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第4話 俺に挑むからこうなるんだよ、このバカがよぉ‼

幼馴染の居眠り運転で死んだ屑達だったが異世界に転生した。屑達は初めて闘技場に行くことにしたのだがそこで屑の体は冒険者によって真っ二つに切られてしまう。

 俺は東条屑。幼馴染の居眠り運転によって死んだ俺達は地獄行きを避けるため異世界に転生した。

 今朝も目が覚めて、窓から見える中世ヨーロッパのような街並みを見てそのことを思い知らされた。俺を居眠り運転で轢き殺したのは幼馴染の詩織だ。最初はムカついたが、今はもう許している。

 さてと、食堂に行くか……。

 食堂に着くと既に詩織と和が机を挟んで話し合っていた。

 何話してんだ?……やっぱ考えたくねぇ、二人でいるってことはろくでもないことに決まっている、この前も所持金全部勝手に使われてたし…ハァ~聞いとかないと後からとんでもないことになりそうだな。

 重い足取りでゆっくりと詩織達の元に向かった。

「おー……」

「やっときたわね、屑。実は今和と話してたんだけど今日はギルドにある闘技場に行かない?」

 鋭い感性の詩織は俺が声を掛けるよりも先に気づき、隠しきれていない笑みを浮かべながらこちらに近づいて来た。

 闘技場、どうして?とはいえこいつがニヤニヤしている時点であまり気が進まないな。よし、金が無いと断ろう、ついでに金を使い切ったことを脅して今日の任務で扱き使おう。

「ダメだ、今日も任務だ。お前らのせいで絶賛金欠で無一文な……」

「それなら問題ない、昨日俺が詩織から一万ギラ借りてカジノに行き、爆勝ちに爆勝ちを重ね三十万ギラになった、ホラ」

 と、和がポケットから出した袋はジャラリ……と音を立てて机の上に舞い立った。

「またギャンブルしてたのかよ、仕方ない…闘技場行くか」

 断る理由を失った俺は怪訝な顔で闘技場に行くことにした。

 この前は十万ギラのギャンブルをして大負けしていたのに……本当に救えねぇな。

「やったわ!ナイス和」

「当たり前だ!」

 二人はハイタッチで祝った。まるで遊園地に行きたい子供が親を説得できた時のような喜びようだった。

 そこまでして行きたいものか、闘技場って?というか、こいつ普段は戦いたがらないくせになんで闘技場に行きたがるんだもしかして哲也さんの血が騒いでんのか?だったら任務のときに扱き使ってやろう。

「じゃあ朝ご飯食べるからちょっと待っててくれ」

「ダメよ!朝ご飯食べてないのはあんたが起きるのが遅いからでしょ?という訳で行くわよ!」

 食堂の配膳場に向かう俺の前に出て詩織は道を塞いだ。

「遅いって、まだ八……」

「うるさい!」

「グハッ!」

 詩織は訳も聞かずに俺に腹パンを決めた。血反吐を吐いて崩れ落ちた俺の視界は真っ暗になった。うっすらと消えゆく意識の中で詩織と和が大喜びで高笑いしているのが見えた。

 クッソがあいつら覚えてろよ、絶対に復讐してやる!

 随分と長いこと寝ていたような気がした。

「んん……」

 眩しっ!どこだここ?

 気が付くと俺はベンチの上で横になっていた。お腹が痛い……あっ!

「おい詩織!お前よくもやってくれたなァ!」

「ああーー」

 全てを思い出し、詩織の胸ぐらを掴み全力で揺らした。最初の揺れで詩織の口から唾が飛び散った。

 うえ!汚ぇ!どうやって復讐してやろうか…ククク…フハハハハ!

「屑やめろ、乙女相手に何してんだ!周りの人が見てるぞ」

「く……」

 俺に選択の余地は無かった。静かに詩織の胸ぐらから手を離した。周りの人が群がってきていたからだ、前衛を探しているのに悪い噂が流れたら誰も仲間になってくれなくなる。

 こいつら分かってやってるな…、まあいい次の任務で絶対に復讐してやる。

「ハァ~……でも闘技場なんて争いのないこの国で何のためにあるんだ?」

 ため息交じりに髪をボリボリと掻き、本題に入った。何故このバカ共は闘技場に拘ったのか、俺を殴ってまで急いで来たのか、分からないところはいくつかある。

「それは相手の使うスキルを見て実際に習得するか決めるためです。要はスキルポイント節約のためです。」

 突如として男が近づいて来た。見た目は輝くような金髪に深く透き通るような蒼色の目をしている。見るからにボンボンのような服装だ。

「へぇーライセンスに書いてあるスキルを覚えるか悩んでいるときに覚えている人と戦って実際どんな感じか見れるってことか…便利だな」

 手を顎に当て会話と別のことを考えつつ、俺は会話を続けた。

「まさにその通りです。そしてもう一つ理由があって冒険者ポイントというものがあってそのポイントを道具と引き換えるなど複数の用途に使えるためポイントを集める手段が決闘というわけです。」

「へぇーなら積極的に参加したほうが良そうだな」

「ここで会ったのも何かの縁です。一戦どうですか?」

「はい、喜んで」

 ここぞとばかりに俺は食い気味に答えた。

 この人は優しそうだし、俺が初心者ってことも理解してるからきっと負けてくれるだろう。楽してポイントゲットだぜ!

「「いよっしゃ」」

 また謎のタイミングで詩織と和が喜びハイタッチした。ここで違和感を覚えた俺だったが、目先のポイントに目が眩み深く考えなかった。

「私の名前はローレン・ノースです」

 ローレンさんは手をへその前に添えて、お辞儀した。いかにも紳士だ。

「俺は東条屑」

「俺は西宮和」

「私は南詩織」

 俺に続くように二人も自己紹介した。ローレンさんの腕が階段を指し、案内されるがまま俺はステージに上がった。

「まずルールですが決闘ではお互いの合意が必要です。ステージ外からの攻撃は禁止です。違反した場合はジャッジゴーレムが違反者を取り押さえます。決闘では自分の感覚を共有したゴーレムを使って戦います。だからどんな怪我を負っても大丈夫です。そして両者がステージに上がった時点で決闘開始です。最後にマナーですが最初にお互い頭を下げて後ろに三歩進みその後対戦開始です」

 決闘にもマナーってものがあるのか、面倒くさいな。まあ、守る気ないけど。

「それではよろしくお願いします。」

 ローレンさんのお辞儀に合わせて俺もお辞儀した。そしてローレンさんが頭を上げ切る前に杖を構えた。

 フハハハハハ!ギリギリのマナー破り、これなら初心者だからと許してもらえる。思いっきりマナーを破れば、誰も戦ってくれなくなるが、これならそんなことにはならない!俺の勝ちだァ!

「フレア!」

 杖先からローレンさん目掛けて火の玉を放った…しかし、ローレンさんは高く飛び火の玉を躱した。

 え、躱された⁉強すぎだろ、つーか初心者の俺に勝たせてくれるわけじゃないのか?だとしたらやばい!痛いのは嫌だ!

 空中でゆっくりと剣を抜いた。

「エンチャントフレア」

 二本指を立て、刀身をなぞった。そしてなぞったそばから剣は炎を纏った。

 何あれ⁉俺は無力な初心者冒険者だぞ!

「フライングスラッシュ」

 炎を纏った剣は俺目掛けて弧を描き、斬撃が飛んできた。斬撃は素早くどう頑張っても俺に躱せるものはなく、気が付くと俺の体は上下真っ二つに切り割れられた。そして俺のゴーレム体が崩壊し、ステージの上から姿が消え、元いたステージ横に姿が現れた。

「熱い!痛い!やばい、死ぬ!マジ死ぬ!」

 激しい痛みが俺を襲い、すぐにその場に落ちるように倒れた。その場でお腹を押さえて、地面の上でのたうち回った。

 熱い!熱い!熱い!痛い!痛い!痛い!この人俺が初心者だからポイント渡そうとした訳じゃないのかよ!

「大丈夫か?」

 俺のことを心配してそうな和はすぐに俺の元に駆け寄ってきた。

「傷は無いけど、痛すぎる‼本来なら死ぬような攻撃を受けたんだぞ!」

 大丈夫そうか、そうじゃないか一目で分かるだろ、バカ!

「「大成功!」」

 嬉しそうな和と詩織は俺を指差し、腹を抱え涙を流し笑った。どうやらこのゴミ共は手を組んでいたようだ。

 チクショウ、完全にハメられた!俺を熟練の冒険者と戦わせることが目的だったのかこのゴミ共が!必ず、必ずこの痛み以上の苦痛を与えて復讐してやる!

「すいません大丈夫ですか?」

 ステージ上からローレンさんは飛び降りて、俺に駆け寄ってきた。

「ま……まあ大丈夫です」

 大丈夫な訳ねえだろ、こっちは初心者冒険者なんだよ。頭使えよ、バカ!

 思うところはいくつかあったが勝負事なので流石の俺も口にする気は無かった。それにローレンさんよりも詩織と和に対する憎悪で頭が一杯だった。

「返してください、大事なものなのです!」

 どこからともなく女性の声が聞こえてきた。もめている声だ。

「ダメだよ~お嬢ちゃんルールはルールだからさぁ勝負の結果だから諦めなよ」

 今度は男の声だ。声からしてこちらに向かってきているのが分かった。

「そんな…勝負も何もあんなの卑怯ですよ」

「知らねえよ。ちゃんと考えなかったお前が悪いんだろ?」

 ここで初めて声の主である女性が見えた。女性の見た目は十七歳ほどで輝くような金髪に深く透き通るよう綺麗な蒼色の目、見るからにボンボンのような服装をしている。

 女の子はこちらを向いた、どうやら俺達に気が付いたようだ。そして走ってきた。

「……あのすいません助けてくれませんか?」

 申し訳ないとは思っているのか、俺達と目を合わせようとしなかった。

 うわ……面倒くさい。

「喜んで」

 反射的に答えた詩織は女の子のもとに走った。そうだった、詩織は幼女誘拐未遂をしたことのある腐れロリコンだったのだ。今もまさに危ない目で女の子を見つめ、よだれを垂らして千鳥足で近づいている。

 おいおい、こいつ大丈夫か?さっきから本当に何かやらかさないか心配だ。

「兄貴どうします?」

 大中小の男三人組の小が中を見上げて尋ねた。本当に良く見るような三人組のゴロツキだ。

「じゃあ、勝負しよう。三人がそれぞれ一対一の決闘をするルールは闘技場と同じだが勝った側は負けた側からなんでも一つ貰う」

 中が分かりやすく指の本数で表現した。よくあるゲームだ、見た目と言いゲーム内容と言い、こいつらには工夫というものを感じられない。

 こいつら勝手にポンポン話進めやがって……。

「ちょっと待て、俺はまだやるとは言ってない」

「何言ってんの?あんな可愛い娘助けない訳ないでしょ」

「その通りだ、美人を見捨てようとは男の風上にも置けないぞ」

 和も女の子の方へと駆け寄り、俺と向かい合う形となった。和までそっち側になるとは思っていなかったので少しばかり驚いた。しかしすぐに和が心配になった。

 こいつ、相手は見るからに未成年だぞ。やばいのは詩織だけじゃなかったのか……。

「なんでなんだよ。俺たちは駆け出し冒険者だぞ?勝てる可能性より負ける可能性のほうが断然高いだろ」

 こいつら…リスクって言葉知らねえのかよ。詩織は勝てるだろうが、俺と和に勝てる通りは無い。なのになぜこいつらは今助けることに拘ってるんだ。女の子が奪われた物に関しては、夜に一人づつチンピラを強襲して取り返してあげれべ良いだろ。俺は最初からそのつもりだ。

「だけど負けても失うものがないだろ?失うものが無いっていうのはギャンブルにおいて無敵状態なんだよ。ノーリスクハイリターンだからな」

 和の腕が俺の肩に乗り、うなじの前を通った。俺達には金目のものが無いことを悟られぬように、和は耳打ちで言ってきた。確かにそうだ、チンピラに負けて奪われるものは精々身に着けている服、持っている杖、それくらいなら和が稼いだ金で簡単に買い戻せる。

「確かにそうだな…分かったその勝負受けよう!」

「決まりだな、俺はダズだ」

 大中小の中のダズは顎を出し見下すように見てきた。

「俺はカルロスだ」

 大中小の小のカルロスはポケットに手を突っ込みオラオラ揺れなながら下から見上げてきた。

「俺はジェイだ」

 大中小の大のジェイはムキムキで圧倒的肉体美をしている。三人とも俺達と同じくらいの歳の黒髪、黒目だ。そして三人のあの大きな態度は絶対の自信からくるものだろう、俺達に負けることは無いと思っっているのだろう。

 ジェイはデカイしムキムキだな、多分一番強いのだろう、ジェイとだけは戦わないようにしよう。

「俺は屑だ。こっちの男は和だ。そしてこっちの女が詩織だ決闘の前に作戦を話し合いたいから少し時間をくれ」

 面倒くさいので詩織と和の自己紹介も俺が済ませた。

「いいぜ、せいぜい考えるんだな」

 ニヤニヤと笑みを浮かべたダズが言った。こいつの心の中は俺でも手に取るように分かる、『考えて来いよ、考えたって無駄だからよ』絶対にこう思っているに違いない。

 ムカつく顔だな、絶対にボコボコにしてやる。

 俺達は足早にこの場を去り、選手控室に着いた。

「ご迷惑をかけてしまい申し訳ありません。私はレベッカです。」

 レベッカという少女は懇切丁寧に深々と頭を下げた。どうやら本当に申し訳ないと思っているようだ。何故こんないい子がダズみたいなやつらと勝負をしたのだろうか。

 やばいなロリコンがそろそろ限界そうだ。

「ハァ…ハァ…レベッカちゃん歳は?」

 何故か息を切らしていた詩織は真面目な顔して聞いた。

 キモッ!何でこいつ息が乱れてんだ⁉

「え?十七です」

 戸惑いつつも答えた。答えてはいけないクイズに答えてしまった。

「ビンゴー‼可愛いわねレベッカちゃん私のことは詩織お姉ちゃんもしくは詩織姉って呼んで」

 年齢を聞いてすぐに詩織は後ろから抱き着いた。その光景を見て思い出した。

 そうだった、このバカは確か高校生の時に幼女誘拐未遂してたんだった。

「え?は?招致しました」

 レベッカは眉を寄せて分かりやすく困惑している。

 招致したらダメに決まってんだろ!どんどんこのロリコンが調子に乗ってしまう!

「詩織暴走するな、自分を強くもて母性に飲み込まれるな!」

 和がレベッカに抱き着いている詩織を引き剥がした。この言葉の意味が俺には理解できなかった。

 母性に飲み込まれるって何だよ!聞いたことない言葉の組み合わせだな……。

「はー…はー…危なかったわ、あと少しで完全に飲み込まれていたわ」

 ようやく正気に戻った詩織は息切れを起こしていた。どうやら詩織はギリギリのところで正気に戻ったらしい、俺にはこの状況の意味が正直分からなかった。

 このバカ!お前が変な気起こして捕まったらもう任務を安心して受けられないだろ!

「話が進まないから黙ってろよ。どうしてレベッカはあいつらと揉めたんだ?」

「実は…」

 レベッカの話で場面は三十分ほど前の闘技場に変わる。

 レベッカがきょろきょろと見渡しながらポツン、と立っているところにダズ達三人が近づいて来た。

「どうしたんだ?嬢ちゃん?」

 気さくな感じでダズは物腰柔らかく言った。

「どこかのパーティーに入れて貰うために来たのですが人に中々声を掛けられなくて……」

 モジモジとしているレベッカは不安そうなか細い声で言った。

「そいつは大変だな。そうだ俺達と勝負してもし勝てたらパーティーに入れてあげるよ」

「本当ですか?」

 先ほどまで暗くなっていたレベッカの表情が明るくなった。

「ああ、ただし俺達が勝ったら嬢ちゃんの物を一つ貰う」

 突如としてニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた。

「えぇ……、その賭け事のようなことは私やったことがなくて……。」

 レベッカは負けた時のことを考え不安になり下に俯いた。

「大丈夫だって負けてもたった一つ失うだけだから、それにここでやらないと一人でここに立ち尽くして帰るだけになっちゃうよ?」

 目力を込めたその表情はさっきまでとは比べ物にならない程怖くなっていった。

「それは困ります…分かりました、勝負します!」

 覚悟を決めたレベッカは前を向いて答えた。

「いいね」

「嬢ちゃん頑張ってくれよ」

 後ろから現れたジェイが優しくレベッカの肩を叩いた。

「仲間になれるって信じてるぜ」

 カルロスが右手でグッドサインをした。レベッカは二人の行動を応援と感じ勇気が湧いた。

 ダズと共にステージの上に移動したレベッカが挨拶しようと頭を下げたその時……。

「キャプチャー!」

 なんとダズはお辞儀をしていたレベッカに拘束スキルで奇襲を仕掛けたのだ。これにはレベッカも為す術なく、縄で拘束された。

「きゃあ!」

 手足を縛られ体勢を崩し倒れた。ダズは腰につけていた剣を鞘から抜き、ゆっくりとレベッカに歩み寄った。そして一振りでレベッカの首を真っ二つに切った。レベッカのゴーレム体は崩壊した。

「俺の勝ちだな、じゃあその金のペンダントをよこせ」

 レベッカの胸元にあるペンダントを指差して、ダズは薄気味の悪い笑みを浮かべた。

「お辞儀中に不意打ちなんて卑怯ですよ。それにこれは家宝なのでお渡しすることは出来ません」

 闘技場ステージ横に姿を現したレベッカは抗議した。

「それはダメだろ嬢ちゃんルールに無いことでいちゃもんつけるなんてさ」

 巨体のジェイが一歩一歩レベッカに向かって詰め寄った。

「素直に渡しなよ。そんな大事なもの持ってるならそもそもこの勝負を受けるなって話だろ?」

 逃げられないようにカルロスはレベッカの背後に立ち、一歩一歩詰め寄った。レベッカはじりじりと詰め寄られるたびに恐怖心が高まった。

「ジャッジゴーレムやれ」

 レベッカを指差しジャッジゴーレムに命令した。ジャッジゴーレムは抵抗するレベッカから無理やりペンダントを奪い取りダズに渡した。

 場面は元の俺達が話し合っている控室に戻った。

「ここから先は皆さんも見た通りです」

 教えてもらったダズの人間性はあまりに想像通りだった。さきほどの自信はきっと卑怯なことをするから負けないというものなのだろう。

 卑怯な手を使うってことは実力的には大したことないのか。

「そういうことね、お姉さんに任せなさい。絶対に取り返してみせるわ!」

 詩織はレベッカの手を取り目を見て言った。ニギニギとこねくり回すように触っており、レベッカの顔が少しひきつった。流石にこんな人間とは関わったことは無いのだろう。

「相手は随分と卑怯ですね、真面目に勝負をすればあなた達ではまず勝てないでしょう」

 壁に寄りかかって話を聞いていたローレンさんは静かに言った。

「相手が卑怯だろうとそうでなくても真面目に戦うつもりは無いからそこは大丈夫です。それじゃあ作戦会議だ。」

 五人で机を囲むように座った。

 そう、当然のことながら俺達は真面目に戦うつもりはない。卑怯なことだが卑怯ではない、相手の土俵に立って戦うだけのことだ。フハハハハ!前々から欲しいと思っていたものがようやく手に入る!

「作戦も何も相手の戦い方がわからないぞ。三人全員剣を持っていたから冒険者か戦士かぐらいしか見当がつかないぞ」

 作戦会議開口一番の和のセリフで会議は破綻した。開始早々一言で終わる作戦会議、バカすぎる。

「確かにどんなスキルを使うのかわかれば対策が取れるのだがレベッカスキルまでは見てないのか?」

「拘束スキルを使っていました。」

 頬杖をついて考えたレベッカが答えた。分かる情報は使うスキルのうちの一つのみ、こんなので勝てるのか?

「もう対策のやりようも無いし、こっちは取られて困るものは無いし気楽に順番だけ決めるか」

「私一番。一番に勝ってレベッカちゃんの家宝取り返していいところ見せたい!」

 詩織は小学生のように元気に手をあげて言った。本人の前で言ったら意味が無いってことが分からないらしいバカは下心をベラベラと喋った。

 絶対それ本人がいる目の前で言ったら意味なくなると思うんだけどバカなの、ねえバカなの?それに折角ならボンボンそうなレベッカに俺も恩を売っておきたいが、戦いたくない!

「なら和は二番いってくれ。作戦がある」

 戦いたくない俺は和に順番を譲った。この勝負大事なのは二試合目までだ。

「了解だ、屑。」

 俺の意図を理解してないのか、和は元気に答えた。そもそもこの勝負を受けたがっていたのはこの二人だ、この二人が勝負をつければいい。そして俺は楽してあれを手に入れる!

「本当に巻き込んでしまって本当に申し訳ありません」

 再びレベッカは、俺達の目の前に来て深々と誤った。よほど申し訳ないと思っているのだろう。

 ハァー…このままだと気負っちゃいそうだな……。

「別に良いよ、年上は年下を守らないといけないからな」

 彼女の肩ポンポンと叩き、憧れの人の受け織の言葉を使った。別に励ますつもりでやった訳じゃないが、俺が私利私欲のままにこの勝負を受ける気になっているのにこんなに頭を下げられると悪い気がしてきたからだ。 

「その通り、気にしなくていいのよ。ただ戦うのに使うからレベッカちゃんの剣借りてもいい?」

 どこか辛そうだったレベッカの顔もこの一言で、前を向き明るくなった。

 詩織がいたから俺がレベッカを励ます必要は無かったな。

「どうぞ」

 彼女は快く腰につけていた黄金の剣を手渡した。それはそれは高そうで、俺の目は丸くして驚いた。

 こんな高そうなものを身に着けてるからダズに狙われたんだろうな……。

 場面は闘技場ステージ横に変わり、ダズ達三人は長椅子に座って話していた。なにやら楽しそうな話だが、俺達をバカにした会話なのだろう。そんな妄想をしていると腹が立ってきた。

「やっと来たか、一番手は俺だ」

 三人の中で一番雑魚そうなカルロスが何故か自信満々に立ち上がった。負ける気が無いのだろう、ムカつくチビだ、後でその自信粉々に砕いてやる!フハハハハ!

「雑魚じゃん、ハァー、レベッカちゃんにかっこいいところ見せたいから強そうなのと戦いたかったのに……、仕方ないわね」

 詩織は対戦相手がダズパーティーの中で一番弱そうな男と分かりため息交じりに頭を掻いた。なんならムカつき過ぎたのか舌鼓まで打っていた。

 なんでこいつは相手を無駄に怒らせるんだ、勝てるからって調子に乗り過ぎだ。

「てめ……」

「ここで怒るな、今から戦うんだからステージの上で分からせてやればいいだろ」

 ダズが半歩前に出てカルロスの顔の前に腕を伸ばして発言を制止した。

「その通りですな、兄貴。やっぱ兄貴は天才だ。」

 どこがだ、バカ!ここで怒ったお前がバカすぎるだけだろ。

 二人は闘技場ステージ上に移動し数メートル距離を取った位置で対峙している。

「世間知らずな田舎者らしいから教えてやるよ。まずお互いにお辞儀をするんだぜ」

 カルロスの挑発から試合が始まった。親指で下を指し、『頭を下げろ』と伝えたいのか、『死ね』伝えたいのか、もしくはその両方なのか、いずれにせよ強気な態度だった。空気は重たい緊張感に飲み込まれた。

 手すりに肘をついて試合を眺めていると、レベッカが尋ねて来た。

「詩織さん勝てるのでしょうか、僧侶は攻撃魔法を苦手としています。いくら私の剣を貸したとはいえ僧侶がアタッカー職業の人に勝てるとは思えません」

 どうやらこの緊張感に耐えられなくなったのだろう。プルプルと震えていて、今に倒れそうな生まれたての小鹿のようだ。

「大丈夫、大丈夫あいつは強いから」

 不安そうなレベッカが安心できるように穏やかに答えた。

 確かに詩織のことを知らない人からしたら不安だろう、だがしかし俺と和はあの顔だけアル中女の強さをよく理解しているから微塵も不安は無い。

「そんなしょうもない手が効くと思ったの?早いところ終わらせてレベッカちゃんから感謝されたいから掛かってきなさい。プラスステータス」

 杖を掲げ自身に全能力上昇のバフを掛けた。そして手に持っていた杖を地面に投げ捨て、借りた剣を鞘から抜いた。

「バフ魔法掛ければ僧侶が冒険者に勝てると思ってるのかぁ、マヌケ!」

 カルロスは詩織に向かって飛び掛かった。対して詩織は背後から吹いて来た追い風に乗り目にも止まらぬ速さですれ違った。気が付くと男の体は上下で二つに分かれゴーレムが崩壊する前にさら粉々に分かれ、崩壊した。後からゴーレムを切った『ザンッ‼』という音が闘技場内に響き渡った。

 レベッカは驚き口をポカーンと開けていた。声が出ないらしい。

「言ったでしょ、あいつ剣道八段つって俺らの国では最上位の剣道の資格持ってるぐらいには強いから」

 そうあいつは滅茶苦茶強いのだ。だがあいつは任務の時に戦おうとしなかい、いつか怠慢な行動にはいずれ後悔させてやる。

「ケンドウ……?良くわからないですがすごいですね」

 レベッカは首を傾げ、困惑の表情を浮かべた。

 この前アイドルを街で見たが、ここにはアイドルオタクばかりが転生したのか?何故アイドル文化を広めて剣道を広めてないんだよ。ここは魔王によって脅かされているんだから戦力アップにつながる剣道を広めろよ!

「音が行動の後からするとはすごいものですね」

 ローレンさんは口元を手で隠し呟いた。何故かその目は輝いていた。きっとこの人は詩織とは違う種類の危ない人なのだろう。

「レベッカちゃん見てたー?どうだった私?惚れた?惚れた?」

 闘技場ステージ上から聞こえるように大きな声で言ってピースサインをした。

「かっこよかったです!」

 この一言が変態の心を深く刺激したらしく、顔を真っ赤にして自身をハグしてモジモジとしていた。

 何してんだ、バカ!

「お礼なら体で払ってくれればいいわよ」

 キモッ!こいつとんでもない下心をもって助けたんだな。

「ショウシャハシオリセンシュデス」

 ジャッジゴーレムが俺達サイドの旗を上げた。

「それじゃあ雑魚共まずはレベッカのペンダントを返してもらうわよ。」

 詩織はダズの持っている黄金のペンダントを指差した。

 これであと一勝すれば目的完了だな。もしかしてこれ余裕なのでは?

「チッ、ほらよ、ジェイ次頼むぞ」

 ダズは首を素早く捻りつつ舌打ちした。負けたことが気に食わなかったようだ。そしてペンダントを詩織に投げた。

 あいつ感じ悪いな……この後俺達に敬語使ってペコペコするくらい徹底的に倒して徹底的に煽り散らかしてやる!

「あぁカルロスの分は俺が取り返してやる!」

 ジェイは強い覚悟を胸に、拳を力強く握った。男は三人の中では一番強そうだった。その筋肉は膨れ上がっており、全身がミミズ腫れしたみたいになっていた。

「すまねえ…」

 負けたカルロスは俯いて言った。その姿はどことなく虚しく背景の一部のように存在感を失っていた。

「気にするな。僧侶あそこまで強いなんて誰も想像できないだろ?」

 ダズが肩に腕を回し励ました。

「ほらレベッカちゃん取り返したわよ」

 ステージ上から駆け下りて来た詩織はレベッカにペンダントを手渡した。手渡す一瞬も何か別のことをしそうでペンダント持っていない手で抑えていた。

「詩織さんありがとうございます」

 レベッカは彼女に頭を下げてペンダントを受け取った。満面の笑みを見た彼女は我慢が出来なくなりお辞儀をしているところを狙い抱き着いた。

 なにやってんだ、バカ!

「あの詩織さん⁉」

「気にしないでレベッカちゃん可愛いわね。和この勢いに乗りなさいよ」

「ああ!」

 次の試合に強い意気込みを感じさせるような返事だった。

 和が止めないから俺が止めないといけないのか……。

「はなれろーしおりーぼせいにのみこまれるなー」

 俺は面倒くさそうに棒読みで言い、腐れロリコンをレベッカから引き剥がした。

 恥ずかしい!こんなバカみたいなこと言わなければならないんだ、チクショウ!この辱め、必ず仕返ししてやる!

「和、作戦は分かってるな?」

 俺は人差し指と中指で自分の両眼を指し、次に和の両眼を指した。さながら洋画でよくあるワンシーンだ、おそらくこのジェスチャーの使い方は間違っているだろう。

「勿論だ」

 そう言い残しその場から静かに消えた、それに気づかずジェイは覚悟を決めステージに上がった。

 五分後

 男は一向に対戦相手が来ないことに少し苛立ちはじめていた。足首を起点にタンタンと地面を叩き、指でトントンとつついている。

「まだか、まさかビビって逃げたんじゃないだろうな!」

「トイレに行くって言ってたからもう少し待ってくれ」

 優しくいない和の代わりに、俺が苛立っている男をなだめた。辺りは一向に和が現れないことから重厚な空気感が流れている。そしてジェイの背後に突如として、和の姿が現れた。

「フレアフレアフレアフレアフレアァ!」

 杖先を男の後頭部に当て、逃げられないようにしたうえでゼロ距離で火の玉を集中砲火した。火の玉による煙幕が消え、崩壊したゴーレム体と和だけがステージの上に残っていた。

「いよっしゃー!」

 声高々に和は嬉しい感情を前面に表し拳を突き上げた。

「ナイス和」

「よくやったわ、和」

 和の見事な勝利に俺と詩織は拍手を送った。それに対してこの場にいる人間は敵味方問わずポカーンとしていた。

 よしっ、作戦通り!これで俺達の完全勝利だ!フハハハハ!ざまあみろ、バカが!さっきまで散々舐めた態度とってくれたからなぁ~‼仕返ししてやる!

「え?なんか卑怯じゃないですか?」

 レベッカは不安そうに俺達の顔を見て尋ねた。失格にならないか不安になっているのだろう。でも俺達は何も卑怯ではない。だって……

「いやルールは守ってるから」

 手を振って答えた。

 そうルールを守ってんだから何も悪くない!

「そうよ、ルールを守って戦ったんだから問題ないわ」

 詩織は不安そうな彼女の肩に腕を回しバックハグして励ました。顔がニヤついていてちょっと危なそうだった、ハグされている彼女は状況が飲み込めずハグされていることが気になっていないようだった。

「ふざけんな‼ルール違反だろこんなの無効だ‼」

 不意打ちで敗北したジェイはステージ横からジャッジゴーレムに訴えた。怒りに身を任せた罵声は実に哀れだった。

「ルール違反だぁ⁉どこにスキルを使った状態でステージに入ってはいけないってルールがあるんだよ。えぇ⁉」

 和の口はチンピラのごとくオラ付いものに変わっていた。

「ルール守ってるからってやっていいことと悪いことがあるだろ⁉」

 負けた男はチンピラっぽい和に対してチンピラな口調で言葉を返した。その場の壁を蹴り大きな音が響いた、物に当たる男の姿は惨めだった。

「お辞儀してる女の子の首切ったことを許容してるくせに何言ってんのよ、筋肉バカ」

 詩織が手を口に添えステージ横から野次を飛ばした。

「そうだぞ、筋肉馬鹿」

 俺も楽しそうなので手を口に添え、野次を飛ばした。

 それにしても詩織の言う通りだな自分たちも似たようなことやって勝ったくせに無効になると思ったんだ?バカなの、ねえバカなの?いーや、お前はバカだね‼

「ショウシャハカズセンシュデス」

 と、ジャッジゴーレムは和サイドの旗を上げた。

「フハハハハ!ざまあみろバーカ!お前らの負けだ!」

 勝利したことが嬉しくついつい敵を煽ってしまった。この時の爽快感は素晴らしいもので気持ちよくて仕方なかった。

「ジャッジゴーレムが言うんだ仕方ねえ何取られても俺が取り返してやるから安心しろ」

 ダズが励ますように力強くジェイの肩を叩いた。

「そうしようぜ。俺らは二人とも負けちまったんだからな」

 カルロスがもう片方のジェイの肩を叩いた。哀れなチームだ、俺の言葉を聞いていないのか?取り返すことなんてできないって言うのに……。まあ、分からせてやるか。

「お取り込み中悪いが二試合目の勝利で俺達はダズお前を貰う、それで次の試合は不戦勝でこっちの勝ちだ」

 勝利の笑みを浮かべてダズを指差し、三人の男たちを絶望の淵へと叩きこんだ。

「な⁉」

 詩織と和を除く全員は俺の発言に驚きを隠せず口から言葉が漏れた。三人の男の顔は無力感に覆われ何とも言えない表情になっていた。レベッカとローレンさんはフナのように大きな口を開けてパクパクとしていた。

 フハハハハ!舐めた態度を取るからだ、バカめ!

 足から力が抜けたダズは膝から崩れ落ちた。なんとも言えない高揚感に包まれれ俺は唯々笑っていた。

「ということは屑さんたちの完全勝利ですね。なんだか卑怯な気がしますが」

 首を傾げいまいち納得は出来ていない様子のローレンさんだったが、俺達の勝利を認めた。

「それじゃ可哀そうだからダズお前は要らないから元のパーティーに戻っていいぞ」

 手でしっしっと払いのけるジェスチャーをした。別にダズが欲しい訳じゃないし、任務の取り分が減るのは嫌なので早々に返した。倒れているダズに二人の仲間が駆け寄ったが。

 さてとリスクを冒すような助け方を本題はここからだ。

「三戦目の勝利で貰うものはこっちが貰うものはダズ、お前の家だ」

 ニンマリと口で薄い弧を描いた。その口は多くの部分を月食された月のようだった。

「は⁉家?そ、そんな生きていけなくなる頼む、べ、別のものにしてくれ」

 怒涛の急展開に頭が追い付かないダズろれつが回り切らない様子だった。それでもなお俺の足に縋りつき必死に懇願してきた。懇願したら許してもらえると思っているのだろうか?

「何言ってるんだ?何でもって言ってただろ」

 腰を落とし哀れな男に目線を合わせて言った。

 フハハハハ!この俺に勝負を挑むからこうなるんだよ、このバカがよぉ‼

「でも家は…」

「そうだぞ、卑怯な手を使って勝ったくせに」

 返す言葉を失った哀れな男に変わりカルロスが庇って言った。仲良いチームなことが簡単に伺えた。

「何言ってんだ?お前らだって卑怯な手を使ってレベッカに勝ってペンダント取ったんだろ?ジャッジゴーレム頼む」

 中々行動に移そうとしないダズに腹を立て、ジャッジゴーレムに命令した。ダズからは抵抗しようという意思は見えるが、無気力状態で簡単に家の鍵を奪われた。

「あ…あぁ…」

 眼は活気を失い、座り込んだまま天を仰ぎ見ている。

 ざまあみろ、バーカ!

「それじゃ行くか」

 哀れな三人組に背を向けて闘技場を後にした。

「あの、いくらなんでも卑怯だったのではないですか?」

 罪悪感にさいなまれてなのだろうが、レベッカは立ち止り俺の袖を掴んだ。この子は随分と道徳的な人間だそうで、自分を騙してきた人間の心配をしているようだ。

 これは重傷だな、このままだとレベッカ自身が罪悪感で押し潰れそうだな。仕方ない………

「そんなに心が辛いのなら卑怯な人間に対して相手の得意な分野で戦って勝っただけだと思えばいいんだよ」

 袖を掴む小さな手を掴み、憧れの人を真似て優しい声色で持論を述べた。言葉を聞いて少しばかり顔が明るくなった。

「…確かにそうですね。相手の得意分野で勝負して勝ったと思うと悪いことした気分になりませんね。」

 俯いていた状況から顔を上げて答えた。どうやら強く彼女自身を縛り付けていた罪悪感から少しばかり解放されたようだ。

 真似しただけでこれか、やっぱ紫苑姉さんは凄いな。それにしてもこの子は本当に大丈夫か?将来とんでもない詐欺に引っかかるんじゃないのか?

 そんなことを考えていると、いつの間にか俺達はギルドの外に出た。空は薄い橙色に染まり太陽は真っ赤になって地平線に沈み始めている、すっかり夕暮れだ。

 闘技場ってギルドの中にあったのか、詩織に殴られて気を失っているすきに連れてこられたから分からなかった。

「またどこかでお会いしましょう」

 ローレンさんとレベッカは口をそろえて言い、俺達とは反対の帰路に就いた。

 随分と仲良いな、元々知り合いだったのか?

「……ありがとうございます、お兄様。」

 レベッカ達の会話が聞こえた。

 お兄様⁉確かに言われてみたら似てたな。

 背後からこちらに向かってくる足音が聞こえた。振り返るとそこにはレベッカがいた。顔を真っ赤にして緊張してるのかモジモジしていた。

「あの、皆さん!私を仲間に……」

「勿論いいわ」

「黙れバカ!今明らかに感動的なシーンだっただろ。レベッカもう一度言ってくれ」

 折角の感動シーンを邪魔された俺は思わず詩織の額をチョップした。そしてどうぞ喋り下さいと言わんばかりにレベッカに手を向けた。悪魔のパスだ。

「えぇ……、恥ずかしい。あの私を仲間にしてもらえませんか?今回のことで分かったのです。真面目な人のままでいたら大事なものを失うだけなのだとだから皆さんの下で勉強させてください」

 地平線に浮かぶ夕日と同じ真っ赤な頬のにしている女の子は腰を折って深々と頭を下げた。一度詩織が許可されていたにも関わらず、不安な気持ちからギュッと目を閉じていた。

「夜の学習は私がしてあげるわ」

 頭を下げて下を向いている女の子の顔を覗き込むようにしゃがみ込んで下から覗き込んだ。

 相変わらずこいつは空気読めないやつだな……。レベッカは剣持ってたし前衛は出来るのだろうから仲間に加えることは文句はないが人に騙されて金を騙し取られたりしないのかが心配だ。

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