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初めてのお使い

町外れの小寂れた鍛冶屋に来た。

トンカン、トンカンと金属をリズミカルに叩く澄んだ音が響き渡る。

僕は中に入ると、カウンターにいたベルーナ婆ちゃんに話しかける。


「ベルーナ婆ちゃん、ドルーフ爺は居る?」


「おや?若様かい?今日はひとりでお使いかい?ちょいと待っとくれ。あんた!ちょいとあんた!若様がいらっしゃってるよ!早くでてきな!」


ぶっきらぼうに呼ばれるドルーフ爺がのそっと奥から出てきた。


「おう!若様じゃねーか。待っていたぜ。丁度さっきあがったぜ。」


え?何のこと?


「ドルーフ爺。何のこと?僕、これから武具の事をお願いしようと思って来たんだけど...。」


父様から先に話を聞いていたのかな?


「あ?わりぃ、わりぃ。何の事かわかんねーよな。実はよ、昨日寝てたらな鍛冶神様が夢枕にたってよ、明日小さき勇者が武具を求めて来るぞって言うじゃねーか。さては若様だろうてんで急いで作ったつー事よ。当たりだろ?」


唖然とする僕にドルーフ爺が顛末を教えてくれた。さすが鍛冶神の加護持ちのドルーフ爺だ。鍛冶神から直接注文を受けるとは。ドルーフ爺はドワーフで腕の良い鍛冶屋だ。職人気質で気難しい所はあるが、根は優しい良い爺さんだ。

鍛冶神様もありがとう。って考えてたら、どっからか"気にしてんじゃねーよ"って聞こえた気がした。


「んじゃ、ちょっくら合わせてみてくれ。サイズの微調すっからよ。」


奥から武具を取ってきて僕に合わせてみる。


「若様はまだ小さいからよ、基本レザー系にしてみたぜ。素材はワイバーンを基材に急所はロックドラゴンのウロコを縫い付けてある。どうだ、動きやすいだろ。サイズは丁度良さそうだな。会心の出来栄えだぜ。」


そう言って、ドルーフ爺は満足そうにうなづいている。


何か凄そうな素材を言っていたけど見た目はRPGゲームのイメージ絵にあるようなタイトでスタイリッシュな感じでとてもカッコイイ!


「ドルーフ爺!ありがとう。お代は幾ら?」


「神様からの依頼だからよ、金なんかとれっか。俺自身、今までで最高の出来さ。これも神様の思し召しだろうぜ。」


「ダメだよ!装備は無理してでも良い物を買いなさいって父様に言われてるんだ。足りるかわからないけど、このお金は置いて行くよ。そうじゃなきゃ僕が父様に叱られる。だから僕の為に受け取って。」


カウンターに父様から貰った白金貨を置いた。


「な!白金貨だと!バカか!そんなにするもんじゃねーぞ、これは。しょうかねーから半分だけ貰ってやるよ。それでも儲け過ぎちまうよ。」


お釣りを渡そうとするドルーフ爺を止める。


「ドルーフ爺、このお金が多いんだったら、また今度装備を買い直す時の前金だと思って。僕これからドンドン成長しちゃうからさ!」


ドルーフ爺は少し考える様な顔をしていた。


「おう!わかった!これから若様の装備はわしに任せとけ。早速だけどよ、その双刀をみせな!」


ん?双刀って?腰の脇差は帯刀してるけど、一振りだし。と思ってたら、隣にありました...。なんで...。?


「ドルーフ爺。僕、父様から脇差だけ貰ったんだけど、何故か此処に大刀もある?なんでだろ...。」


ビックリした顔で聞いてみた。


「そりゃあ、そいつは二振りで一刀だからな。離れる訳にはいかなかったんだろ。まぁちょっくら見せてみな。」


二振りをドルーフ爺へ渡した。

ドルーフ爺は鞘から抜き真剣な表情で二振りの刀を見る。


「若様...。こりゃ魔力を帯びてるな...。だが何も付与されちゃいねーな。おし!ちょっくら待っとけ。」


そう言って二振りの刀を持って奥へ行ってしまった。僕はベルーナ婆ちゃんと話をしながら暫く待つ。


「待たせたな。若様、この刀はスゲーぞ。こいつは自ら魔素を吸収して成長するみてぇだ。弄る前は鋼位だったがわしが魔力を込めて彫り込んだら今じゃミスリル位の硬さになりやがった。今まで見た事ねーぞ、こんなもん。大事にしな。そんじゃ婆さん、チャチャと付与魔法をかけてくれ。」


そう言ってカウンターに置いた。婆ちゃんは付与術師だったらしい。


「あいよ。若様の為だ、ちょいと気合い入れてやるかい。」


そう言ってベルーナ婆ちゃんが刀に手をかざす。


「ほ〜う、あんた、若様がかなり可愛いと見える。こりゃ久しぶりに本気を見せるかい!」


そう言って、ベルーナ婆ちゃんがかなりの魔力を込めて付与魔法をかける。

すると、ドルーフ爺が刀身に彫った文字が光出し魔力を吸収していく。


ん?ドルーフ爺の彫った文字って漢字だよね?【調復凝纏浄】?なんだそりゃ...。それに、ドルーフ爺は、なんで漢字をしってるの...?

後で聞いたら一子相伝の秘術文字らしい...。一文字で付与が発動出来るから、一つの物に沢山付与が可能になるんだって。

大昔に地球へ迷いでた人が帰って来て伝えたのかな?


次第に光が収束し、文字が赤く染まった。


「ふぅ〜。終わったよ。久しぶりに疲れたよ...。」


ベルーナ婆ちゃん、少し顔色が悪いよ。今度お菓子を差し入れするね。


「ほらっ、若様。帯刀して見ろ。」


僕は、ドルーフ爺から双刀を受け取った。


「そいじゃ若様、大刀に魔力を少し込めながら丁度良い長さをイメージしてみぃ。」


ドルーフ爺に言われた通り、魔力を込めながらイメージしてみる。

すると、長くなったり、短くなったりを数回繰り返しながらしっくりくる長さに落ち着いた。


「どうでぇ。良い感じだろ。後は自動修復、魔力硬化、属性化、最後に浄化だな。刀は血脂が付くと切れたくなるもんだ。しかも婆さんが張り切ったせいで、また成長しやがったぞ。そうだなぁ、今は魔鋼位か。良かったな。」


「えっ!そんなにして貰っていいの?渡したお金じゃ足りないんじゃないの?」


足りなければ一度帰って貰ってくるか...。


「なに、若様への先行投資だ。見ての通り手間もそんなにかけちゃいねーよ。」


確かに、刀身に掘り込み入れて魔力を込めただけだけど...。


「そっか、でもありがとね。」


この時の僕はこの二人が史上最高の鍛冶師と付与術師とは知りもしなかった...。


父様にこの事を話したら、ビックリしてたけどソーマが余程可愛かったんだろって言っていた。

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