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「なろうラジオ大賞4」のための物語

夏祭りの金魚には、たぶん注意が必要だ

作者: ヤギマルケイト

「おまつりー」「おまつりだー」


 見分けのつかないチビたちを連れ、賑やかな境内を歩く。

 夏祭りってのも悪くない。


「きんぎょー」「きんぎょだー」

 金魚すくい、と書かれた屋台へ飛んでいく。


 金魚で大喜びできるなんて無邪気なもんだ、なんて水槽をのぞき込み……

 仰天した。


 とんでもないのがいた。

 1匹だけ。

 

 目は大きいのが1つ。

 ドリルみたいに長くねじれた角が1本。


 何だか判らない。

 けど断言できる。


 少なくとも、金魚じゃない。


「きんぎょとってー」「とってー」

 恐ろしいことを言う。


 捕れるのか?

 そもそも捕って大丈夫か?


「ねー」「ねー」

 同じ顔が迫る。


 どうしよう。


          ☆


 まさか捕れるとは。


「やったー」「きんぎょー」

 ビニールに入った謎生物を見ながら大喜びするチビたち。

 大丈夫なんだろうか、本当にこれ。



 翌朝。

 それは3倍近くに成長していた。


 大丈夫じゃない。



 3日後。

 怪生物は、大型犬ほどのサイズになっていた。


 水槽から浴槽へ移されたものの、すぐに不要となった。

 空を飛び始めたのだ。

 たまに火を吹く。


 絶対に金魚じゃない。


          ☆


 1週間が過ぎ──


 自動車ほどの巨大さと化したそれは、庭で飼うにも難しくなっていた。


 自然に還すべきだ。


 当然の結論だった。



 チビたちと山へと向かう。


 とは言えどこに放していいものやら。

 迷いながら時間ばかりが過ぎ、辺りが暗くなり始めた頃。

 そいつは、光を放ち始めた。


「ぴかぴか一」「ぴかぴかだ一」


 変化していく。

 さらに謎めいた巨大な何かへと。



『──ありがとう人間たち』


 ()()が穏やかに口を開いた。


 語り始める。

 自分は何者なのか。何故このような姿をしていたのか──


 だけど。

 まったく頭に入ってこなかった。

 情報量が多すぎる。


 要するに。

 こいつは何か神様的な代物で、何やら力を封じられていて、

 あのままだとあるいは大変なことに……みたいな話。


『──残念ながら行かねば』

 神様らしきものは言った。


 礼がしたいと言う。


「いぬー」「いぬがいいー」

 チビたちが即答する。


『さらばだ──』


 神様はゆったりと上昇していくと、大きく光を放ち──


 姿を消した。


「ばいばーい」「ばいばーい」


 何だったんだ結局。


 まぁ、でもとにかく。

 良いことをしたのだと思う。たぶん。

 よく判らないけど、チビたちはあれを助けたのである。

 命を救ったのである。


 ──あぁなるほど。


 そう言や書いてあったじゃないか。


 「金魚すくい」って。


          ☆

 後日。

 チビたちのもとには、子犬が届けられたそうだ。


 目が3つあるとか。


 どうなることやら。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うまく捻ってますね、掬いと救い(笑) 思わず吹き出す主人公の台詞回しとテンポのいい流れで、読んでいて心地よかったです。 [気になる点] 金魚(のようなもの)は何を食べていた…いや、おチビ…
[良い点] 読みやすく楽しめる作品でした。
[良い点] 文字数制限もあってか、話のスピード感がよくて とても面白かったです!!
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