訳有り物件 貸借人:赤石正太郎
今回のお客様は趣味を生かす事が出来る物件を探しているようです。
俺、赤石正太郎、28歳、会社員だ。
今、イキイキ不動産の前に来ている、俺の欲しい物件を探しに来たのだ。
店のドアを開ける、今時自動ドアじゃないとはな、しかも渋くてなかなか動きも悪い、とにかく力づくで・・・・・開けたっ。
ピ・・・・・・・・・・・・・ポォォォ・・・・・・ん・・・・・!。(ドアホンの音)
なんなんだ!このドアホンの音は!、今にも死にそうな音だな。
店員1
「いらっしゃいませぇ~、当店では例え老い先短い老人でも、世間のいろはを知らない未成年でも、生血が好きな殺人指名手配人でも、分け隔てなく住まいを提供するのをモットーにしており、必ずやお客様のご要望にお応えするイキイキ不動産ですぅ~」
噂には聞いていたが本当に怪しい口上を語る不動産屋だな!。
赤石
「あの~、学校を・・・探しているんですけど」
店員1
「学校っ!、でしたら当店の前の道路の右の方を2キロほど進んだ所にありますよぉ~」
あっ!、こいつ解ってて言ったな!?。
赤石
「そこ、現役の学校でしょ、俺の探しているのは、今は使われていない学校です」
店員1
「廃校って事ですか?」
赤石
「はい」
店員1
「学校なんて何にお使いになるつもりですか??」
赤石
「サバゲーです」
店員1
「ん?、鯖芸、・・・・鯖を飼育・・して・・・」
少しカチンと来たっ!。
赤石
「サバゲーっ、モデルガンを使って遊ぶサバイバルゲームの事ですっ」
店員1
「あぁ~、鯖げーね・・・・サバげー・・・・!」
あっ、この人、まだ理解できてないな?。
赤石
「大丈夫ですか?」
店員1
「アイム オッケー」
どこがオッケーなんだか??。
赤石
「屋外ではなく、校舎の中を使った都市戦闘型サバイバルゲームの会場として使いたくて探しているんです」
店員1
「ほぉ~」
赤石
「校舎はそのまま会場にして、体育館は巨大迷路を設置して迷宮型サバイバル会場に、校庭は駐車場に使いたいんです」
店員1
「学校施設のような物件のご要望でしたら、行政などに問い合わせればご案内してくれるはずです」
赤石
「最初は俺もそう思ってあっちこっちの行政に問い合わせてみたんですが、行政としては地域振興と産業発展の為にご案内しているので娯楽施設としてはご案内できませんと御断られました」
店員1
「でしょうねぇ~」
赤石
「でもねっ、今、サバゲ―をやる人の人口からすると、副産物による地域振興と産業発展には繋がると思うんですよ」
店員1
「んん~、過去にミニバイクやカートなどが走行するミニサーキット場が全国各地に作られたものですが、最初の内は歓迎していた地元住民も騒音や利用者のマナーの悪さに嫌気がさしてミニサーキット場の閉鎖を求めるようになった事もありました、今回のサバゲ―もその変の所は考慮しないといけませんね」
赤石
「へっ!、そんな事があったんですか?」
店員1
「はい、かれこれ30年も前の事です、流行が終わったので利用者の数が激減して閉鎖した所もありますが、大抵の所は地元住民との衝突が原因です」
赤石
「流行物は受け入れられるのが難しいんですかね?」
店員1
「はい~、ですのでもう少しお客様のプランを教えていただけませんでしょうか?」
そう言われて俺は色々な案を店員に説明した。
1、会場への飲食物の持ち込みは禁止、これはゴミ軽減を第一に考えての事。
2、地元住民の運営による飲食コーナーの設置、これは地域振興と地元住民に労働場所を提供する事になっている。
3、地元の工芸品や産業物があれば販売コーナーを設けたい。
4、会場は土日祝祭日の営業とする。
5、平日は会場内の清掃日として地元住民を清掃員として雇用して行う、屋内は汚れやすいので平日に時間を掛けて清掃する必要があり地元住民に労働場所を提供する事にもなる。
6、会場への飲食物の持ち込みは禁止、と、言っても持ち込む人はいくらかはいると思われる、そして会場周辺やその地域のどこかで不法投棄が新たに発生する可能性を考えて会場の利用者からも清掃員を雇って地域の清掃を行ってもらう、これは屋内と違い重労働なので地元住民で体力のある人と会場利用者で行うのが望ましいと思われるからだ。
7、排気音の音量の大きい車両の来場は控えてもらう、これは地元住民への配慮として考えているもので対策については会場や周辺の様子を見て考えたい。
8、会場の利用料は他の会場と比べて利用料を少し高目に設定、清掃活動員への賃金に還元する為である。
店員1
「一応色々とは考えていられるようですね、解りました、今すぐお探ししますね」
暫くして。
店員1
「これはどでしょう?、B市の山間部にあるK小学校跡です」
1、高速道路のICから車で10分、IC出入り口から会場とは反対側方面に車で10分ほど行った所にアウトレットモールがある。
2、地域内の人口は1000人。
3、K小学校跡はそこの地域に入ってすぐの所にあり地域住民の生活区域は1キロほど奥の方にある。
4、その地域の商業施設は工場が数えられる程度にある。
5、小学校の間取りは3階建て校舎が1棟に2階建て校舎が1棟、体育館、プール、校庭は駐車場として使うなら800台は入る大きさだ。
6、小学校の前は道路と田んぼ、隣も田んぼと空き地、裏は山。
7、B市としては解体する予算も無いし、校舎は築30年と若くまだまだ丈夫な建物なので有効利用してくれるのなら娯楽施設でも構わないとの事。
赤石
「条件がぴったりだな」
そして、さらにグルグル地図で地域の状況を詳しく見ると。
その地域の商業施設には、自動車修理整備工場が1件、鋳造工場が1件、板金鉄工所が1件、林業会社が1件、ダンプ運送業の建材店が1件、コンビニエンスストアが1店、ガソリンスタンドが1店、小さな飲食店が7件とあった。
商業施設を見ると比較的若い世代もいるようだな?。
校庭は予想よりも広いので1部をキャンプ場として使えるな!。
期待に膨らむ俺に店員1が申し訳なさそうに。
店員1
「ただぁ~、この物件ですが」
赤石
「どうかしましたか?」
店員1
「はい~、物件情報によりますと、隣の空き地なんですが」
赤石
「隣の空き地がどうかしたんですか?」
店員1
「実はぁ~・・・」
赤石
「実は?」
店員1
「実は昔ぃ~総合病院があった場所で、今も出るらしいんです」
赤石
「出るって、もしかして???」
店員1
「もしかしてのもしかしてです」
赤石
「幽霊っ!?」
店員1
「いいえっ、幽霊なんて生優しいもんじゃないそうです」
赤石
「んん~???」
店員1
「ゾンビが出るそうです」
赤石
「はあぁ~!ゾンビぃ?」
店員1
「はい~」
赤石
「仮にここをサバゲ―会場として使うとしたらゾンビ退治系のサバゲ―になるな!」
それを聞いてサバゲ―マーではなく、ゲ―マーとしての血が騒ぐ俺だった。
店員1
「しかもそこのゾンビなんですが、何故かは解らないが空き地からは出られないので地元住民はゾンビを気にはしていないそうです」
赤石
「随分と緩いですね?」
店員1
「で、時々ですが「はぐれゾンビ」が小学校跡地にだけは入って来るらしく市としては「はぐれゾンビ」を病院跡地に追い返して欲しいと言う話もあります」
赤石
「あぁ~、学校の方に入って来るのもいるのならこっちとしては歓迎したいな」
店員1
「更なる情報によりますと、裏山の反対側の土地のほとんどは現在は田畑なんですが、戦国時代では幾度かは合戦地となっていた場所らしく、総合病院の跡地には戦国時代から続く慰霊碑があったらしいんですが現在は不明との事で、病院建物の取り壊しと共にその慰霊碑が無くなった事でゾンビが発生したのではないかと思われているのです」
赤石
「祈祷とか除霊とかはなんでしなかったんですか?」
店員1
「規模の大きさから・・・・現代の祈祷師や除霊師では太刀打ちできなかったとありますね!」
赤石
「ふぅ~ん!、面白そうだな!?」
店員1
「では、契約いたしますか?」
赤石
「はいっ、契約します」
それから6ヶ月後。
サバゲ―ランド「レッド・エンド」がいよいよオープン。
会場の間取りは当初の予定より少し大きくなった。
2棟ある校舎の内の2階建ての1棟は当初のプラン通りに1階2階ともに都市戦闘型サバゲ―の会場。
屋上は屋外戦闘型サバゲ―会場。
で、もう1棟の3階建ての方では。
1階の校長室は俺の社長室
1階の職員室が会場の職員室。
1階の放送室は各会場に設置した監視カメラのモニター室。
1階の理科室は男性更衣室、音楽室は女性更衣室。
1階の図書室はサバゲ―、モデルガン、軍備、プラモデル、キャンプ、バイク、車、などの趣味的書籍のコーナー。
1階の厨房で作られた地元業者による飲食物を社会科備品室で頂く事に。
1階の保健室は雑貨販売所。
2階は廊下の窓側と教室側とを縦半分に仕切って窓側をスナイパー射撃練習場、各教室は拳銃とガトリングモデルガンの射撃練習室。
3階は対ゾンビ戦闘型サバゲ―会場、その為にもゾンビ達を従業員として雇い入れた。
ゾンビ達は意外にも自我を持っており、人間を襲うつもりはなく大人しくしていても迫害を受けていたそうで嫌気がさして暴れた事があったらしい。
ゾンビ達は死ぬ事も出来ず成仏する事も出来ないのでかなぁ~りっ暇を弄んでいるらしく今回の対ゾンビ戦闘型サバゲ―のエキストラ役を喜んで引き受けてくれた。
屋上は休憩スペース。
その他は。
体育館、壇上はそのままにしてサバゲ―界のヒーローヒロインのステージ会場、体育館の奥側の半分は地元の大工さんにも手伝ってもらい簡単な迷路を作り迷宮戦闘型サバゲ―会場。
プールは夏季にプールカフェ。
校庭は半分を駐車場にして残り半分を20組分のオートキャンプ場に。
なかなか良い出来栄えだ。
ちなみに、巷ではゾンビ相手に戦えると話題が話題を呼び予約開始数秒で予約打ち切りとなった。
一応ゾンビ達にはBB弾が20発くらい当たったら後退し、身体に付着したBB弾を全て払い落としたら再び会場入りするようにルールを設けた事を承諾してもらった。
閑古鳥が鳴いていた地元飲食店に会場の食堂の運営をお願いした事で地域振興にもなった。
板金鉄工場と鋳造工場と林業会社にはキャンプ道具の製造と販売をお願いした事で副産物の製造と販売に繋がった。
爆音車両の利用者様には地域の手前にある建材店の空き地に車を停めてもらい、自動車整備工場から譲ってもらった米軍基地払い下げのボンネットバスで会場に入るようにしてもらった。
総合病院跡地も購入してプレハブ小屋を設置、病院施設を持たない医師数名と看護師数名を雇い診療所を開設、建物内でのサバゲ―では転倒者は軽い打撲を負うのでサバゲ―中の軽傷者の診察と地域住民の診察を行うようにした、ちなみに休診日は水曜日だ。
赤石
「さぁ~、俺もいっちょ~やってやりますか~っ」
そうして俺は89式小銃(電動式モデルガン)とデザートイーグル(ガス式モデルガン)とコルトパイソン.357マグナム 4インチ(ガス式モデルガン)を手に社長業そっちのけで会場入りをするのだった。
暫くして。
ピンポンパンポン~(校内放送開始の音)
女性の声
「レッド・エンドのご利用者様へのお知らせです、只今、当社社長が社長業をサボって会場入りをしております、そこで、当社としては社長に職務に戻ってきて欲しいので、会場のご利用者様に社長討伐のクエストを発令します、討伐者様にはランチ無料クーポン券1人様用を2枚進呈いたしますので皆様奮ってご参加お願い致します」
ピンポンパンポン~(校内放送終了の音)
赤石
「えええええぇえぇぇえぇえぇえええ!!!!!」
その直後、ゾンビを含めサバゲ―マー達全員が俺の敵となった!。
終わり
今回のお話し、投稿した話の量が10としますと投稿前の2時間くらい前までは7くらいでした!、いざ投稿となった時にあれもこれもと増えていき投稿予定の時間を2時間ほど過ぎてからの投稿となっていました。