リボルバーの完成
「でっ、出来た!」
僕はたった今完成したリボルバー拳銃を掲げて叫ぶ。
「おう!やったな若様!」
「うん!結構大変だったけど、ドルーフ爺のおかげだよ」
ドルーフ爺の鍛治師としての腕前に本当に助かった。
「若様の発想には敵わねーわ。すげー事ばっか思いつきやがる。本当に大変だったが楽しかったぜ」
僕が今手にしてるリボルバーは砲身は魔鋼にダークデスドラゴンの牙を配合し黒々とし、本体は魔鋼に爪を合わせ使用した。グリップには革を使っている。全体的に漆黒の重厚な作りだ。
魔弾も当初は魔鋼で弾を作成したが、魔力をある程度込めると耐えきれずに暴発して危なかったし、一度限りの弾丸で再利用出来なかった。そこで僕は魔石を直接弾丸状に加工し魔力を込める事を思いつき、魔力を込めてみた。すると魔石弾はどんどん魔力を吸収し、いつの間にか魔石が結晶化していた。この魔晶弾は魔力の内包量も耐久性も魔石弾に比べ遥かに優れていて、使用後に魔力を込め直すと何度でも使用出来る。
ただ魔石に半端なく魔力を込めなければ魔晶石化せず、僕もほぼ全部の魔力を込めてやっと出来る位だった。一日一個で一週間で七個しか出来てない。
「んじゃよ!街外れの草原で試し撃ちでもすっか!」
「うん!」
そして僕たちは街外れの草原に行く。
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その頃深淵の森の上空に黒い影が十体の小型の邪竜や邪虫を従えブルーリーフ領へ向かっていた。
「ルシフル様の予知でこの世界への侵攻に障害となる者を感じられたらしいが、矮小な人族如きが我らの邪魔立てなど出来る筈もない。ただ、あのルシフル様の予知でさえ詳しくは分からずらしいしどういう事なのだろうな...。まぁ神達が我らに気付いたと言う事もなかろう。一応、我が主、序列七位ジャケン様に探れとの下命が下されて、我が久しぶりに地上へと来たのだが面倒だな。来たついでに少し人間供を喰らって帰るか。おっ!彼方に魔素が濃厚で旨そう気配を感じるな。先ずは行ってみるか」
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「ドルーフ爺!流れ弾が危ないから深淵の森に向かって撃ってみるね!」
「おう!そうだな、深淵の森なら着弾しても問題なかろうしな。ただし火属性以外でな。森に火が着いたら魔物が森から出てきちまう」
「うん!んじゃ、風属性の魔弾を試射してみるよ」
「おっと、待ちな!若様。リボルバー単体での試射は何度も確認したから、今日はスナイパーモードで撃ってみな!」
「そうだね、そうする!」
僕は腰の大刀を抜き大刀の握りにリボルバーをセットした。すると大刀の峰に魔文字が浮かび上がり、魔文字が峰に沿って切っ先まで螺旋状に伸び、そして魔文字の砲身を作り出す。僕は風属性基本魔法のエアショットを魔晶弾に封印し、シリンダーにセットした。
実は、あれから遠距離攻撃用に大刀にリボルバーをセットしてライフルになる様にも改造していた。
「んじゃ、撃つね!」
僕はライフルの様に構え、峰に目線を沿わせる。すると光の魔法陣が円を描く様に切っ先と目元に現れた。
覗くと、―まるで望遠スコープの様に遠くまで拡大されて見える。ん?なんだあれ?魔物の群れかな?ちょうど良いな。僕は魔物の群れの先頭に照準を合わせた。
「ショット!」
リボルバーの引き金を引くと射出の魔法陣が発動し、一瞬煌めいた。
"バシュ!"
射出された魔法は一直線に深淵の森上空の魔物に向かって飛んでいく。そして、一瞬後に魔物の眉間に着弾し、その後、エアトルネードが発動され周りにいた魔物達も巻き込み始めた。そして数秒後には魔物がバラバラになり森の中へ落下し、消えていった...。
あれ?魔晶弾に込めたのはエアショットだったよね?なんで、数段上のトルネードショットになってんの?意味わからん...。
「ドルーフ爺...。僕、エアショットを込めたのに何故か数段上のトルネードショットになっちゃた」
「はははっ!若様!若様の魔力はそもそも質が良い。それとライフルモードで作成される魔文字砲身の中には魔法加速と魔法強化が付与される様に婆が仕込んでいたからな。そうなるわな!」
「そっ?そうなの?ベルーナ婆ちゃん、やり過ぎだよ...」
僕は余りの威力にちょっと引いた...。
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..
それは一瞬だった。俺は人族の街で久しぶりに人族を喰らい帰るつもりだったのに、人族の街の外れで何が煌めいた瞬間!俺は魔法で眉間を撃ち抜かれたんだ。
あれはなんだったんだ?薄れる意識の中で最後に見たのは引き連れて来た魔物達がトルネードに巻かれて細切れになり森の中へ降っていく様子だった。そういう俺も森へ落ちていくのだが...。
しかし、あれはやばい。あんな事を人族が出来るとは...。ルシフル様の予知は現実になるだろう...。
そうして俺は混沌に意識を沈めた...。