第18話 人間様に勝てる訳無いのに、このバカがよぉ!
借金を返済した屑達。カジノでレベッカは金を騙し取ってきた男が喋るハムスターを受け取った。喋るハムスターに翻弄される屑達カス三人。一体どうなるのか。
俺は東条屑。ついにダンジョン破壊の賠償金四十億ギラをカジノでオーナーとのポーカーにイカサマで勝利し稼ぐことに成功。しかし、オーナーは払えないと必死にこちらに泣きついてきた。そこに暴力審問官ニーナさんが現れた。
「オラァ‼どこだ‼借金払う奴はよぉ‼」
カジノに現れたニーナさんは既に憤慨している。
怖い、何がこの人をいつも怒らせているのだろうか……。
「ニーナさん、あそこにいるおじさんが四十億ギラを支払います。」
と、俺はオーナーをビシッと指差した。
くくく、ざまあみろ、さんざん人を煽るからこうなるのだ。
「待ってくださいません?私四十億ギラなんて払えませんわ。」
と、オーナーは怒れるニーナさんの右足にしがみつき頼み込んだが、ニーナさんは怒りのままに右足
を振り上げた。ビタンッ‼と大きな音を立ててオーナーは天井に叩きつけられた。
「ガハッ‼」
ドスン‼と音を立ててオーナーは天井から落ちた。
「おいっ‼クソジジイ‼賠償金は払えんのかぁ⁉」
と、ニーナさんは横たわっているオーナーの髪の毛を掴み上に引っ張りあげた。
今のニーナさんは俺達に待たされてブチギレているのが一目で分かるほどに殺気立っている。
「払……えませ……んわ。私そ……のような……大金持っ……てなくって……よ」
「持ってないなら、働け‼毎月の給料全て寄越せ‼」
「それで……は……死ん……でしま……いますわ。」
オーナーは最後のチラを振り絞り、薄れゆく意識の中で答えた。
この人もタフだな……。
「ならば……‼、死ねっ‼」
ニーナさんはオーナーに馬乗りになり一心不乱に殴った。まさに狂気だ。
こんな場所にいたらニーナさんの共犯だと思われそうだ、早いところここから立ち去ろう……。
「という訳で僕達借金完済したということで帰りますね。」
俺達は一言ことわり、その場を離れ始めた。
「好きにしろ、今は取り立てで忙しいから話しかけてくるな」
ニーナさんは楽しそうにオーナーを殴り続けた。何がこの人をここまで駆り立てるのだろうか?
あの人は審問官よりヤクザや借金取りのほうが向いてるんじゃないのか……?
とはいえ遂にバカみたいな金額の借金が無くなった。これからは自由だ。
「これで借金は無くなったな、屑」
「今日は飲んで飲んで飲みまくるわよ‼」
「ダメだ、借金が無くなっただけで金は無いんだぞ」
全くこいつは何を考えているんだ。そもそも酒はカジノで浴びるほど飲んでいただろ。依存症って怖
いな……。
そんなことを考えながらに十分ほど歩いていると屋敷に着いた。
「ただいまー」
「ダズ帰ったわよー、お酒とおつまみ用意してー」
こいつ……、さっきダメだと言ったばかりなのにこいつは人の話も聞けないのか。
「だから、金が無いんだから節約しろ、バカ!」
と、俺は詩織の額をチョップした。詩織は痛そうに両手で額を覆った。
「おー、お前らお帰り。どうだった借金はどれくらい減ったんだ?」
エプロン姿のダズが玄関にまで出迎えに来てくれた。
「完済したよ」
「完済⁉」
ダズはポカーンと口を開け固まった。
それもそうか普通一日ギャンブルした程度で四十億ギラなんて稼げないもんな。
固まったダズを横目に俺は靴を脱いで屋敷に上がった。
「あれ?レベッカちゃんは?」
詩織がキョロキョロして言った。
確かにいつの間にかいなくなってたな。どこ行ったんだろうか?
「あははは、面白いです。」
外からレベッカの話声がした。
なんだ、友達と出会って話してたから遅かったのか。
あまりにも世間知らずだからてっきりボッチなのかと思ってた。
「ただいま帰りましたー」
「あー、お帰りー……?一人?」
俺は困惑しながら質問した。
「はい一人ですけど」
まじかぁ、この子いよいよボッチ極めて一人で会話を成立させて笑ってたのか……。
今度俺達みたいな卑怯な考え方じゃなくて友達の作り方を教えてあげよう、可哀そうで見てられない。
俺は涙を流し憐みの眼差しをレベッカに向けた。
「ちょっと何故泣くのですか?」
と、レベッカはあたふたしながら俺に質問した。
「だってさっき一人で話してたんだろ?友達いないから……」
「ちが……。」
「もしかしたらと思ってたら本当だったのか」
と、和も涙を流し憐みの感情を向けた。
「だから……。」
「レベッカちゃん大丈夫強がらなくて大丈夫よ、詩織お姉ちゃんがお姉ちゃん兼婚約者兼無二の親友に
なってあげるわ」
「だから違いますよ。私はこのハムちゃんと話していたのです。」
レベッカは掌にちょこんと乗ったハムスターを見せてくれた。
もっと可哀そうになった。話し相手がいないからハムスターだなんて……。
俺は別に動物に話しかける人を馬鹿にしているわけではない。動物に話しかける人が一定数いるのは
俺も知っているし、それは感情豊か道徳的でとてもいいと思う。しかし、今俺が憐れんでいるのは十七歳にもなってボッチで話し相手がいないから、動物と友達のように話しかけるレベッカだ。
酷なことだが現実を教えてあげよう。
「ハムスターは喋れないから喋りたいなら人間の友達作ろうか」
と、肩をポンポンと叩いた。
「違いますよ、友達いないからハムスターに話しかけていた訳ではありません。このハムちゃんは喋れるのです。」
「可哀そうに……、ボッチ極めると幻聴が聞こえるようになるのか……。」
和はあまりに可愛そうなレベッカと目を合わせることさえ避けていた。
「レベッカちゃん話したいならもっと話しかけてくれてもいいのよ、別に毎晩の夜通しの会話詩織お姉ちゃん嬉しいからね。」
詩織は手を胸に当てて言った。
「わーー‼」
レベッカは詩織の言ったことを大声で誤魔化そうとした。
話し相手居ないからってセクハラしてくる相手と毎晩夜通し話してた……、取り返しがつかなくなる前にもっと話しかけてあげよう。
「さっきから君らなんやねん、レベッカの話も聞かずに一方的に憶測で話進めて、ほんま何考えとん
の?」
聞き慣れない声はレベッカの掌の上からした。
「今……喋ってた?」
俺はハムスターが喋るなどという非現実的なことに驚きが隠せなかった。
魔法がある世界で俺基準の現実的という価値観はおかしいがダズも驚いてるのでこの世界でもおかしなことらしい。
「どう考えても喋ってたやろ、ワレの顔に着いとる耳は飾りなんかボケ‼それともそのちっこい頭じゃ理解できへんか?」
なんだこいつ?随分と生意気だな……。
「フン‼」
「なぁぁぁふざけんなボケェェェ‼」
俺はハムスターを掴み扉を開けて外に全力で投げ飛ばした。ハムスターは凄い勢いで飛んでいきすぐに見えなくなった。
「達者でな!」
俺は戻ってくるなと言わんばかりに、バタン!と力強く扉を閉めた。
ははは馬鹿め‼人間様に勝てる訳無いのに調子に乗るからこうなるんだよ‼
「ああー‼屑さん何するのですか?」
レベッカはあたふたしながら責めてきた。
「いやー、ついムカついたから。」
「あんな弱い子に信じられません‼」
レベッカは屋敷の外には走って出た。
ふー、ひとまずゆっくりするか……。
俺はリビングのソファに横になった。
三十分後。
「ただいま帰りましたー。」
レベッカが屋敷に帰ってきた。
まさかあのクソハムスターもう見つけたのか?
「おいワレェ‼さっきはよくもやってくれたの‼あともう少しで名前通り星になるところやったやんけ‼」
ハムスターは戻って早々ガチギレしているようだ。
一体何をそんなに怒っているのか脳の小さなハムスターの考えることは分からないな。
「では私はハムちゃんのご飯を買ってくるのでハムちゃんにひどいことしないで下さいよ。」
レベッカは忙しそうに屋敷を出て行った。
流石の俺も二度もあんなことはしない、レベッカの中で俺は一体どんな人間なのか問いたださねば……。
「ハァー、全くやで急に投げられてびっくりしたわ。」
不貞腐れたようにハムスターは言った。
こいつ相変わらず口の減らないハムスターだな。
「おい、自分謝られへんのか?あっとすまへん、自分の耳は飾りやったな。ジェスチャーで教えたらな分からへんよな」
俺に向けられたハムスターの手はグッドサインを取り、そしてひっくり返した。
「飛んでけー!」
「またかよぉぉぉぉ!」
俺はハムスターを窓から天高く投げ飛ばした。
さきほど『流石の俺も二度もあんなことはしない』と思ってたが人間の考えは移り変わるものだ。
それにしてもあのハムスターは何なんだ?滅茶苦茶性格悪いな……。
そこから快適な時間が五分ほど続いた。
「屑さん何てことしてくれたのですか?」
レベッカはハムスターを連れて帰って来るや否や俺を問いただした。
全くあのハムスターは全て話したのだろうか?全て話していたなら俺がこれほどまで責められるのはおかしい……。
「これには訳があってだな、ハムスターが俺に死ねってやったんだよ」
「和さんそれは本当なのですか?」
「え?知らない。」
アホ面で首を振って答えた。
嘘だろ!?こいつ裏切りやがって。
「屑さん嘘つかないで下さいよ、もういいです。和さんこのハムちゃん預かってください。」
レベッカはハムスターを和に預け、再び屋敷の外に行った。
信じられない俺より和の方が信用してるなんて……、やはりレベッカを今度問いたださなければ。
「まさか同じ人間に二度も投げられるなんて思わへんかったで自分やってることほんまえげつないな
ぁ」
ハムスターは薄汚い笑みを浮かべて、懲りずに再び俺を煽ってきた。
もうこいつの口車に乗って投げる訳にはいかない。和より信用されてないのは嫌だ。
「チッ、無視かいおもんないな。」
「そう屑を煽るなよ」
「おお、兄ちゃん優しいな、とても変態とは思えへんで」
俺も言えた側ではないが和は確かに変態だ。しかし何故であったばかりのこのハムスターがそのことを知ってるんだ?
「何で知ってるんやって顔やな、兄ちゃん。ワイは鼻が利くねん。兄ちゃんの顔や手からプンプン匂うで~、レベッカとそこの嬢ちゃんの下着の匂いが。」
「黙れー‼」
「お前もかぁぁぁぁ!」
和は証拠隠滅のために屋敷の外にハムスターを投げ飛ばした。
この屋敷の中でそんなことしたらどうなるか分かってるのだろうか?詩織に聞かれてたら終わりだぞ……。
「和ぅ?今のどういうこと?」
詩織に聞かれていた、怒った詩織が何をするかそんなものは容易に想像できるのに、馬鹿な奴め。
「あっ……、あのハムスターがでたらめを言っただけだ。俺は何もしてない。」
和の震える唇は苦し紛れの嘘を言った。
「そう?まあ、あのハムスターが帰巣本能で戻ってきたらちゃんと話しましょうか?」
おや?普段の詩織ならあのハムスターの発言が事実か事実ではないかに関わらず殴っているところな
のにどういう風の吹き回しだ?
数分の間、居間に緊張感が走った。
「和さん!和さんまで酷いことしましたね?」
レベッカが再びハムスター掌に乗せて帰ってきた。
くくく、これから楽しそうなものが見れるな……、さっき俺を裏切ったことを公開させてやる。
「ちがっ……、そいつが口から出まかせを言うから。」
「何言うとんや、お前の手や顔からべっとり染みついたレベッカとそこの嬢ちゃんの下着の匂いがしてんねん。和昨日今日の間にちょっと触ったとかじゃないやろ、毎日被ったり、噛んだりやってるやろ。」
「屑さんそれは本当なのですか?」
俺は和とは違って正直者なのだ、嘘などつかない。
「ああ、やってた。俺がやめろと注意した時は俺を殴ってきてそれで、それで怖くて言えなかったんだ。」
「和さん最低ですよ。私のだけでなく幼馴染の詩織さんのまでこの変態!」
レベッカは顔を赤くて言った。
「と、言う訳らしいけど言いたいことはある?」
詩織は殺気を纏い、一歩一歩和に歩み寄る。静かな居間に、ギシ……ギシ……と床の軋む音が駆け巡った。
「違うんだ待グハッ」
詩織は和の話を最後まで聞くことなく殴った。和の体は後ろの壁まで吹き飛び大きな音を立ててぶつかった。
「あんたの指を織り込んでマフラーを作ってあげるわ。プラスステータス」
詩織は自分自身に全能力上昇のバフ魔法を掛けた。
「あ……あぁ……。」
和は口を恐怖で言葉を失い全身をガクガクと震わせて後退りしようとした、しかし既に背が壁についていてこれ以上後ろに下がれなかった。
「グハッ」
詩織は僅か二秒間に数十発殴り、和の体が波打った。
今詩織の拳が早すぎて残像が残ってたんだけど、やはり詩織にだけは喧嘩売らないようにしよう。
「ゴフッ‼」
和は体全体から小川のように流血している。
え?人間ってあんなに失血してもいいもの何だっけ?こんなので人殺しになるのは嫌なんだけど?
「レベッカちゃんあんなの信用しちゃだめよ、私を一番に信用するといいわ。」
こいつまさか……、さっき自分ではなく和にハムスターを預けたから信用されたいがために、その場は見逃してレベッカが帰ってくるのを待ってたのか。
「全くしゃあないな、これ使え」
ハムスターは頬袋からピーナッツ程度の大きさの小瓶を出した。
うっわ、汚ねぇ……。
「それはなんだ?」
「え?屑さん超回復薬を知らないのですか?」
「超回復薬?」
「どれだけ重症の人間でもたった一瓶分掛けるだけで元気になるという高級な回復薬ですよ。」
ほぅ……、ということは回復魔法の使える僧侶がいないこのパーティーでも回復できるのか。
レベッカは小瓶の蓋を開け和に超回復薬を掛けようとした。
「待って」
「え?どうしてですか?」
詩織の一言で、レベッカはすんでのところで止まった。
詩織の奴一体どうしたんだ?
「そんな高級品なら変態に使うのは勿体ないわ」
そういうことか!
「その通りだ。その変態には自然治癒で頑張ってもらおう。」
「何言うてんねん、仲間のピンチなんやで?」
「そうですよ。」
レベッカは、俺達の制止を無視して超回復薬を和に掛けた。
「ああー!勿体無い。」
俺と詩織は同時にその言葉を口にした。
「んな⁉本気で言っとたんかい……。」
ハムスターは俺達の発言にドン引きだ。
「これで一安心ですね。」
「安心したなら私が胸を撫でおろしてあげる」
気持ち悪い発言とともに、詩織はレベッカに近寄った。
「ほんまにこの家の人間はどうなっとんねん、この家で一番やばいのはそこの変態兄ちゃんかと思ったら、お前が一番やばいやんけ」
おいおい嘘だろ、和が瀕死になったのを見てあのハムスターも詩織に喧嘩を売るのかよ……。
「どういうこと?」
詩織は紅く、そして鋭い眼差しでハムスターを睨みつけ、普段より低い声で言った。
「仲間を瀕死にしたあげく助けへん、嫌がるレベッカにセクハラ、借金がある中十五億の飲酒、お前ほ
んま最低やな。」
「そぉーれ!」
「なんでやぁぁぁ!」
詩織はハムスターを窓から投げた。
『なんでやぁぁぁ!』って分かってだろ。
「ああー!詩織さんまで!」
レベッカは走ってハムスターを探しに行った。
数分後レベッカはハムスターを肩に乗せ帰ってきた。
「レベッカ話し合ったんだがそのハムスター元の飼い主に返そう」
このハムスターが口を開いたとき、さっきみたいに和の秘密をばらすだけなら問題ないが俺の秘密までばらされるわけにはいかない。
「そうですか……、分かりました。」
「ちょい待ち、ワイにはちゃんとした名前があるんやハムスター、ハムスター言うのはやめや」
「どんな名前なんだ?」
ハムスターの名前どうせ‟おもち„とか‟だいふく„だろ。
「ワイの名前は‟ああああ„や」
「あははははwww小学生がゲームでどうでもいいキャラに付ける名前じゃんwww」
「本当よ、それよく人のこと馬鹿に出来たわねwww」
「なっ⁉ワイだって薄々適当につけられたことは分かってんねん。」
待てよ……、でもそういう名前を付けるってことはこいつの元の飼い主は日本人?
「おいああああお前どこから来たんだ?」
「ワイか?ワイは闇魔法でお馴染みのカガクの国からや。」
カガク?化学か?ついに俺達と同じ転生者に会えるのか。長かったモテると思って魔王討伐の異世界
転生したのに魔王討伐されてたという同じ悲しみを背負うものと出会える。
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