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アグロンド王国物語-妖精国家の英雄譚-  作者: ガーレ
第1章-アリス編-

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第8話-変更-

「拠点建設後の動きを、当初の作戦から少々、変更しようと思う」


 ……なにそれ、どういうことよ。嫌な予感がする。


「拠点建設後ってェと『第2段階』か。えーと、確か……」

「カルロ、覚えていないのか。ウェスークの城への強襲だ」

「そして、落とした城で、ボスにウェスーク国復活の宣言をして頂く、でしたね」

「ああ、そうだ。ジェファー、カリン」


 そう。私が元々棲んでいたところ――お父様が築いたウェスークの城への強襲。それが、元々の作戦の第2段階だった。そしてそれは、私の復讐計画の一部でもある。

 赤髪系の妖精種は好戦的で、そして、他の系統の妖精種に比べてやる事なす事派手好きだと聞く。なら、折角攻め落とした立派な城を手放すことは、きっとできない。つまり、私の予想では、お父様の仇は、まだあの城に居座っている。だからこそ、私の帰る場所を奪ったそいつを、今すぐにでも戻ってぶっ殺さなきゃいけないの。


「えっと、ジョン。作戦変更、って……どういうことよ」


 彼に問う声が震えそうになる。なんだか似たようなことが昔……そうだ、ナリーに挑発された時だ。

 だけど、今は他の者たちの手前、突然平手打ち、なんて行動はできない。


「アリス、君の仇討ちは後回しになるだろう」


 何か、心の奥底で煮えたぎるものを感じる。ああ、この感覚も久々だ。激情。これがジョンに向くのは初めてかもしれない。今すぐにでも平手を打ってやりたい。


「君の気持ちは分かっているつもりだ」


 分かるわけない! 叫びたくなるのをぐっと抑える。

 この無限に溢れ出る怒りの感情を抑えられているのは、他4人の前だということ、それと、彼のお陰で今まで上手くいってきたという信頼もあるから。

 あとは、まあ、私も少しは大人になれているのかもしれないわね。


「だから、まずは聞いて欲しい」

「そう。そこまで言うならいいわ……。続けて」


 私の言葉を聞いて、彼は語り出した。


「俺らは、元ウェスーク国領域はミシア国という赤髪系妖精種の支配下にあるか、空白地帯になっていることを想定していた。だからこそ、アリスを頂点に据えたウェスーク国を復活させるという『第2段階』の後、この地から赤髪系の妖精種を放逐し、原種による入植地を築くという『第3段階』へと進むつもりだった」


 4人はうんうんと頷いている。私も頷いておく。


「だが、実際にはサスーク国という俺らの想定に無かった国がこの地に勢力を伸ばしていた」

「そうだ。僕もこのことは作戦に支障をきたすと思っていた」

「それだけじゃない。もう1つ理由がある」


 想定外のサスーク国という存在。これは、確かに計画の練り直しに値する理由だと思うわ。でも、もう1つの理由って? 私には全く分からない。


「俺は、アリスを使い捨てにはしたくない」

「……え?」


 使い捨て……?


「おい、どういうことだジョン、てめェ!」

「ジョン、酷い、です。ボスのこと、使い捨て、なんて……」

「流石に、聞き捨てならない発言です」

「お、おい、その言葉は君らしくないぞ」


 皆の声が遠くなっていく。

 何、今までの計画は、私を使い捨てにするつもりだったってこと? ジョンが?


…………


「人の話は! 最後まで!! 聞けよ!!!!」

「「「「「……」」」」」


 ハッとした。私としたことが、狼狽えてんじゃ、ないわよ。


「やっと、静かになったな」

「……すまん」

「いや、良い。俺の言い方が悪かった。実はな――」


 彼の考えはこうだった。

 学院内で幾度となく行われた活動や作戦会議について、アトゥス教会が何も知らないはずがない。いくらか内容を知られていると考えるのが自然だろう。その上で、アリス以外のほぼ全員が魔法使いとはいえ、大人になったばかりの有力な若者70人を何の考えも無しに送り出すわけがない。引き留めたり、忠告したり、そういった類のものが70人全員に全く無いというのは、明らかにおかしな事態だ。ムー島に家族がいる者だって多い。なのに、1人も欠けないものだろうか。

 杞憂であればそれでいい。しかし、最悪、アリスという存在を上手く利用しようとする人物の罠であったのなら。もし、第3段階まで無事に完遂できてしまった場合、ウェスーク国はアリス以外、全員が原種という特異な集団になる。入植が始まれば、「バルバリア魔法戦線」に属さない原種の人間だって何人も入ってくる。アリスの排斥運動、革命でも起こったら、たとえ1人の離反者が出なくたって、この70人でアリスを守り切れるのだろうか。


「だから俺は、とりあえず最低限、ムー島との魔法通信が行えない距離まで離れてから、この危険性を伝えようと思ったんだが――」

「いいわよ、別に」


 なぜか、そんな言葉が私の口から零れた。


「だから、これから計画の練り直しを……は? いいって、なにがだ」

「私はお父様の復讐が達成出来たら、別に死んだって構わないわ」

「……何言ってんだよ、アリス」


 ああ、駄目だ。なんか私、今は良くないかもしれない。

 恐ろしい形相になったジョンが、私に詰め寄ってくる。


「聞いてんのかよ、アリス」


 私は視線を逸らしたまま動くことができない。


「分かってんのか、おい、アリス、お前!」


 ふと前を見ると、前から拳が飛んできているのが見えた。

 私、ジョンに殴られる?


「ジョン、やめないか!」


 すんでのところで彼の拳を止めてくれたのは、カリンだった。


「おいジョン、話は分かったからよォ、ひとまず頭冷やせ。な?」

「ジョンがカルロにそんなことを言われるだなんてね。でも、うん。時間はまだあるよ。僕も一緒に考えるからさ」


 ジョンは何も言わず座り込んでしまった。

 ひとまず、今日の会議はここでお開きとなった。何も言わなくなってしまったジョンは、カルロとジェファーが自室へと連れて行ってくれるらしいわ。


「ボス、あの、えっと……私と行こ? です」

「うん。ありがと、ルーナ」

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