第35話 このペットは実験動物です!
俺は東条屑。遂に俺達は、魔王軍幹部ジャイアントスライムのイートを討伐した。
煌びやかな装飾を施された王宮の中に俺達は来た。
魔王軍幹部討伐の功績をたたえて勲章を授与されると聞いて来たが、王宮は緊張するな。
「ねぇ屑、私凄いことに気が付いたわ。」
「それ勘違いだ」
ちょっとテンションの高い詩織の話を俺は、適当にあしらった。
どうせ、下らない思い付きだ。何なら迷惑かけられるかもしれない。
「それはね」
「俺の言葉聞けよ」
「魔王軍の幹部を倒したんだし、私たち賞金が貰えるんじゃない?」
「た、確かに!」
俺の思考の中に稲妻が走った。
あの時は正直それどころじゃなかったから賞金のことは何にも考えられなかったが、冷静になってみれば確かにそうだ。金だ金だ金だ金だ金だァ!
「それは大いにあり得るよ。確かこの前見た時のイートの懸賞金は、十億だ」
「じゅ、十億ゥ‼」
紫苑姉さんの言葉に、満面の笑みで俺と詩織は驚いた。
十億、討伐したに成功したのは俺のアイデアのお陰だ。つまり、俺が六、詩織が二、残りの二が他にも一緒に参加していた人たちで山分けが妥当だろうな。
「六億ギラか……俺…冒険者辞めよ!」
六億ギラの重みで達観した俺は天を仰ぎ見て叫んだ。
「この我のお陰で悪を打ち滅し者(詩織)が復活(体力回復)し、この国を滅ぼさんとする脅威を葬り去ることができたのだっ!我は半分の五億ギラ貰うぞっ!」
クガの高笑いが王宮の中で何重にも鳴り響いた。
「何言ってんだ、バーカ!俺のアイデアのお陰でイートを小さく固められたんだろ。俺が六億貰う」
「私が君たち二人を守ってあげていただろう?私が九億頂こうかな」
「え⁉」
イカレタ要求額に驚きを隠せず俺とクガは、首をグルンと曲げて紫苑姉さんの顔を見た。
「皆何言っているの?賞金は十億全部私が貰うわよ。」
「全部⁉」
俺達は、詩織の一言に口をそろえて驚いた。
全部はダメだ、何か言い返さなければ。
「な、何言ってんだ。お前なんて、ずっと絶望してただけで最後の最後に大活躍しただけだろバカ!」
「その通りよ。私は最後に大活躍しただけ……でも考えて、イートを倒したのは誰?屑?違うわよね、だって屑はイートを小さくしただけもんね。」
「くっ……」
痛いところ突かれて、俺の口は返す言葉を失った。
こいつ、普段は無能なのに、今日はなんでこんなに鋭いんだ……⁉
「じゃあクガ?それも違うわよね、だってクガは私の体力を回復しただけもんね。」
「ぐっ……」
詩織の言葉でクガの顔が曇った。
「じゃあお姉ちゃん?それも違うわよね、だってお姉ちゃんは屑をからかっている間にイートに捕まったもんね。」
「くっ……」
図星を突かれて、紫苑姉さんの小さな手は無い胸を掴んだ。
「それによく考えてみてよ。賞金は言わば討伐報酬、じゃあ最後にトドメの一撃を決めた人が貰うべきでしょ?」
喋れば喋るほど詩織の顔がゲスい笑みを浮かべていった。
何で今日に限ってこのバカの頭は回るんだよ!
「皆さん静粛に!国王様が来られます!」
衛兵の掛け声でその場の空気は緊張感を帯びた。そして寸分の狂いもなく、その場にいた衛兵たちは敬礼した。急いで俺達も敬礼をした。
国王か…金が貰えるなら何でもいいが、詩織を論破して最低でも三億は俺が手に入れてやる。
「まあまあ、そう畏まるな。私はあくまでも代理だ……いずれは代理じゃなくなるのだがな。」
横のドアから入ってきた高級感あふれる装束を身に着けた国王代理は、のそのそと歩いて玉座に座った。
「それで…イートを討伐したというのは君たちだね。」
「そうです、この私が討伐しました!」
我先にと詩織が手柄を自慢して言った。
「そうか…では私、ウラギの名において十億の賞金をお渡ししましょう……と!言いたいのですが、現在イートに破壊された街の復興で国としてもお金が無いのです。そこで相談なのですが、十億の賞金を我が国に寄付することにしてくれませんか?」
「い…」
「喜んで!」
拒否しようとした詩織の口を塞いで俺が答えた。
「英雄達よ、感謝する」
「そんなぁー!」
フハハハハ!ざまあみろ、バカめ!
「何で邪魔するのよ!別に私が十億ギラ手に入れても屑は損しないじゃない!」
小さな手が俺の胸ぐらを掴み力の限り揺らした。
「違う、よく考えろ。国王の提案を拒否したら絶対打ち首だぞ⁉それにレベッカが見てる、ここで十億を顔色一つ変えずに寄付したら間違いなく好印象だぞ」
詩織以外の誰にも聞こえないように俺は耳打ちした。
「確かに!私南詩織は喜んで十億ギラをカガクの国復興のために寄付します!」
先ほどまでの動揺が嘘のようにキリっとした表情で詩織が言った。
今更遅いだろバカ!それに俺は詩織ためを思って言ったわけじゃない…ただ詩織が十億ギラ手に入れるのが気に入らなかっただけだ!
「そうですか、ではお帰り下さい。……ああそうだ、イートを討伐していただいたので感謝のパーティーをここ王宮にて開催するので今夜またそこでお会いしましょう。」
玉座から立ち上がりウラギは去り際に思い出して言った。
「それじゃあ、宿に帰るか」
玉座に背を向け、俺達は宿に帰った。
宿について俺達は大部屋のソファに座り話し合っている。
「レベッカちゃん見てた?」
「え?」
「私の十億ギラの寄付よ」
どうやら詩織は先ほどのことをレベッカに言いたくて、言いたくて仕方がなかったようだ。
「あ、ハイ見ました。十億ギラも寄付するなんて流石ですね」
「そうよ、私は流石なのよ。本当は私達の結婚式のために使いたかったけど仕方ないわ。」
鼻の下を伸ばしに伸ばした詩織が無い胸を張って言った。
「屑褒めて使わすわ」
「ああ」
随分と詩織は嬉しそうに俺に耳打ちした。
何か嬉しそうだな…、気に食わない。これなら十億手に入れさせて奪った方がよかったか?
「フフフ、レベッカちゃん王宮でのパーティーの後私の部屋に来て。二人きりでパーティーしましょ、レベッカちゃんからクラッカーを鳴らしてあげるわ!今夜は寝かせないから」
「や、止めてください!」
ツルの様に絡みついて来る詩織の体を必死に押しのけてレベッカが言った。
「テレパシーで聞こえていたよ、屑は変わらないな」
紫苑姉さんは俺の横にスッと出て来て言った。
「ゲッ…あれ?君呼び辞めたんですね」
「まあ、屑のことを呼び捨てにしたら怒る親父がいなくなったからね。昔みたいに呼び捨てで呼ばせて貰うよ。それとも大人なお姉さんに君呼びされるのが好きなのかい?」
俺をからかう紫苑姉さんは手を口に当て、笑みを浮かべていた。
「違いますよ!」
俺は反射的に拒否した。
「なんや屑は大人なお姉さんが好きなんか?ええ趣味してるやん」
レベッカのポケットから俺の肩に飛び移ったハムスターが嬉々として言った。
「お前まだいたのか」
「そらそうやろ、元の飼い主が見つかるまではレベッカの相棒なんやから。これからもよろしくな、お姉さん好きの屑!」
「勝手に俺の性癖決めつけんな」
「ヘブッ!」
肩に乗っていたハムスターを俺は手の甲で弾き落とした。
「そういえば君の名前は何かな?」
ハムスターを上から覗き込んだ紫苑姉さんが尋ねた。
「ワイは『ああああ』や!」
ハムスターはイカレタ名前を自信満々に答えた。
「ん?人間様をバカにしているのかい?」
「ちがっ…」
「さようならっ‼」
「またかいなぁぁぁぁぁ‼」
お決まりの人間様をバカにしたハムスターは、宿の窓から投げ飛ばされた。
「『ああああ』なんて小学生がゲームでどうていもいいキャラクターにつける名前だよ。人間様に喧嘩を売るなんて、困ったハムスターだね。」
ため息を吐き、紫苑姉さんは首を振って言った。
「紫苑姉さん…本当にあいつの名前は『あああああ』なんです」
「え?本当?」
「本当」
真実を知り悪いと思った紫苑姉さんの顔は少し血色が悪くなった。
そこから数分してハムスターが宿の中に帰ってきた。
「全くどないなってんねん!信じられんわ!ワイの名前のどこがおかしいねん‼」
鼻息を荒らしたハムスターが顔を真っ赤にして言った。
うわ~怒ってんな。
「全部」
「屑何てこと言うねん」
俺を力強く指差し、ハムスターは憤慨した。
「確かに前々から思ってたのよね、あんたこと名前で呼びづらいって。」
「ホンマにぃ⁉」
詩織の言葉が余程突き刺さったらしく一度大きく開いた口は閉じなかった。
こいつ今まであの名前を本当に普通だと思ってたのかよ⁉頭おかしいだろ…。
「ハムスター君、私が名前を考えてあげようか?」
「え……頼むわ!いい感じの名前をワイにくれや!」
涙を流し喜んで紫苑姉さんに抱き着いた。
「分かった、うーんそうだね……モルモット何てどうかな?」
紫苑姉さんは顎に手を当て悩んだ後に提案した。
「モルモット…モルモット…ええな!気に入ったわ!今日からワイはモルモットや‼」
嬉しそうに新たな自分の名前を嚙みしめるようにハムスターは口ずさんだ。
「ねえ屑、この名前から別に意味を感じるのは私だけ?」
「いや、俺も感じてる」
ハムスターに聞こえないように俺と詩織は小さな声でコソコソ話した。
明らかにこの名前に他意がある。紫苑姉さんはこのハムスターを『モルモット』実験動物としか見ていないということだ。…言ったら言ったで、ハムスター怒りそうだし面倒くさそうだ、言わないでおこう。そしてなにより言わないでいた方が面白そうだ!
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