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アグロンド王国物語-妖精国家の英雄譚-  作者: ガーレ
第1章-アリス編-

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第7話-上陸-

「――というわけで、この町の防衛義務を条件に、町の中心地からちょっと離れた場所を開発する許可が下りたわよ!」

「「「「「よっしゃああああああ!!!!」」」」」


 私の号令で、ワルハム中心から少々離れた海岸に、次々と同志たちが上陸していく。


「俺たちの拠点かァ! 鍛えた魔法の腕が鳴るぜ!」

「闇雲にブロックを積み上げようとするなよカルロ。まずは計画、設計だ」

「何だとジェファーてめェ!」

「カルロ! そんな力の有り余るお前にはいい仕事がある」

「おお、ジョン。了解だ」


 ジェファー隊は辺りの測量や拠点計画。カルロ隊は勝手に建物の建築を始めそうだったから、急遽、食料調達を指示。カリン隊は雑務全般。ルーナ隊は警戒監視。うんうん、中々いい感じじゃない。


「なあ、アリス」

「ん? 何かしらジョン」

「この町の防衛義務という条件について、詳しく知りたい」

「えぇ、分かったわ」


 町長との話し合いで決められた「町の防衛義務」という条件。この取引が成立するということは、町が攻撃される可能性があるということ。もしこの町が絶対安全なら、この条件で町側に利益が何もないのだから。


「私、話し合いの時におじ……町長に尋ねたのよ。なんで町民の顔が皆暗いのかって。そしたら――」


 サスーク国は、元ウェスーク、エスーク国だった町や村に極端な重税を課している、とのことだった。


 妖精種というのは、元々は森で狩猟採集を行って暮らしていた種族。でも、移住した先のバルバリア島には森が少なかった。あったのは、追い出した原種が残していった一面の畑。私たちは、食いつないでいくため知識0の状態から農耕を始めるしか無かった。

 最初の数年は上手くいくわけもなく、圧倒的に食料が不足していた。この頃が一番、お父様は権力に貪欲で、冷徹だった。幼い私を飢えさせないために、たぶん、数え切れないほどの非道を犯している。

 数年経つと、やっと農耕の経験が蓄積したこと、人口が減少し切ったこと、7大国により政情が安定したことなどから、致命的な食糧不足からは脱することができた。ウェスーク国では、お父様が徹底的な食糧流通、備蓄の管理を行っていて、この頃から餓死者は急減している。それでも、バルバリア島に棲む妖精種全体で見ると、食糧生産は充分というには程遠い。冬を越せない人もまだまだ多いのが現状よ。

 でも、そんな中でも、一部の国では支配階級――つまりは豪族が贅沢に溺れるようになった。現に今、サスーク国の豪族は、己の贅のため、奪い取った土地から食料を搾取している。金のため、大陸へ輸出しているという噂まであるんだとか。


「なるほど、冬への不安から皆表情が暗かったのか」

「そう、部族皆殺しを恐れて、多少の餓死者を出してでも、税を納めるしかない町や村が多いみたい」

「酷い話だな」

「だから」

「ん?」

「町長にサスークへの徴税を突っぱねて良いわよ、って。そう言ってやったわ!」


 顔見知りのブレットや、既に関わりを持ってしまったこの町の住民が飢えに苦しむのは見たくないものね……ってあれ。

 ジョンは私の言葉を聞いた途端、固まってしまった。


「あのー、えーっと、おーい、もしもーし」


 呼びかけてみるも、目の前で手を振ってみるも、応答が無い。これは、何かを考えこんでいる時のジョンの悪い癖。

 彼の長い金髪で遊ぶこと数十秒、やっと戻ってきた。


「なあ、アリス。次のワルハムの徴税はいつなのか、聞いてきたか」

「えっと、も、もちろんよ。冬越え前の11月中旬らしいわ」


 実のところ、聞いたのはジェファーなんだけどね……黙っておこう。


「そうか」


 彼は、私の言葉を聞いた途端、一瞬、ほんの一瞬だけ、ニヤリと悪そうな顔で笑った。

 私は出会った当初、彼の優しさしか見ていなかったけど、なぜかたまに、ほんのたまーに彼から狂気を感じるのよね……。




――――――――――


 上陸から1週間が経った日の夜、まだ拠点として使用している船の1室で、私はバルバリア魔法戦線6人会議を開催した。


「あなた達、今週の報告を順番にお願いね」

「まずは俺、カルロ隊だな。学院から盗……船に積んである食料で冬は越せるが、来年からの食料は心配だなァ。漁や採集だけでは到底足りん。だから、空いている土地の開墾を明日にでも始めたい」

「はい駄目」

「なんだとジェファー!」

「カルロ、座って」


 どうして普段は仲がいいのに急に喧嘩を始めるのかしら。男って分からない。


「次はあなたの番よ、ジェファー」

「うむ、僕の隊は順調だよ。ある程度の拠点を構えるのに必要な測量は終わった。設計は建築学を学んでいた者を中心にジョンとも相談しながらやっている。その内、ボスにも拠点の設計図をお披露目できるよ」

「楽しみにしてるわね」

「ケッ」

「それと、来週から道路や区画の基礎の土木工事を始めたいんだけど、カルロ隊の力を借りていいかい」

「おお! 分かってんじゃねェかジェファー」

「勿論さ」


 どうしてさっきまで喧嘩をしていたのに今は仲良さそうに肩を組んでいるの。男って分からない。あ、カリンも頭抱えてる。


「次お願い」

「……。はい、次は私の隊ですね。拠点での雑務全般、皆つつがなくこなしております。あ、ボス、いつもお手伝いありがとうございます」

「私もちゃんと動かないと、ね」


 実は私、普段はカリン隊に交じって働いていたりする。魔法が使えなくても問題ないことが多いしね。


「助かっていますよ。あ、そうだ。1つ相談があるのですが」

「何?」

「海の上での生活は終わりました。この際シフト制を廃して、学院と同じで皆『祈りの日』を休日とするのはどうでしょう。担当の子に70人分のシフト作成は重荷だと言われてしまい……」

「まぁ、確かにそうね。うん、ルーナ隊以外はそれで構わないわ」

「ありがとうございます、ボス」


 カリンは一つ一つの所作がなんか美しいのよね。教会育ちと聞くけれど、厳しいところで育てられたのかしら。どっかの片田舎の豪族の娘とは大違いね……はは。


「最後は――」

「は、はい。私、ですね。えっと、ルーナ隊、今週も何も異常なし、です。あ、でも一昨日、町で警備中におばあちゃんに飴貰いました、です」

「賄賂、ってこと?」

「ぴぇ」


 ぴぇ、だって。


「冗談よ、美味しかったかしら」

「! 美味しかったです!」

「お礼はちゃんと言ったのよね」

「は、はい!」

「ならいいわ。ルーナ、来週もお願いね」


 可愛げ満点のルーナは、町での警備に適任ね。

 さて、全隊一通りの報告は終わった。私がジョンに目配せをすると、彼は頷いて「あの」地図を中央のテーブルに広げる。何を隠そう、今回の会議を開きたいと言ったのはジョン、彼だったの。


「では、今回の会議の本題に入ろうか」

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