第三話 アリアの策略、ノアの決断
レティシアとノアの共闘は、公爵領の急速な発展をもたらしたが、それは同時に、王都の旧体制派の貴族や、王位継承を危惧するアルベール王子にとって、大きな脅威となった。
特にアリアの焦燥は、極限に達していた。彼女は、レティシアの政治的手腕がノアを通じて王室に影響力を持つことを恐れた。アリアの目的は、王妃の座を手に入れ、権力を握ること。そのためには、真のライバルであるレティシアを徹底的に潰す必要があった。
アリアは、アルベールの優柔不断な正義感を利用した。
「殿下。レティシア様は、公爵領の資金を私的に横領し、王国の財政を破綻させようと企んでいます。あの悪役令嬢は、国政にとって不要な毒です。聖女であるわたくしが、殿下のためにも、断罪しなければなりません」
アリアは、虚偽の証拠を捏造し、アルベールを焚きつけた。アルベールは、アリアの無垢な瞳に騙され、レティシアを横領の濡れ衣で告発することを決意する。
王都に戻ったレティシアは、アルベールからの公爵家への査察と横領罪の告発に直面した。社交界は、「やはり悪役令嬢は悪役令嬢だった」と手のひらを返すようにレティシアを非難し、公爵家は完全に孤立した。
レティシアは、ノアに真実を伝えた。
「ノア。貴方は、アルベール殿下への忠誠と、私への真の信頼との間で、最終的な決断を迫られている」
ノアは、深く苦悩した。彼は、アルベールに忠誠を誓っていた。それは、彼の公人としての誇りだった。しかし、レティシアへの愛と、彼女の無実への確信は、その誇りを凌駕していた。ノアは、水面下でアリアの不正を徹底的に調査し始めた。
「レティシア様。私が、貴方の無実を証明します。貴方を失えば、この王国に未来はない」
ノアの言葉は、王子の臣下としての立場を完全に捨てる決意を意味していた。レティシアは、ノアの誠実な決断に、心の奥底で涙した。
「ありがとう、ノア。私は逃げないわ。この薔薇の鎖を、私の力で解いてみせる」
レティシアは、ノアとの真の愛と、王国の未来のために、悪役令嬢として戦うことを選んだ。ノアの決断は、アルベールへの裏切りであり、レティシアへの命懸けの愛の告白でもあった。




