発明の副産物?
「こんちわ!ドルーフ爺!今日も来たよ!」
ドルーフ爺とリボルバーの製作をし始めて二週間、僕はクエストをこなしながら合間を見てこまめに来ている。
「おう!若様、こっちだ!」
「はーい!今行くよ!」
今は形状と機構がほぼ完成し、後は動作確認と試射を数回繰り返していだが、問題点が何点か見つかった。
その対策に頭を悩ませる。
「若様。やっぱりよ、射出した魔弾の挙動が安定しなくてな。固定射撃をしても毎回着弾箇所が違うんだわ...。これじゃ使いもんにならんわ」
「そっか...。命中精度がないと危ないもんね。何か良い方法はないかなぁ」
「うーむ。発動の魔法陣をもう少し強化して射出の勢いを強めるか?でもなぁ、反動が大きくなるから、今度は射出姿勢が崩れるか...」
僕は前世の記憶を思い返していた。ふと頭の中に"ライフリングでぃ!"と声が聞こえた。そうだ!"ライフリング"だ!確か砲身に溝を入れる事で、弾丸を回転させてジャイロ効果で真っ直ぐ飛ぶようにするんだった。
「ドルーフ爺!わかったよ!砲身に溝をつけよう!射出された魔弾が溝に沿って回転すれば遠心力で魔弾の中心に応力が集中するから真っ直ぐ飛ぶんじゃない?」
「ん?回転?遠心力?何だそれは?」
んー。此方の世界は魔法が発達し過ぎて科学の知識が無いみたいだ。
僕はその辺の木片と鉄で駒を作る。
「ベルーナ婆ちゃん、紐ある?」
「あるよ。ほれ。それで、それは何だい?」
「これはね、ここにひもを引っ掛けてと・・・。よし!見ててね!」
僕は駒に紐を引っ掛けて巻いて、駒を投げながら紐を勢い良く引っ張った。
「よし!」
駒は鉄芯を中心に勢い良く回り、一箇所でグルグル回っている。
「ドルーフ爺!見て!これが回転による遠心力だよ!物が回ると外に行こうとするんだ。でもね、この駒の様に常に違う方向へ力がかかると軸を中心に力が釣り合って安定するんだよ。だからこの駒は今回っている位置から動かずに回ってるんだよ」
「そっ、そうか!魔弾も砲身内の溝で回転させてやれば真っ直ぐに進むってこったな!はぁー、若様は何時もすげー事を思いつくもんだ!」
「まっ、まぁね...」
僕は前世の記憶からカンニングしてるだけだし、"ライフリング"の事も多分鍛冶神のイトス様が思い出させてくれたんだよな...。ちょっと気まずいなぁ...。
「方向性も決まったしよ!さっさとやってみるぞ!」
「はっ!はーい」
そうして僕とドルーフ爺は砲身への溝をつける作業に取りかかった。でも、溝の深さや回転数など、細かい事は良く知らなかったから、何度も何度も試行錯誤して一番安定する条件を一週間かけて決めたのだった。
途中、父様に駒の事を知られてしまい、駒に細工を施した物を一式用意する様に言われた。何でも、王家に献上するんだって...。その後、ブルーリーフ領では簡素な駒が市販され、街中で駒で遊ぶ子供達を見るようになった。父様は駒の収益がかなりになった様でニマニマしていた。今は王都でも流行ってるんだってさ。