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第34話 別れ

 俺は東条屑。魔王軍幹部ジャイアントスライムのイートに襲撃され、哲也さんが殺され、残された紫苑姉さんは俺をからかっている隙をつかれイートに飲み込まれた。それで絶望していた俺達だったがそんな中、力士のブタマンたちが助っ人として現れてようやく希望の光がこちらを照らし始めた。


 中世感あふれる街はイートにより瓦礫の山と化し、空は雲に飲み込まれている。


「ブタマン達任せたぞ」

 俺は固く握った拳をブタマンに向けた。


「任せて欲しいでごわす」

 覚悟のこもった拳で俺とグータッチをした。


「俺達も信じてくれよ、モテねえ親方の恋愛を成就させてくれたこと心の底から感謝してるからよ」

「ああ、毎日毎日鍋の中に鼻水こぼして困ってたんだ、挙句の果てに見学に来たマネージャーには『柱稽古してみないでごわすか?私の股には立派な大黒柱があるでごわすよ』」


 キッモ‼最悪の親方じゃねえか‼こんなやつ信用して良いのか?でも仕方ない、だってやるしかないんだ!


「それじゃあいくぞ」

 俺達は分散して走り巨大なイートを囲んだ。


「くらえ!ソルト‼」

「ソルト‼」

「ソルト‼」

 俺に続いてブタマンを含む三十人ほどの力士が手の平から塩を飛ばし、イートにぶつけた。


「そんな攻撃が効く訳がないだろう‼」

 自身を囲っている俺達に対してイートは攻撃を仕掛けてきたが、しかし攻撃は外れた。


「な、何ぃ⁉どういうことだ⁉」

「バカが足元を見てみろよ‼」

 そしてイートは足元を見て驚いた。イートの足元には巨大な水たまりが出来ていたのだ。


「どういうことだ⁉」

「フハハハハ‼スライムは塩をかけると水分を放出してスーパーボールになるんだよ、今時小学生でも知ってるぞ、このバカがよぉ‼」


 そう、俺の作戦はただイートに塩をかけるという簡単な作戦だった。


「こ、この野郎俺を、俺をバカにするなぁ‼」

 憤慨し、無闇やたらとイートは攻撃した。


「無駄だよ、バーカ!足場が定まらないのに攻撃が当たる訳がないだろ!」

 勝利を疑うことなくなった俺はドヤ顔でイートをバカにした。


 俺達か浴びせられる塩でイートの体は、見る見る小さくなっていきすぐに紫苑姉さんを救出できた。


「紫苑姉さん大丈夫ですか⁉」

 俺は救出された紫苑姉さんに急いで駆け寄り意識を確認した。


「ハハハハ無駄だ、その二人は俺の毒を吸収したんだ、俺を殺さん限りスキルでも治せん。」

 塩で水分を奪われテレビ台程度の大きさになったイートが言った。


 な、何⁉詩織に治してもらおうと思ったのに、とはいえこれだけ小さくなったイートを討伐するのは簡単だ。


「フレア!」

 手の平から火の玉で放ったが、しかし何の意味も無く消えた。


「流石に効かないか……」


「だったら私が」

 レベッカは折れた剣を取り出し、イートを突き刺そうとしたが、しかしイートには傷一つ付かず剣の刃が欠けた。


「な、さっきまで柔らかかったのに⁉」

「貴様は馬鹿だな~、水分が抜けたんだから硬くなるに決まっているだろう?」

 俺の驚愕の表情にしてやったりと言わんばかりに笑みを浮かべて言った。


 確かにそうだ、クソ考えが足りなかった。折角イートの中から救出したというのに……。


「おいおい、まだ絶望するのは早いぞ。さっきまでは巨体だったが故に一部分しか守れなかったが今は違う、全身を覆えるぞ!スーパーカウンター‼」

 イートは体全身にカウンタースキルを掛けた。


 早くイートを討伐して紫苑姉さんたちを助けないといけないのに……。


「こうなったら、スーパーカウンターを破る攻撃ができる人を待とう。どうせイートは何もできないんだ。」

「そうするしかないわね」

「ハハハハハ!このまま俺がその時を待つと思うか?答えはノーだ、ペチャパイ一号!俺は空気中の水分を吸収して元に戻って貴様らを瞬殺してやるっ!」

 再び俺の計画はイートに阻まれた。


「何言ってんだ?塩で埋めればいいだけだろ、バカ!」


 とは言えどうしたらいいんだ…。攻撃できない、救世主を待てない、本当にどうしたらいいんだ?


「どうしたらいいんだ…」

「分かったで、イートの倒し方が!」

 ハムスターのその一言は、この場に希望を走らせた。


「どうするんだ?」

「ワイのバリアを破った、相手のカウンター、防御、それら一切を無視して斬る詩織の一撃や!」

 その場の注目が詩織に集まった。


「え?私?私今日はバフ使っちゃったから筋肉の限界でまともに剣振れないし、何よりあの親父の技を私は成功させたことが無いわ」

 細い指は詩織に向かい、そして美しい腕がメトロノームの様に左右に揺れた。


「悪を打ち滅ぼす女神の復活(詩織の回復)なら我に任せろ!」

「クガ魔力切れなのに何をする気だ?」

「パーフェクトヒールだ!魔力はレベッカに頼み、大魔導士が飛び散らせた悪の片割れを吸収して(紫苑姉さんがバリアで弾き飛ばしたイートの一部を食べて)回復した」


「でも…私には親父の技が出来ないわ」

 自分がもう少し強ければ救えたのに、そう思うと悔しくて仕方ない詩織は俯いて答えた。


「大丈夫です。詩織さんならできますよ!紫苑さんを助けるのではないのですか⁉」

 柔らかく小さな手は色白く自身より少し大きな手と交わった。


「そうよね、私なら出来るわ!クガいつでも良いわよ」


 さっきのショボくれていたのは何だったんだ?まさかこの期に及んでレベッカから何かしてくれるのを期待していたのか……?生粋のロリコンだな。


「パーフェクトヒール!」

 クガの回復魔法で詩織の体は完全回復した。


「親父、力貸してなさいよ」

 手に持っている哲也さんの剣に詩織は声を掛けた。


「ふぅー…ステータスプラス!」

 詩織は精神統一をした後に自身に全能力上昇のバフ魔法を掛けた。そして軽い足取りで走り出し、イートの手前で高く飛んだ。そこから落下しながら回転し、遠心力を利用して力強く剣を振った。


「オラァァl‼」

「グウゥオォ‼」

 詩織の一撃を必死に耐えようと力んだ。


「いい…加減に‼くたばりなさい‼」

「ぐうぅぅああぁあ‼」

 刃は地面に突き刺さった。そうイートの体を二つに切り分けたのだ。イートの体は魔力を失い、塵と化し風に流されて消えた。


「…ん?」

 紫苑姉さんが意識を取り戻し起き上がった。


「イートは⁉」

 意識を取り戻して開口一番に紫苑姉さんが尋ねた。


「お姉ちゃん」

「紫苑姉さん」

 俺と詩織はすぐさま紫苑姉さんに抱き着いた。すぐ紫苑姉さんの白衣が濡れた。


「二人とも無事だったようだね……」

「でも……親父が…」

「そうか…」

 詩織が言い切らなくても紫苑姉さんには何が言いたいのか理解したようだ。


 紫苑姉さんは助けられたけど、哲也さんを助けられなかった……。


 頬を一粒の水滴が流れた。


「俺がどうした、詩織?」

「え……?」

 詩織の視線の先にいたのはイートの毒性によって消化されたはずの哲也さんだった。


 え⁉生きてる⁉


「親父ぃ‼」

 詩織は考えることなく哲也さんに抱き着いた。


「怖い思いさせて悪かったな、でも仕方なかったんだ。俺は残っている願い事で元いた時代、詩織からしたら二年前の日本に転生しないといけなかったから。」

 全てを悟ったその顔は雲の中から覗いて来た日の光に照らされて、黄昏ていた。


「二年前⁉」

「やはりそうなのか」

 詩織とは相反して、まるで初めから分かっていたかのように紫苑姉さんが言った。


「紫苑は気がついていたのか」

「勿論だよ。詩織と屑君は知らないだろうが、この世界で初めて親父と会った日、親父は『一緒に飲むのは初めてだな』って言っていたからね。どうやら勘づいていたのは、私だけでなく屑君もみたいだね」

「……ええ、僕も気がついていました。哲也さんは詩織のことを十八歳だと言っていたので」

 突然の別れに、俺は涙を堪えて言った。


「そうだったのか……それじゃあ女神がくれたこの時間も終わりみたいだ。紫苑、詩織、屑君、次は天国で会おう」

「親父!」

「親父!」

「哲也さん!」

 手を振って別れを告げる哲也さんに俺達三人は涙を流して抱き着いた。


「もう、俺が守ってやれないから……三人で……助け合って生きるんだぞ」

「うん‼」

 哲也さんの胸の中に顔をうずめていた俺達は、最後に哲也さんの顔を目に焼きつけようと哲也さんの顔を見て答えた。そして哲也さんは光と化し、風に流れて消えた。


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