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ニーナの弟子

僕達はブルーリーフの家へと帰って来た。

父様と母様が家の前で今来るかと心配顔で待っていてくれた。


「お帰り!ソーマ!」


母様が僕を引き寄せ抱きしめた。


「道中、危ない事はなかったか?」


父様は母様に抱きしめられてジタバタしている僕を苦笑しながら聞いてきた。


「はい!特に危険な事はなかったよ。あっ!でもね、帰りの途中でならず者四人が旅人を襲っていたからチョイっと成敗した」


「なっ!ならず者がかっ!どっ、どこだっ!すぐ行って成敗しなっ...!って!そっ、ソーマがしたって⁉︎」


「うん!なんかね、旅の家族を襲っていて、親らしい人が庇っていた小さな子を斬ろうとしてたから僕、ちょっとイラッとしちゃって斬り捨てた」


「「!!!」」


「庇っていた人達はもう駄目だったけど、小さね子だけでも助けられて本当に良かったよ。それがこの子だよ」


「うっ、う〜ん...」


ニーナさんに抱かれていた小さな子が目を覚ましそうだ。


「うっ...。ん!お父さん⁉︎お母さん⁉︎」


小さな子は目を覚ましたとたん、親を探してキョロキョロし出した。


「うぇーーん!お父さんどこぉー?お母さんさんはぁ〜?」


「!!」


母様が僕を離すとニーナさんから小さな子を受け取り、ギュッと抱きしめた。小さな子は父と母を求めて抱きしめられながら暴れている。


「大丈夫。大丈夫よ。」


母様は"大丈夫"とだけ囁きながら暴れる小さな子をギュッとして、でも限りなく優しく抱きしめ続けた。


「ぐすぅっ...。お母さん...」


抱きしめ続けられた小さな子は母様の胸の中で安心したのか、やっと落ち着いてきたようだ。


「もう大丈夫だからね。ここにいれば安心だから」


母様は優しく声をかけながら家へと連れて入っていった。


「ソーマ...。あの子の両親は?」


「うん。放置もできないからニーナさんに氷結して貰って、今は僕の異次元倉庫の中だよ」


「そうか...。後で丁重に弔おうな」


「うん」


「良し。大変だったな、ソーマ。後で詳細は説明して貰うぞ。まぁ、お帰り...」


「うん。だだいま...」


.

..

...


家に入ると早速父様に呼ばれて事の次第を聞かれた。僕は帰る途中でならず者に襲われた馬車を見つけ、殺される直前の小さな子がいた為一人飛び出し助けた事、心ないならず者達が許せず討伐し、今異次元倉庫の中に入っていると。

そして、小さな子を一人残せず連れ帰った事を。


父様は目を瞑り黙って話を聞いてくれた。

話が終わり一息つくと、


「ソーマ、良く助けた。父様は、お前を誇りに思うよ。只なソーマは大丈夫か?その...、初めて本気の人が相手だったろ」


「うん...でも大丈夫みたい。あの小さな子を身体を張ってまで助けた人達の思いを無碍にするならず者達を本気で許せなかったんだ。だからね、僕は覚悟をしたよ。討伐するって」


「ふぅ〜。ソーマは凄いな」


そう言って父様は大きな手で僕の頭をガシガシと撫でてくれた。


「ガチャっ」


部屋の扉が開くと母様が入ってきた。


「いいかしら?」


「ああ、今、ソーマから事の次第を聞いたところだよ」


父様はそう言って、母様にざっと話した。


「そう...そんな事が...。頑張ったわねソーマ。母様、ソーマが優しく育ってくれて嬉しいわ。それにしても許せないわ。あんなに小さな子を傷つけようだなんて...。あなた、少しばかり引き締めが必要ね」


「そうだな...。ソーマが産まれてから少し緩くしすぎたかもな...。近いうちに一度締めとくか」


一瞬だが父様と母様の顔が【血塗れ剣聖】と【魔狂い魔導姫】になっていた。


母様!こっ、怖いよ!父様もっ!なっ、何をする気なの?


「ん?ソーマ。せっかくお前が帰って来たのにこれからちょっとの間は父様と母様は仕事で留守がちになるかもしれん。すまんな」


そう言って僕を見た両親は何時もの優しい顔になっていた。


「うん。僕は大丈夫。父様も母様もほどほどにね」


「「あぁ(えぇ)」」


それからしばらくして、ニーナさんがあの子が目を覚ました事を告げに来た。最初、居ない両親を探してキョロキョロと落ち着きがなかったらしいが、次第に自分の身に何があったかを思い出したらしく黙ってニーナさんの話を聞いてくれたらしい。自身の身の上を理解したのか僕にお礼を言いたいと話しているとの事だった。


「旦那様、あの子の名はソニアと言うらしいです。両親と共に王都へ商談をしにいった帰り野盗に襲われたそうです。そして薄々ですが両親が帰らぬ人になった事もわかっているようでした。今は、お風呂に入れております」


「そうか、わかった。もうすぐ夕食の時間だ、風呂から上がったら着替えさせてダイニングへ連れてきてくれ。落ち着いたらお腹も空くだろうからな」


「かしこまりました」


そう言ってニーナさんは戻って行った。


「さあ、ソーマ。私達もダイニングに行こうか」


「はい。父様、母様」


そして皆んなでダイニングでセニアが来るのを待っていた。


「旦那様。ソニアちゃんをお連れしました」


そう言ってニーナさんが見知らぬ少女を傍にやってきた。


ん?少女の頭にふさふさの小さな小山が二つピョコピョコしてるよ?ん?スカートの下から短いロープがはみ出し揺れているし?ん?ん?


?が頭に浮かぶ僕にニーナさんが見知らぬ少女を紹介してくれた。


「若様、こちらがソニアちゃんです。彼女は獣人の虎族の子ですわ。ソニアちゃん、あのお方があなたを助けたソーマ様です。そして当家の旦那様と奥様ですよ、ご挨拶してね」


ニーナさんに促され、ソニアはビクビクしながらも挨拶してくれた。


「わっ、わたしはソニアと言います。そっ、ソーマ様。わたしを助けてくれてありがとうございました。そして旦那様、奥様、ありがとうございます」


「ソニアちゃん...大変だったな。ご両親の事は何と言ったら良いかわからぬが、ご両親の気持ちだけは同じ親としてわかる。今のソニアちゃんにご両親はこう言うだろう。"生きていてくれてありがとう"とそして"これからも自分達の分迄生きて幸せになってくれ"と」


「そうよ。親にとって子供は自分より大事なものよ。そしていつでも子供の幸せを願うものだわ」


父様と母様の言葉に少し涙ぐんだソニアだったが、

キッと顔を引き締めて上を向いた。


「旦那様、奥様、ソーマ様。わっ、私、今からもう泣きません!お父さんやお母さんの分迄幸せになる為に頑張ります」


「そう、それがいいわ。でもね、泣きたくなったら泣いていいのよ。泣いたらまた頑張ろうって思うものだから」


「はい。分かりました、奥様」


「ソニアちゃん。僕も応援するね」


「はい!ありがとうございます。ソーマ様」


そう言ったソニアの目はもう大丈夫だと言っていた。


"グゥ"


ソニアのお腹が可愛らしく鳴いた。


「ん?ソニアちゃん。元気が出たらお腹が空いたか?さぁ、ソーマの隣りにお座り。皆んなでご飯を食べよう」


ソニアは父様に促されて、ニーナさんのエスコートで僕の隣りにちょこんと座らされた。

そして皆んなで美味しいくご飯を食べた。


ご飯を食べ終わり皆んなで話をしていると突然、ソニアが父様へ真剣な表情で話し始める。


「ブルーリーフ様!お願いがあります!わっ、わたし、お父さんとお母さん以外に家族もいません。で、ですので、ぶっ、不躾ですが、わたしをここで雇ってもらませんか?おっ、お願いしますっ!何でもやります!どうか...お願いします。」


最初は何事かと聞いていた父様だったが途中から真剣な表情でソニアの話を聞いていた。


「ソニアちゃん。当家はいろいろあってな、非常に厳しいぞ。今のソニアちゃんでは何も出来ず途方にくれるかもしれん...。それでも頑張れるかな?ご両親の希望を叶えてあげられるかな?」


ソニアは父様の言葉にさらに真剣な表情になった。


「わかりました。必ず、両親の希望を叶えてみせます。そして命の恩人のソーマ様の為に頑張ってみせます」


父様とソニアの余りに真剣なやりとりに皆んなが黙って注目して見ていた。


そしてソニアの目を見据えて父様が言う。


「ソニアちゃ...いや、ソニア。君の身柄は我がブルーリーフ家が引き受けよう。これから君はソーマ付きのメイドとして励んで貰う。これはブルーリーフ家当主としての言葉だ。いいな、ソニア。」


「わかりました。私はこれからはソーマ様の為、ブルーリーフ家の為に一生懸命頑張ります。よろしくお願いします」


「あい、わかった。よろしく頼む、ソニア。ソーマもいいな。」


「うん。わかったよ、父様」


「さぁ、皆さん。我が家に新しい家族ができましたわ。よろしくお願いね」


「「「はい!」」」


「奥様、ありがとうございます」


「いいのよ。でも、厳しいわよ〜。家のメイド長」


「奥様!私は鬼神ではありません!」


「ふふっ、どうでしょう?貴方にかかれば鬼神も逃げ出すわ」


「おーくーさーま!」


「ぷっ!ふぁっはははっ」


母様とニーナさんのやりとりにソニアが笑った。

そして皆んなで笑う。


「うふふっ。あー面白かったわ。ニーナを揶揄うのは最高ね。でもソニアの事、よろしく頼むわ、ニーナ」


「全く奥様ときたら...。でもソニアの事はお任せください。必ずソーマ様付きの名に恥じぬメイドに仕上げてみせますわ。ソニア、良いわね?」


「はい!ニーナメイド長様」


「よろしい。それでは一旦メイドルームへ戻りますよ。ついてらっしゃい」


「はい!」


そうしてソニアはニーナの弟子となった。



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