終わりゆく世界
その日、世界は終焉を迎えた。
とある土地では何の前触れもなく火山が噴火して、溢れ出したマグマが辺り一帯覆い尽くした。
現地住民は全員死亡。骨一つとして、残らなかった。
とある島では高さ数十メートル規模の巨大津波が発生して、島を丸ごと呑み込んだ。
島民は全員死亡。その亡骸は今なお、海の底に沈んでいる。
とある山地では全ての山で同時に土砂崩れが発生して、麓の村々がその餌食となった。
村民の大半が死亡。辛うじて死を逃れた人々も、その場で生き埋めになりやがて息を引き取った。
とある街では暴風雨が竜巻を呼び寄せ、ありとあらゆる「もの」を吹き飛ばした。
隣接する都市では空から人が振ってくるという、世にも珍しい気象が観測された。
このように、世界各地で突如として発生した天災の数々。
それらは一度や二度では収まらず、一つや二つにとどまらず。天災がまた新しい天災を誘発して、更なる破壊が繰り返されていく。
恐怖、混沌、そして来訪する終焉。
人々は安寧の地を探した。天災に見舞われることのない地を求めた。結果――そんな場所などどこにもなかった。
ある学者は言う。
「これが運命なのだとしたら、神の定めた天命なのだとしたら、人類は滅びの一途を辿るべきなのだろう。人類が支配しているこの世界を、終わらせるべきなのだろう」
その言葉は予言だったのだろうか? 程なくして、人類は衰退していった。
迫り来る未曾有の天災の被害に遭って命を落とした者。限られた陸地を巡って起こった争いに巻き込まれて命を落とした者。或いは、希望がないという絶望から逃げる為に自ら命を絶った者。死因は様々である。
世界が終焉に向かい始めてから、早10年。明日が来るかもわからない世界の中で、人々は今日を全力で生きている。