26話 裏切り者 恋のお手伝い(2)
ブタマンの恋のお手伝い、それは答えのない問題を考えるようなもの。
俺は東条屑。喋るハムスターを持ち主に返すべくカガクの国に来たのだが、クガの勝手な約束のせいでニメートルはあろう巨漢ブタマンの恋のお手伝いをさせられている。
朝方、石造りの中世感漂う宿の前で、俺達は会話している。
「とりあえず、うちの詩織、レベッカはお前との恋愛は無理そうだから他の人で探すか」
俺は詩織とレベッカを指差し、状況を整理して述べた。
はぁー、正直言えば純粋なレベッカなら簡単にいけそうだと思ったが、しかしブタマンの行動で完全に嫌われただろうから無理なんだよな。
「そんな……。」
ブタマンは悲しそうな表情でこちらを眺めてきた。
『そんな』じゃねぇよ!お前が倒したら惚れてくれると思って二人に殴りかかったからだろ。
「はぁー、他に作戦がある人?」
「俺だ‼」
俺の呼びかけに、自信満々なクガが答えた。
「他に作戦がある人~?」
「無視するな!」
クガを無視して再び呼びかけたが、またクガが答えた。
「分かった、説明してくれ。」
と、俺はクガを手で指した。
「フッフッフ!この我のオペレーション(作戦)は、運命に従いこの場に召喚されたフィメール、その者を生贄を頂く儀式に招待することだ(通りすがりの女性に食事に誘う)」
クガは、自らの肩から指先にかけてジュルリと音を立てて舐め、ニヤリと答えた。たまにはクガもいいこと言うんだなと、俺は感心した。
面倒くさい言い方だがまともな作戦だ。哲也さんの言っていた相手を殴り倒す作戦よりはとてもいい作戦だ。
「分かったでごわす!行ってくるでごわす。」
ブタマンはそう言い残し、近くの女性のもとに向かった。
「今暇でごわすか?」
「は?退屈だけど?」
ブタマンの問いかけに、女性はしかめっ面で答えた。
あれ?もう不機嫌そうじゃないか……?不安だ。
「暇ならおいどんとお食事でもどうでごわすか?」
「暇って言ったこと聞こえなかった?あんたの退屈な話がつまらなくて暇だって言ってるのよ!」
女性は不機嫌そうに答えた。
「うぅ……、すいませんでごわした。」
ブタマンは女性に恐怖し、こちらに戻ってきた。
いくらブタマンでもあれは可愛そうだ……。ブタマン、強く生きろよ。
「あの今、お腹空いてるでごわすか?」
ブタマンはさっきのことで諦めず、別の女性に話しかけた。
「う?あたち今お腹ペコペコー」
と、女性はお腹を擦り答えた。俺は女性を見て驚愕した。
明らかに小学生だ!あのバカ、女性だったら誰でもいいって言っていたが、見た目に関わらず年齢もなのかよ!それにこのままだとブタマンが捕まってしまう。
「お腹空いてるならおいどんの家に来るでごわすよ」
ブタマンは子供と手を繋ごうと、手を伸ばした。
誘拐だ!どうにかして止めないと……。
詩織は、ブタマンに向かって一直線に走り出した。
「ねえ、お嬢ちゃん。おいどんの家でデートしグハッ!」
「気持ち悪い!」
詩織は、誘拐しようとしているブタマンの後頭部を手刀で打ち、気絶させた。意識を失ったブタマンはその場に崩れ落ちた。
「ちょっと屑、このままやってもバカマンに恋人は一生できないわよ、どうするの?」
詩織は俺に耳打ちで伝えた。
どうするのって、ちょっとは自分で考えて欲しいものだ。
無責任な詩織の態度に呆れた俺は、大きくため息を吐いた。
「ブタマンって言え、ブタマンと。バカマンなんて言ったら面倒くさいことになりそ……あー!お前どこ行ってやがったー‼」
俺の二つの目に映ったのは、この国に来るときにはぐれた喋るハムスターだった。
あの野郎今までどこに行ってやがった。
「お前らほんまにどこ行ってたんや⁉どつき回すで‼」
俺の声に気づいたハムスターは、開口一番に怒鳴り、こちらに走ってきた。
「それはこっちのセリフだ‼」
「そうよ、こっちが命懸けで頑張っていた間、あんたはどこで何してたのよ⁉」
俺と詩織は、ハムスターを指差し罵声を浴びせた。
「そんなもん、知らへんわ!」
「何だと⁉この裏切り者が!」
「そうよ、この裏切り者!……え?裏切り者?」
詩織は勢いに任せて言ったものの、内容に気づき首を傾げて俺に尋ねた。
「そうだ、あいつは裏切り者だ。イートがあいつに言ったこと覚えているか?」
「覚えてないけど……。」
「イートは、何故邪魔をするって言ったんだ。これはイートとハムスターが、仲間じゃないとおかしいだろ?」
「確かに!」
「誰が裏切り者や⁉裏切り者はそっちやで」
ハムスターは立ち止り、こちらを力強く指差した。
こいつ、まだシラを切る気か!
「じゃあ何でイートが邪魔するって言ったんだよ」
「そんなの知らんわ!イートって誰や⁉」
ハムスターは、しかめっ面で何言っているんだ?と顔に浮かべて問い返してきた。
イートが誰だ?は、無理だろ、あの時一緒にいたのだから。嘘つくなら整合性をもう少し考慮しろよ。
「イートは、お前の仲間の魔王軍幹部だろ、バカ!」
「だから知らへんわ!一回で理解せぇ!」
「ハムちゃん、あなたは本当に裏切り者なんですか?」
レベッカは、悲しい顔でハムスターに質問した。
「違うねん。わいは、ほんまに何も知らんねん。」
こいつは、どこまでも嘘をつく気だな。こうなったらテレパシーで心を読んでやる。そうすれば一発だ。テレパシー。
『なんでやねん、会うために必死に街中走り回ったっていうのに、何で裏切り者扱いされなあかんねん。マジでイートって誰やねん。』
ん?こいつ本当にイートを知らないのか?
「おい、イートの前に俺達を襲って来た魔物は何だ?これが答えられたら信じてやるよ」
「え?……何も襲ってきてへんやろ!答えられへん質問してくんな」
イートの前に盗賊ワシが襲ってきていたのだが……、そうか、こいつは本当に覚えてないんだな。ハムスターの記憶力というものを考慮してなかった。だったらさっきの俺達が裏切り者ってどういうことだ?
「じゃあ、俺達が裏切り者ってどういうことだ?」
「それは、お前らがこの国に来る道中、わいを道端に置いて行ったからや!わいはこの数日間、レベッカの匂いを頼りに、走り続けてたんや!ここを徹底的に謝ってもらうで」
「あ……」
そういえばそうだったー。完全にこいつを置いてきぼりにしたこと忘れていた。……でも、こいつには謝りたくない。そうだ!
「詩織やばいぞ」
俺は詩織に耳打ちして、話を始めた。
「どうしたの?」
「今回はどうも俺達が悪い感じだ、でも謝りたくない。俺は一度適当にはぐらかす。詩織も謝らない方法を考えといてくれ」
「分かったわ」
「いやー、お前が裏切り者だと思ってたから置いて行ったが、しかし裏切り者じゃないのなら良かった。また一緒に冒険しよう」
俺は、ハムスターに手を伸ばした。
「は?そんなんで許せるかい、ボケ!頭下げろや!」
ハムスターの小さな指は地面を指差した。
「面倒くさい、どっか行きなさい!」
「なんでやぁぁぁぁぁl!」
痺れを切らした詩織は、内野手の様にハムスターを掴み、投げ飛ばした。
「屑、これでばっちりね」
詩織は振り返って俺にグッドサインを送った。
このバカ!謝らなくてもいい方法とは言ったが、これはやりすぎだ。ハムスターが戻ってきたときは、きっとカンカンに憤慨してるに決まってる。
はぁー、こいつと共同作業にしたのが間違いだった。ブタマンの恋愛も始まりそうにないし、どうしたものかな?
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