第27話 俺以外の男がいなくなればモテる 恋のお手伝い(3)
俺は東条屑。喋るハムスターを飼い主のもとに返すべく、カガクの国にやってきた。そしてカガクの国の住民ブタマンの恋愛を手伝わされる羽目になった。
辺りは昼の太陽がまぶしく照らす、中世漂う街中。
「今度こそブタマンの恋が成功する作戦は無いか?」
俺はこの場にいる詩織、レベッカ、クガ、ブタマン、ハムスターに問いかけた。
「そろそろ私の出番って訳ね」
詩織は胸を張って、自信に満ちた顔で答えた。
こいつの作戦は無駄だ。顔だけ男が寄ってきていたこのバカに、人を惚れさせる方法何て分かるわけない。
「お前はダメだ、顔だけなんだから恋愛なんて分からねえだろ」
「は⁉な……」
「あの、私に考えがあります。」
詩織の言葉を遮り、レベッカが言った。
レベッカの考えか……、ボッチなのだろうが、詩織の考えよりはマシだろう。
「考えってなんだ?」
「それは、愛を込めた花束を渡す、愛の花束作戦です。」
「は?」
レベッカの作戦に、俺達は頭に『?』を浮かべ、口から声が漏れた。
何を言っているんだ?通りすがりの人に、突然愛と花束を渡されたら怖いだろ。
「花束のために、頭の中の花を摘んだ方が良いんじゃないか?」
俺は、人差し指で頭をつつきながら言った。
「な、誰の頭がお花畑ですか⁉」
レベッカは顔を赤くして言った。
「頭の中お花畑なレベッカちゃんも素敵よ」
レベッカの肩から顔を出した詩織が言った。
「お花畑じゃないですよ、女の子は皆花束に憧れるものですよ!」
「じゃあ、これでおいどんと付き合ってくださいでごわす。」
ブタマンは道端の花を摘み取り、レベッカの前に出して言った。
「嫌ですよ!花束といってもどの花でもいいわけではないですよ!」
「そんな……、一生懸命探したのに」
ブタマンは俯き悲しんだ。
そんな花三秒で見つかるだろ。って、こんな話をしてる場合じゃない。とっとと終わらせないと。
「それじゃあ他に作戦がある奴いるか?」
「いい加減私の作戦をやらせてもらうわよ」
「……分かった」
嫌だ、どうせ失敗するだけだ。とはいえもしかしたらということもる。
「ふっふっふ、まずまともな思考回路を持っている人間なら、突然話しかけて来たブタマンと付き合うことは無いと思うわ。」
「だから俺達は困ってるんだろ」
俺は、詩織の無駄な説明に横やりを入れた。
ブタマンがモテない側の人間だから俺達は苦労しているのに、今更無駄な説明をしやがって、面倒臭い。
「その通り、屑君よく分かりましたね、では次の質問です。まともな思考回路を乱すにはどうしたらいいですか?」
詩織は突然教師のような口ぶりになり、俺に質問した。
教師のフリをしやがって、本当に面倒くさい。普通に作戦言えよ。
「分かりません南先生、ヒント下さい。」
教師のフリをする詩織に合わせて、俺は生とのフリをした。
面倒くさいが、ここは合わせないといけない感じだし、このノリに合わせとくか。
「そうね、ヒントはちょっと待ってね、レベッカちゃんは分かりますか?」
「分かりません」
レベッカもこの空気感に流されて生徒のフリをした。ボッチだと思っていたが、レベッカも意外とノリが良かった。
「じゃあ、クガ君は?」
詩織は、クガの方を振り向き尋ねた。
「はい、南先生。それは禁断の秘術で相手の精神を崩壊させ、何も考えられないようにすることです。」
更にノリの良いクガは、手を挙げて答えた。
「残念、不正解!」
「ええ~⁉」
クガは、不正解だったことに、頭を抱えて驚いた。
何で正解してると思ってたんだよ、教師が「禁断の秘術で相手の精神をぶっ壊します」なんていう訳ないだろ。
「正解は、酒で相手の思考回路をぶっ壊すことです。」
詩織は、頭を指差し、ニヤリと笑って言った。
禁断の秘術か酒かの問題だった!どうなっているんだ、この教師は。
「という訳で、酒場に行くわよ」
と、詩織は酒場の方角を指差した。俺達は、仕方なく詩織に言われるがまま酒場に向かった。
「ブタマンとにかくお酒を相手に飲ませて相手の思考を乱すのよ」
「分かったでごわす」
ブタマンは、そう言い残し、カウンターにいる女性の隣に座った。
「一杯どうでごわすか?」
ブタマンは勇気を振り絞り、女性に声をかけた。
「奢ってくれるなら良いわよ。」
「分かったでごわす」
おや?さっきの女性の時よりは調子が良さそうだな。
「テキーラ、ワイン、ウィスキー、それぞれ十本づつ頂戴。」
「あいよ!」
マスターは、注文を受け、女性の前に注文通り出した。
「あの、好きな男性のタイプとかってあるでごわすか?」
ブタマンは顔を真っ赤にし、モジモジしながら尋ねた。
「そうね……、百万ギラをくれる男性かな」
露骨なハニートラップだ!もうちょっと上手にやればブタマンを騙せただろうに、三流ハニートラッパーだな。
「百万ギラ渡します‼」
ブタマンは思い立った日が吉日とばかりに、大金の入った袋をポケットから取り出した。
払うのかよ!どうなったらあんな分かりやすいハニートラップに引っかかるんだよ、バカ。
「おい、ブタマン騙されるな!ハニートラップだ‼」
俺は、後ろからブタマンに声をかけたが、しかしブタマンの耳には届かなかった。
あのバカ……。……待てよ、あいつ金持ちだったのか、なら後から成功報酬として金を要求してやる。
「それじゃあね、ブタマン君。二度と私の目にその汚い顔出さないでね♡」
女性はそう言い残し、お金だけを持ってその場を後にした。
あの人、お酒飲まないのかよ!ただただお酒を使わせたかっただけなのか?ダメだ、ハニートラッパーの美学は分からん。
「やったわ、お酒ゲット!これは思わぬ収穫ね。」
詩織は、ブタマンのもとに残された大量の酒に走った。俺達はブタマンのもとに歩いた。
「どんまい、ブタマン。」
俺は、すすり泣くブタマンの肩を叩き、励ました。
「ブタマン、安心しろ。いざとなったらこの我が、サキュバスを召喚してやろう」
クガが中二病ポーズを取り、言った。
サキュバス⁉俺も召喚して欲しいが、しかし多分嘘なんだろうな。とは言えこの世界にサキュバスが存在することが分かった今、魔王が討伐されたことも、魔王軍幹部も、地獄行きも全てどうでもいい。サキュバスに会いたい。
「うぅ……、きっと、おいどんに恋は早かったのでごわすよ。」
ブタマンは、大粒の涙をこぼしながら言った。
「話は聞かせてもろたで‼」
ハムスターがレベッカの胸ポケットからヒョコっと、顔を出して言った。
「え?ハムスターに人間の恋分からねぇだろ。発情しては交尾、発情しては交尾、これの繰り返しだろ?」
俺は、心の底からバカにして言った。
「はっ!童貞君が交尾とかよく言えたもんやで!」
ハムスターは、鼻で笑って言った。
「ぐっ……」
俺は、現実から耳を背けるべく耳を塞いだ。
俺は童貞じゃない、俺は童貞じゃない、俺は童貞じゃない。ふぅ……。あのハムスター覚えてろよ。
「それれ、はむすらーはろうするり?」
酔いで舌の回らなくなった詩織が、ハムスターに尋ねた。
「そんなもんは簡単や、まずはここを出るで。」
ハムスターに言われるがまま俺達は酒場を後にした。
やれやれ、一体どうする気だ?
「えぇか?良く考えて欲しいんやけど、もしこの世の中に激辛以外に無くなったら嫌でも激辛を食べるやろ?」
「……そうだな」
「それと同じや、ブタマン以外に男がおらんくなれば、女は皆ブタマンにまっしぐらやで。ブタマン、他の男をぶちのめせ!」
ハムスターは、胸を張って答えた。
と、とんでもない暴論だ!それを考え付いても実行する訳無いだろ。
「うおぉぉぉぉ!」
「あっぶねぇ!」
ブタマンの張り手をギリギリのところで躱した。
どうなってんだ、この野郎!助けてあげようとしている人間に向かって何てことしやがる!
「うぉぉぉぉ」
ブタマンは躱されても、躱されても、何度もでもこちらに攻撃の手を止めなかった。
「やめろ、ブタマン!」
「うるさいでごわす!あなたは、おいどんの敵でごわす!」
「テレポート」
俺は、ブタマンの機関銃のように連続的な攻撃をテレポートして躱し、詩織の背についてテレポートして詩織を壁にした。
「わっ!」
詩織はブタマンの一撃を躱した。
「グハッ!」
「ゴハッ!グヘッ!」
詩織の躱したブタマンの一撃が、俺の顔を捕えた。詩織は自分が攻撃されたんだと思い、膝蹴りし、『く』の字に曲がり下がったブタマンの顔を、天高く足を上げ蹴り上げた。
「ぐ、ぐふぅ……。」
ブタマンは痛みで膝が崩れた。
「ハァ、失敗やな。」
ハムスターは、大きなため息を吐いて言った。
「当たり前だろ、バカ!こんな作戦成功する訳無いだろ!」
俺は、ハムスターの顔に指を突き当て言った。
クソ!このバカハムスターのせいで危うく、強烈な痛みを味合わせられるところだった。
「そんな文句言うんやったら、屑の作戦を言うてみぃや。」
俺の指を払いのけ、ハムスターは言った。
「いいぜ、お前らバカ共とは一線を画すこの俺の作戦を言ってやろう。」
俺は胸に手を当て、自信満々に答えた。
「屑さん自信満々ですね。流石です。」
蒼色の眩しくまっすぐな目線が俺の目と向かい合った。
「ふふふ、それは一人の相手を徹底的に調べ上げ、弱みを握ることだ!」
「クズやん」
「クズでごわす」
「屑さん最低ですよ。」
俺の素晴らしい作戦は猛反対を受けた。
「何故だ?恋愛なんて弱みを握れば一発だろ?」
「童貞じゃん」
「グハッ!」
詩織の強烈な一言は、俺の心を打ち砕いた。
散々だ!
「だったらもういいよ!適当にナンパでもして来いよ‼」
ヤケクソになった俺は、感情に任せて言った、
「分かったでごわす」
俺の怒りに気が付かなかったブタマンは、言葉通りナンパしに行った。
「おいどんと付き合ってください」
頭を下げて手を女性に手を伸ばした。
「へぇ、君頑丈そうだね、ちょうどいい。スキルの被験体になってくれるのならば良いよ」
女性はニヤリと笑って言った。服装は白衣とスカートを身に纏っているその女性の外見は、紫色の髪、紫色の目、詩織と同じくらいの百六十センチ程度の身長に、詩織と同じ断崖絶壁の胸だ。透き通るような肌はとてもきれいだ。
何を言ってるんだ?被験体?危ないやつじゃないのか?
「被験体でごわすか?」
ブタマンは不審に思い、首を傾げて問い返した。
「あぁ、そうだよ。被験体だ。どうだい?私と付き合いたいのだろう?実験期間中は付き合ってあげる、どうする?」
女性は煌びやかで、ミステリアスな笑みを浮かべた。辺りに不穏な空気感が漂っている。
この女明らかにやばい。このままだとブタマンがとんでもないことになる!
「おい待て、ブタマン止めとけ。その女はどこか危ない。」
女性の危険な香りに気づき、ブタマンを止めた。
「これは、これは、初対面の人を危ないと言うのは失礼だと思わないのかい?」
その女性は余裕の笑みを浮かべて尋ねてきた。
「思わねぇよ!というかせめて何の実験なのか、具体的に言えよ。」
「ふふふ、良いだろう。私と同じ苦悩を抱える人間もいるようだしね。そう私の考えている実験とは……、巨乳になるスキルの発明実験さ」
は?
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