ルーナ……なの?」


 私の目の前に急に現れた彼女の瞳は、禍々しく赤い光を放っていた。


「その言葉、どこで聞いた、です」


 あ、これ、まずい。凄くまずいやつよ。私にだって分かる。


「どこで、って……」

「答えて、くれなきゃ、ボスでも、殺――」

「学院の『ナルメア』とかいうバカ教師です、はい! 昨夜夢の中で勝手に向こうから言ってきたんです、はい!! すみませんでした!!!!」


 つい余計なことまで言っちゃった……。ナリー、ごめん。

……って、あれ。ルーナ、いつも通りに戻ってる。


「そう、なの、です?」

「えぇ、そうよ」


 周囲から闇が散っていき、辺りの景色は次第にさっきまでいた路地へと戻っていった。


「今のは……」

「ただの『結界空間を創造する魔法』、です。ボス、結界空間知らない、です?」

「ただの……いや、ごめん、全然知らないわ」


 午後の巡回の際に本人から聞いたところ、「幼魔種」というのは「希少種族」と呼ばれる個体数の極端に少ない種族の1つらしい。彼女自身、母親以外の同種には会ったことがない、と。一度見た種族の子供の姿になることができ、なおかつ愛されやすい見た目に写るのだとか。人からの純粋な好意を魔力に変換できる特性を持っているからこそ、遥か古来より魔法を使役できており、実は魔法後発組だという原種とは比べ物にならない程の膨大な魔力量を誇る、らしい。


「ルーナって、ほんとは何歳なの?」

「10歳……? ほんとの歳は、分からない、です……」

「そう。まあ、それならそれでいいのかもしれないわね」


 建設途中の拠点の門が見えてきた。全く、今日は不思議な1日だったわね。


「ねえ、ボス」

「ん?」

「さっきのこと、しーっ、です」

「えぇ、分かってるわよ」


 ルーナに殺される最期なんて、絶対に嫌。


「あ……あと」

「何かしら? 私、今はお菓子持ってないわよ」

「これから、お姉様って、呼んでいい、です?」

「……勿論、いいわよ。お姉様でも、お姉ちゃんでも、姉貴でも、好きに呼ぶと良いわ」

「! じゃあ、アリスねぇね! あのねあのね、実はね、私を好きでいてくれる人はね、幸せになれるんだよ! ほんとだよ! だからね、元気出してね!! あ、えっと……です」


 ルーナは勢いよく私に飛びついてきた。きっと、このひと月の私の様子を見て、心配してくれていたんだ。

 私は彼女の背中に手を回しながら、目の前に広がる光景を見る。拠点建設、いつの間にかこんなに進んでいたのね。ここしばらく船内から出ていなかったから気が付かなかった。


「そうね……。ねえルーナ、アリスねぇね、元気、出てきたかもしれないわ!」

 1日1投稿と2投稿でPVに影響無さそうだったので1投稿に戻します。

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