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第12話 真の理解者

突如としての四十億ギラの借金を負った屑パーティー。しかし屑が返済方法を思いつく。そこに突如として現れたクガ⁉

「あのもう帰っていただいて結構です。」

 俺達への措置を伝えてすぐ、ニーナさんは審問所の出口を腕差し、霞むような小さな声で言った。

 しかし、俺は四十億という借金を背負う羽目になり、頭の中がぐちゃぐちゃですぐに歩き出せなかった。

「おいー俺と屑は散々殴られたおかげでー、ダメージが溜って歩くの辛いんだけどー⁉どうするのー⁉君の上司に言っちゃうよ?」

 何故か上機嫌になっている和がニーナさんの前に顔を出して煽った。一瞬だが確かに眉を顰めたことに気が付いた。和、ニーナさんに喧嘩売っちまった…夜道には気をつけろよ。

「分かりました。転送魔法にてお屋敷に転送させていただきます。」

 ニーナさんは笑みを浮かべて対応してくれた。だが溢れる怒りを堪えきれないようで、眉がプルプルと、震えている。

「ではアポート」

 その言葉に合わせ、俺たち足元には魔法陣が浮かび上がった、次の瞬間には俺たちは眩い光に包まれ光が消えるとそこに俺たち姿はなかった。

 眩い光が消え、目を開くと屋敷が見えた。どうやら俺達は屋敷の前に転送されたようだ。

 帰ってきた、そう思うと一気に疲れが押し寄せてきてガクンと項垂れた。

「それじゃあ帰るか」

「ああ」

 和の返事で俺達はとぼとぼと屋敷の中に入った。

「差し押さえに来るのかな……」

 和が静かに呟いた。

「差し押さえ⁉冗談じゃないわよ!せっかく手に入れた念願のマイホームなのよ!絶対に手放さないわよ!」

 まだ確定した訳でも無いというのに、詩織は声を荒げて言った。

 四十億の借金を返せる訳無いんだから、少しで回収しようと差し押さえしに来るに決まってんだろ、バカ。

「家は大丈夫だ。権利書は俺が持ってるが権利者登録をしてないから形式だけならこの家はダズの所有物のままだ。」

 そう俺はこの問題児二人と一緒に冒険をする以上所持品の持ち主はダズにしておいたのだ。後、本当に家を奪うのは可哀そうだと思ったから、権利書をダズが所持したままで、あくまでも家主に家事をさせる居候という立場を選んだのだ。

「良かった…でも屑、俺達はどうやって四十億ギラも返済するんだ?まさか冒険者業でちまちま稼ぐのか?」

「さすがに違うな」

 和の問いにドヤ顔で答えた。俺は屋敷についてすぐ、借金の返済方法を考えていた。その末、たった一つだけ作戦を思い出した。

 だが、この作戦は危険だ……。

「まず俺達の借金四十億ギラ。これはダンジョンの歴史的価値と推定財宝額の合計がその額何だと思う。だからまず、ダンジョンに行って財宝を回収する。そうすればだいぶ返済できる」

「それでも残りの借金返せる訳ないでしょ?屑残りはどうするのよ」

 何故こいつらは全部俺に聞くばかりで自分で考えないのだろう?と、思ったものの言うだけ無駄だと思ったのでやめた。

 残りの借金も絶対億越えだ。はぁー自己破産とかできないのかな……。

 悲しい悲壮感に苛まれて俯いた。既にこの場の空気は重たくお通夜も同然だった。

「そんなことより俺達打ち首となるんじゃないか?だってダンジョン壊すって歴史遺産壊すようなものだろ?なあ俺達また死ぬのかな?今度こそ地獄行き?」

 和が両手で自身の頭を掴み、上下に振り回した。

「言うなよ!考えないようにしてたんだから!うわー、俺も死にたくねえ!」

 俺も苦悩に苛まれ、頭を抱えて上下に振り回した。

 俺だって気が付いていた。気が付いたうえで考えないようにしていたのだ。言わないようにしていた。俺自身のために、そして……

「え⁉死ぬの⁉私も打ち首⁉壊す決断したのは屑なのに⁉」

 詩織は目を丸くして驚き、自身を指差していた。

 全ての罪を俺に擦り付ける存在がいるから言わないようにしていたのだ。

「ふざけんじゃねえ!俺が壊さなきゃ今ここに俺達はいないだろ!」

 詩織を強く指差して批判した。信じられん。こいつ俺を殺したことあるくせに俺が助けてやったから今生きてるのに、ちょっと自分に被害が出たらこの態度か!

「あのー皆さんが打ち首になることは無いと思いますよ。ニーナさんが言ってたじゃないですか処遇は賠償金のみと。」

 レベッカが静かに呟いたその一言に、俺達は深く安堵してホッ…と、息を吐いた。

 そうだったのか、正直言って四十億ギラの賠償金って聞いてからは話が入ってこなかったから知らなかった。

「それより賠償金をどうやって支払うのですか?」

「ああ、ダンジョンに戻って財宝を持ち帰る。それをカジノで数倍以上にする。」

「ギャンブルなら任せろ!」

 和がグッドサインと共に食い気味に言った。流石はギャンカスだ、食いつきが早い。だが実際和便りの作戦だ。

「そして詩織、お前はカジノで働いて良い感じのギャンブル見つけて来い」

「分かったわ」

 詩織もグッドサインと共に返事をした。

 詩織をカジノで働かせるのには理由がある。一つはダンジョンに連れて行っても何の役にも立たないから、これだけなら和、レベッカ、俺も当てはまる。では何故詩織なのか?それは詩織が一番顔が良いからだ。

 異世界のカジノだ、ディーラーかバニーしかいないだろう。そして腕前が必要なディーラーとして俺達が雇われる訳が無い。となればバニーだけ、となる訳だが、男の俺と和は論外、で残りの詩織とレベッカ、未成年のレベッカをそんな役職で働かせる訳にはいかない。それに詩織なら問題が起こっても腕っぷしで解決できる。だから詩織を選んだのだ。

「じゃあ俺達はダンジョンに行ってくるから」

 善は急げと言わんばかりに、俺達は足早に屋敷を後にした。詩織が玄関までレベッカの見送りで手を振っていた。

 屋敷を出て、十分ほど歩くと俺達の前に一人の男が待ち構えていた。

 男は壁に寄りかかっていた。その男の顔を見て俺は、正直面倒くさいと思った。

「ふふふ、これも運命の導きさあ行動を共にしよう。」

 男とはクガだった。クガは腰と額に手を被せるお馴染みの中二病ポーズで声高々に言った。

 面倒くさいとは思ったものの、別に俺はクガのことが嫌いではない。ただ借金四十億を抱えた状態で、ハイテンションの人間との交流はどこか面倒くさく感じてしまう。

「何で風が吹いてないのに、腕に巻いてる包帯がヒラヒラしてるんだ?」

「これは俺の魔法で靡かせているのだ。無風の時でもかっこよくするために」

 俺の問いに、クガは一度鼻で笑って答えた。

 しょうもない魔法の使い方をしてるんだなと、俺は呆れて溜息を吐いた。

「それより俺達これから用事だから」

 片手で謝り、クガの前を通り過ぎた。

 何とかなった。これでお宝は全部俺たちのものだ。安心はつかの間のものだった。

「それならこの我が手を貸してやろう。」

 クガは壁を足裏で強く蹴り、俺達の前に躍り出て言った。

 用事だつってんだろ、どっか行け!そう言おうとした時だった。

 俺たちの前にドカドカと、歩いて来る女性に目を奪われた。ニーナさんだ。

「おい!貴様ら賠償金についてだが、審問所が金を貸していることになっている。金利は年五十%だ!死ぬまで働いて……グ!」

「男女平等パーンチ!」

 俺の拳はニーナさんの会話を遮り、左頬に命中した。

 前回の恨み、和は煽って返していたが、俺は怒りを溜めるだけとなっていた。

「おいお前、よくも理不尽な暴力をしてくれたなァ!お前自分が女だからって男の俺にやり返されないと思ってたのか、残念だったな、俺は真の多様性理解者だ‼女、子供、女児、男児、、お年寄り、俺にそんなものは関係ない、全て等しく人間だ!」

 そう俺は真の多様性理解者だ。女だからと殴らないのは差別だ。俺は男にも女にも平等に復讐する!

「その通りだ、屑!」

 そうして俺と和はその場に立ち尽くすニーナさんに殴りかかった。

「な、何というクズっぷりだ、これが多様性社会が生み出した化け物か」

 クガは目を細めて強張った表情で、俺達の復讐を眺めていた。そしてレベッカは俺達の発言に頭が追い付かず、目をグルグルと回しフラフラと立ち尽くしていた。

「あ……れ?」

 俺の顔は徐々に絶望に染まっていった。

 俺は何を殴っているんだ?目の前のニーナさんを殴っているはずなのに、ニーナさんの体はピクリとも動かない。まるで何もされていないかのように。

 そしていよいよ、俺達の拳が無意味であることを察して、拳を降ろした。

「……終わりか?なら、貴様らは公務執行妨害で逮捕だ!」

 ニーナさんは自身の肩に手をのせて、首をゴキン!と、鳴らした。

「いや、まだだ」

 俺は再び殴りかかった。

 手を止めなければ、拳を降ろさなければ、その間ニーナさんは待ってくれると思ったからだ。

「おいやめろ、可哀そうだろ」

 クガが俺とニーナさんの間に割って入って言った。その言葉に俺は耳を疑った。

 こいつまともなこと言えたんだ。そうだ、こいつを利用しよう。即座に自分だけは助かる素晴らしいアイデアを閃いた。

「ああー⁉うるせえな!お前悪魔の生まれ変わりだったな。その悪魔のせいで今俺達は四十億ギラの借金負ってるんだぞ。」

 ニーナさんの怒りは今、俺達に向いている。その怒りの原因がクガにあると思わせる作戦だ。

「そうか、お前のせいでこいつらが借金を負い結果として、この私が面倒くさい事務作業に追われているのか‼」

 と、ニーナさんも地面に蹲るクガを蹴った。ニーナさんは随分と楽しそうに蹴っている。


 怒りの対象をクガに変えれてよかった。でもこの人やっぱり審問官向いて無いんじゃないか?


「ふー、すっきりした。ニーナさん連絡ありがとう先ほどは殴ってしまい申し訳ない」

 俺達はは一時間ほどクガを蹴り続けていたのだ。


「気にしないでくれではご機嫌用」

 と、ニーナさんは爽やかな笑顔で答えた。


「あの、クガさん元気ですか?大丈夫ですか?」

 レベッカは急いでクガに駆け寄って声をかけた。


 レベッカは優しいなあんなぼろ雑巾の心配するなんて。


「だ……だいぎょうぶだ……あどづごぎ」

 クガも相当弱っているな……。でもあと少しってなんだあと少しで死ぬってことか?ならあれを伝えなければ……。


「クガ、あの世で女神と会ったら、魔王いないのに転生させてんじゃねえよ、クソ無能がお前が地獄に落ちろ、と伝えてくれ。」


「それは自らの口で伝えるのだな。俺は老衰か病気でしか死なない。俺のユニークスキル、ノットデッドとこの前のダンジョンで手に入れたパーフェクトヒール、この二つのスキルでフェニックス(不死身)と化した」

 と、クガは起き上がって言った。


 ものすごいことなのだろうけどこいつの攻撃能力が低いから、きっとさっきみたいにサンドバックになるだけなんだろうな。可哀想に。


「貴様らダンジョンに財宝回収に行くのだろう?さっきの借金の話で合点がいった。分け前は要らないから手伝わせろ。」

 クガは、俺たちに手を伸ばして言った。


 分け前無しで手伝うって、こいつはお人好しなんだな。さっきまで俺達に蹴られてたのにもしかして痛みで喜ぶ困った人なのか?迷惑だ帰って欲しい。折角トラブルメーカーを置いてきたのになんで増えるんだよ……、憂鬱だ。


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