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英雄のカルマ  作者: 隼
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第4話 情報屋のアレン

 巨大ウサギ(後で訊いたら”ギガラビット”という魔物らしい)から助けてもらった俺は、そのままアレンさんの家にお邪魔することになった。

 そして、道中でこの世界のことを話してくれた。


 まず、この世界と俺の居た世界は別の世界であると言うこと。

 そして、俺の落ちたあの穴は、俺の世界とこの世界を唯一行き来することができるものであり、この世界では”ホール”と呼ばれているそうだ。

 そのホールだが、いまだにどのように発生するのか、どの場所に発生するのかは不明らしい。大きさもバラバラで、直径3㎝くらいのものだったり、5m近い大きさのものであったりするらしい。

 まあ大きさはこの際いいとして。問題なのは()()()()()()()()ということだ。

 つまりだ。

 俺はもう――


「もとの世界に戻れるかわからないねー、あははw」

「笑い事じゃねぇわ!!」


 ・・・まぁでも、それでいいのかもな。

 あっちの世界にいたところで――


『おい、金よこせや』

『ちょっとサンドバッグになってくれよ』

『おい、こいつをお前が――』


 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・


「・・・」


 昔のことを考えていたせいで、その時俺はアレンさんの視線に気づかなかった。




 ***





「さ、ついたよ。ここが俺の家さ!」

「おー・・・」


 森から歩いて30分ほどかかり、ついた場所は王様が統治する所謂、王国という場所だ。

 名を”シルヴァ王国”。都心はとても栄えているらしい。

 そしてアレンさんの家は、その都心から――


 かなり離れた街外れにあった。


 ・・・いや、別にね?

 悪いってわけじゃなくてね?

 王国に住んでるっていうからさ、てっきり金持ちのボンボンなのかと思ってさ・・・。

 そしたらアパートの1LDKに連れてこられたから、なんかびっくりしちゃって。

 そんな俺の心情を悟ったのか、アレンさんが言ってくる。


「あーっユウガ! 今狭いとか思ったろ!」


「・・・すんません」


「否定しないのかよ! 

 でもまあ、見た目だけだって。中はスゴいからさ!」


 そう言って、玄関のドアを開けた。


「さ、入った入った!」


「おじゃましま――」

 そこまで言いかけて絶句した。


 散乱するゴミ袋。

 脱ぎ散らかした服。

 洗ってない皿が置かれた台所。


(ちょうぜつ(きった)ねぇ・・・!)

 全然掃除してないじゃん。


「あっ、その辺に上着かけていいよ」

「その辺ってどの辺ですか」

「ほらそこ。物干し竿あるでしょ。黒い色の奴」


 黒い物干し竿って珍しいなと思い、着ていた学ランを引っかけた。

 ・・・にしても汚い!


「ほらね? 中も汚い(スゴい)でしょ?」

「そっちのスゴいだったんですね」

「どう思った?」

「ここ入るくらいだったら馬小屋のほうがマシですかね」

「俺もそう思うんだわwwあっははははwww」

「そう思ってんなら掃除しろよ!」

「まあまあ・・・すぐ慣れるから」


「いや慣れたらだめだろ!――」




 ***




 10分後、俺はこの空間に慣れていた。


「さ、まずは改めて自己紹介からしようか!

 アレン・オーマだ。この世界では情報屋をやっている!」


「空条勇我です。改めまして、先ほどは助けてくれてありがとうございました!」


 お互いにもう一度挨拶し、ここから本題に入る。

 そう、この世界のことについてだ。


「まず、この世界は君の世界とは別の世界。いわゆる異世界だ」

 あらためて言われると全然実感ないな。

 普通にどこにでもあるアパートの一室っていう感じだし。

 なぜこんなに似ているのか、アレンさんは説明してくれた。


「実はさ、そっちの世界は知らないかもしれないけど、異世界のほうは君たちの世界のことをけっこう知ってるんだぜ?」


「え?」


「さっきもチラッとだけ話したけど、君の世界とこの世界をつなぐ”ホール”。それに落ちて、偶にだけど君みたいに異世界人が来る時があるんだよねー」


「その落ちた人に、俺の居た世界のことを訊いたと?」


「そーゆーこと。ちなみにそのホールを通ってきた人をこの世界では”転移者”と呼んでいるんだ」


 あまりにも非現実的な話だ。

 こんなの小説だけの話だと思っていた。

 だが信じるしかない。

 事実俺はそれに落ちて、異世界に来たわけだからな。

 あれ? 待てよ


「もしかして、今も俺以外に転移者っているんですか?」

「あぁ、いるよ」

「ちなみにどのくらいいるんですか?」


 俺の質問にアレンさんは頬に手をあて「うーん・・・」と数え始めた。

 少し経ってから、手を頬から離す。


「今は600人から700人くらいかな?」

「え、そんなに居るんですか!?」

 意外に多いんだなと驚くと、アレンさんは俺に指をさして言った。


「ユウガ。君の世界で行方不明のまま見つかってないっていうような事件を見たことあるかい?」


 ? 突然なんだろうか?


「まぁときどきですけど見ますね」

「その事件――犯人は”ホール”なのさ」

「はあっ!?」

 驚愕の事実を聞き、素っ頓狂な声を上げてしまう。アレンさんは続ける。


「君のようなケースがほとんどさ。

 ――突然発生したホールに落ちた――それが事件の真相だよ。行方不明者は全てこの世界にいるんだ」


 マジかよ。

 だが、つじつまの合う話でもある。

 警察や市民、SNSまで普及しても見つからない。

 そんなことがあるのか疑問に思う時もあった。

 だが当たり前だったのだ。そもそも、元の世界にはいなかったのだから。


「他にもホールが原因のものがある。例えば謎の古代遺物(アーティファクト)

 これはさっきの逆で、こちらの世界のモノがホールを通じてそちらの世界に飛ばされたものだ」


「な、なるほど。逆輸入される場合もあるんですね・・・」


「あとは・・・なんか時々リモコンとか、なんか小物関係が、そういえば無いなっていうときあるだろ?」

「はい。よくあります」

「それは小さいホールが家の中に発生したというのが真相だ」

「マジですか!」

 もしかして俺がある時無くしたカードや自転車の鍵も、ホールに落ちたのか。

 泣きながらどこ行ったか探したのに。

 カードよ。鍵よ。

 お前たちは異世界に来てたんだな・・・。

 そんな謎の感動に浸っているとき、アレンさん唐突に言った。


「ところでだ。ユウガ」


「はい」


「君さ――」


 アレンさんはニヤリと笑った。


「英雄になってみない?」


「・・・・・・・・えっ?」

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