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人々から頼りにされていた教師の男

 次の生で女神によって背が高く生まれ変わらせてもらった夫が森にやってきたのは、前よりも10年も遅い、28の歳でした。


 汗だくで息を切らしてやってきた彼は森の中にある泉で水を飲んでいる動物達と一緒にいた女神を探し見つけると即座に謝罪してきました。


 夫は長年自分が抱えていた劣等感が半分解消されて心に余裕が出来たことで、今生では周囲の人々と関わることに戸惑いがなくなったのだと言いました。


 そして人々の困りごとを二度の転生で得た知識を使って助けてやろうという気持ちになったので教師となって皆に頼りにされたのだと言葉を続けました。


 本当は前世と同じ18の歳で森に来るつもりだったのに、その後も随分と頼られて引き止められてしまったせいで、森に来るのが遅くなって済まないと言い訳しました。


 女神は夫の言葉が真実だと知っていました。何故なら既に生まれ変わって前世の記憶を思い出しているはずなのに一向に森に来ない夫を心配して、彼の安否を泉で確認していたからです。


 彼女は森の中にあった泉を司るために神の世界から降り立った女神だったので、外の世界の様子を泉の水面に映して見ることが出来たのです。


 女神は夫自身が彼女と夫婦になることを望んでいたからとはいえ、前回彼が生まれ変わったときに18の歳の若さで生まれ育った土地や家族に別れを告げたという事実に密かに心を痛めていたのもあって、夫を責めたりはしませんでした。


「随分遅くなってしまって本当に済まなかった!ああっ、三度目の人生で、ついに初めて君を抱きしめることが出来た!こうして君を抱きしめることがずっとずっと前からの夢だったんだ!しかも僕は君よりも背が高くなっているし!アハハ、僕の背が高くなったからか、君の体が前に比べて随分と小さくなったように感じるよ」


 夫は女神が彼の三度目の願いを叶える代償に自分の体をニ回り程縮ませてしまったとは気づかないまま、彼女を胸にかき抱きました。


 女神は一途に自分を愛する夫への愛情故に彼を許し、夫は前世で言った通り、今まで以上に妻を大事にして、この今生でもふたりは仲良く暮らしました。


 ……そして再び夫の生が終わろうとするとき、彼はまた今までとは違う願いを口にしました。


「今生はすごくすごく幸せな人生だった。……だけど、もう少しだけ欲を言うなら次の生では美しい顔に生まれ変わりたいなぁ」


「顔?どうしてですか?」


 どういうことかと首をかしげる妻に夫は、君は金髪碧眼で光り輝くように美しいけど、自分は誰からも好まれない醜い顔立ちをしているからだと説明しました。


「今まで僕には友達も恋人もいなかったんだ。今回三度目の人生で初めて友達は出来たけれど、やっぱり今生でも誰一人として僕に恋して好いてくれる女性はいなかった。勿論、僕には君がいるから例え、そんな女性がいたとしても付き合うつもりはないのだけど……。ただ僕は心も容姿も美しい女神の君に引け目を感じていて、君に嫌われるのが怖くて、僕らは本当の意味ではまだ夫婦ではないのだと真実を言い出せなかった。だから僕は君と本当の夫婦になるために美しくなりたいんだ」


 女神は夫の告白に衝撃を受けながら言いました。


「ええっ!?私達は本当の夫婦ではなかったの?……あなたが言いたいことが言えなかったと気付けなくてごめんなさい。私は三度目の人生も一途に私を愛してくれたあなたを愛しているから、あなたの容姿はそのままでいいのだけど、あなたが私と向き合う自信を持つために、それを願うのなら美しい顔に生まれ変われるようにしてあげてもいいわよ」


「ありがとう!これで僕は誰もが羨む美男だ!来世では必ず18の歳に君の元に戻って来るし、本当の夫婦になったら、もっともっと君を大事にするからね。ウジウジして言い出せなかったせいで三回も人生を無駄にしちゃったよ」


「え?他の人が羨む?今までの人生が無駄……?」


 女神は夫が最期に口にした言葉に強く戸惑いつつも、一途に自分を愛する夫が望むならと今回も自分の力を使わない選択は選びませんでした。



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