魔道具屋とレベル
すみません、久しぶりの投稿です。
冒険者ギルドで買取を済ませた僕は思わぬ臨時収入にニマニマしながら歩いていた。
「ニーナさん、魔道具屋さんはどこにあるのかなぁ?」
「若様、魔道具屋はメインストリートの裏側にあります。少し柄が悪い道になりますので、私から離れない様にして下さいね」
「わかった。気をつけるね」
そう言ってニーナさんの後ろを歩いていたが、何しろ今まで見た事の無い街並みや人の多さにキョロキョロしながら歩いて行く。
「ニーナさん、あの建物は何?」
「あぁ、あれは商業ギルドですね。商人達の互助会的な組織です。特許の登録や管理、店舗の紹介やスタッフの手配等の商業に関しての様々な事を運営していますよ」
「それじゃ、あっちの建物は?」
「あそこは教会ですね、王都には本教会の他に、色々な神様を個別にお祀りしている教会が複数あるのですよ。この辺は商業区ですから、商業神のエビス様でしょう」
それからもあっちこっちの気になる物を聞きながら歩いて行った。
「ニーナさん、魔道具屋さんはまだかな?」
......
ん?返事が無い?
「ニーナさっ!あっーー!」
周りにニーナさんはいなかった...。
僕は今日初めて迷子になってしまったらしい...。
途方に暮れて立ち尽くしていると、
何やら前から二人組の怪しい男達が近づいて来た。
「坊ちゃん。こんな所に一人でどうしたのかなぁ〜?」
「綺麗なお服を着ていますなぁ〜。お貴族様ですかなぁ〜?迷子かなぁ〜?」
そう言いながら、ニヤニヤしながら僕に近づこうとする。
この二人、やはり怪しい。
「いえ。僕は大丈夫ですので」
そう言って振り返り離れようとすると後ろにも一人男が立っていた。
「そう言わずに、俺達についてきなよぉ〜。ちょっとでいいからさぁ〜」
囲まれた。迷子の僕を言いくるめて攫って身代金でも要求するつもりなのだろう...。
「おじさん達。僕はおじさん達にはついていかないから。僕が本気で怒らない内に帰った方が良いよ」
「お〜、坊ちゃんはお小さいのに勇敢ですねー。おじさん達が優しい内について来た方が痛い事ないんだぜ!」
ほら、思った通り。これは人攫い確定だね。
んじゃ、少し本気を出して退治しようかな?
この人達、なんか弱そうだし。
「おじさん達。後悔先に立たず。だよ!」
そう言って僕は全身から魔力を溢れ出し、目を見据えて威嚇する。
「なっ!なんだ!この坊主!」
「おっ!おい!こんなに濃い魔力を出すなんて!」
「いっ!いやっ!こっちは大人三人だ!一気にかかれは大丈夫だろ!いっ!行くぞ!」
「「おっ、おう!!」」
三人はしどろもどろになりながら僕を攫おうとする。
「やめた方が良いよ...」
僕は更に魔力を吹き出し威圧を増した。
「「「ひっ!」」」
飛びかかろうとしていた男達は僕の魔力範囲に踏み込んだ瞬間!蛇に睨まれたカエルの様に硬直する。
僕は腰の小刀を抜き、ゆっくりと近づいていった。
「くっ!来るな!」「近づくんじゃねー!」「やっ!やめてくれ!」
男達はかろうじて声は出せるらしい。
「おじさん達...。僕はやめた方が良いよって言ったよ?んじゃ、バイバイ...」
僕は殺気をのせて小刀を振り抜く。
「「「ひっ!」」」
男達は腰が砕け、白眼を剥き、口から泡を吹いて気絶した。ベルトを斬った為、パンツ剥き出しになり足下には水溜りができている...。
あぁー、汚いなぁ。
すると何処からか衛兵を連れたニーナさんが慌てた様子でやって来た。
「わっ、若様!お怪我はございませんか!」
「あっ!ニーナさん、みーっけ。」
「若様!申し訳ございません。若様を見失ってしまいました」
「僕は大丈夫だよ。でもこの人達、人攫いみたいでね、ちょっと懲らしめておいたよ」
「なっ!何ですって!若様を攫おうとしたのですか!なんて事を!......私、留めを刺して参ります...」
ニーナさんは目が据わったまま、両手に冷気を纏わせた途端、周囲の温度が急激に下がって行く。
そして衛兵に取り押さえられた男達に近づこうとしていた。
この人、本気だ!
こっ!怖い!僕もちびりそう...。
衛兵さん達は若干股間から湯気出てるし...。
「わっ!ニーナさん!ストップ!ストップ!ぼっ、僕は全然大丈夫だし!未遂だからね!」
僕の必死の呼びかけにニーナさんは正気を取り戻し、周囲の温度がだんだん暖かくなる。
「若様がそこまで言うのであれば、致し方ありませんね...」
ふぅ...。怖かった。ホラー映画より怖かったよ...。
「ほっ、ほら!僕は元気でしょっ!だから大丈夫だよ!」
ニーナさんに元気アピールをして見せた。
すると、やっとニーナさんの表情から険が取れて和かになる。
「若様、良かった...」
ニーナさんの目尻が若干光って見えた。
「ニーナさん、ごめんね。ちょっと浮かれてた」
「いえっ!わっ、私も浮ついておりました。そっ、そのっ...。デートみたいで...」
ニーナさんが、モジモジしながら俯向き加減でぼそっと言った。
かっ、可愛い...。
「んじゃ、デートの続きしようね」
「はい!」
男達を衛兵に任せて僕達はデー...魔道具屋さんへ向かった。
.
..
...
やっと魔道具屋さんに到着して店内に入ると色んな魔道具が所狭しと並んでいた。
「あらっ?いらっしゃい。【魔道具屋 まぐまぐ】へようこそ!」
中からメガネにボブカットの女の人が声をかけて来た。
「私はここの店主のクレアよ。よろしくね」
「はい。僕はソーマ・フィア・ブルーリーフです。こちらはニーナさんです。よろしくお願いします」
「はいはい。よろしく...ねっ...て!ブルーリーフのニーナって!あの【雪花】のっ!まっ、まじっ?」
「今はブルーリーフ家メイド長のニーナです」
「はっ、はぁ...。」
「本日は若様がレベルを見る為の魔道具を御所望ですのでまかり越した次第です」
「えっ!ブルーリーフの若様って?あの剣聖と魔導姫のお子様ですか?こっ、こちらが?」
「はい。こちらが」
「クレアさん、僕の事はソーマで良いですよ。見ての通りの子供ですし」
「そっ、そんにゃ訳には...。貴族様でしゅし、あのブルーリーフ家でしゅし...」
クレアさん、かなりテンパってるね。噛んでますよ。
「クレアさん、若様はこの様に気さくな方で、堅苦しいのは嫌がられますのでお気になさらず」
「はぁ〜...。んっ、んじゃ、いつも通りでやらせて貰うわね...」
「はい!それでお願いします!」
「えっ、えーと、わっ...ソーマくんはレベル測定の魔道具が欲しいんだっけか?」
「はい。今の僕のレベルが知りたくて。あっ!あとアイテムボックスって置いてますか?」
「あるよ。アイテムボックスは容量によってピンキリだからね。どの位の物が欲しいのかな?」
「んー。今の所持金で小白金貨5枚なので、その予算でお願いします」
「さっ、流石はブルーリーフ家だね。その歳でそのお小遣いは凄いね...」
「クレアさん。若様は既に冒険者となられておいでで、既にCランクです。このお金もご自分で討伐なさり用意した物ですよ」
ニーナさんに言われ、クレアさんが口を開けてぽかんとしている。
しばらくして...。
「えっーーー!Cランク冒険者だってーーー!」
「はい。これで」
僕はギルドカードを提示した。
「ほっ、本当だ...。ソーマくん、ごめんね」
「いえ、しょうがないですよ。普通、僕ぐらいの子供がこんな大金をもっていないでしょうし」
クレアさんは、唖然として
「君、一体何歳?ブルーリーフ家って、ドワーフの家系じゃなかったよね...」
「僕は6歳ですよ」
あっ、クレアさん。アゴが外れそうだよ、大丈夫?
「ごっ、ごめん。でも、君本当に6歳?普通に大人と話してるみたいなんだけど...」
「若様は正真正銘の6歳ですよ。ちょっと大人びておられますが」
「はぁー。さすがはブルーリーフ家の御曹司たね。参ったよ。さてと気を取り直してと、えと、予算は小白金貨5枚で、レベル測定とアイテムボックスだね?んじゃ、これなんかはどうかな?」
クレアさんが肩から斜めに掛ける小さめのバッグを取り出して見せてくれた。
「これは魔力を供給するだけ容量が増えるバッグなんだ。でも、普通の人は魔力量がほどほどしかないからほどほどの容量にしかならなくて売れないんだよね。これなら小白金貨1枚で良いよ。若様はまだ子供だからお菓子が入るぐらいで良いよね?」
んー。これって逆に凄いんじゃない?魔力量があればある程に容量が増えるって事だよね?これは買いでしょっ!
「はい!これ下さい!」
「おっ!即決だね!ウチもマジで助かるよ!んじゃレベル測定の魔道具はサービスするよ!毎度あり」
そうして、小白金貨を1枚払い、アイテムバッグとレベル測定の魔道具を手に入れた。
レベル測定の魔道具は巻物の様な形をしていた。
「ソーマくん、レベルはすぐに測定するのかな?」
「はい!今すぐ見てみたいです」
「んじゃ、魔道具を手に持って魔力を流してみてご覧」
僕は早速、魔力を流した。
すると魔道具は魔力を吸い込み淡く光る。
「さぁ、これで良し。開いてみてご覧。レベルが測定出来てるはずだよ」
僕はワクワクしながら巻物を広げて見た。
【ソーマ レベル 189】
「凄いじゃん!6歳でレベル189もあるなんて!さすがはCランク冒険者だね。もうすぐBランククラスだよ」
ニーナさんは少し訝しげな表情をしていたが僕をみると和かに微笑んでいた。
ちなみにレベルの区分は
Fランク 〜50
Eランク 51〜99
Dランク 100〜149
Cランク 150〜199
Bランク 200〜249
Aランク 250〜299
Sランク 300〜499
EXランク 500〜
らしい。
一般的な大人の平均レベルは100位でDランク冒険者の下程度しかないらしい。
僕は6歳で既に一般の大人より大分強いらしいく、
かなり嬉しくなった。やったね!
今まで確認されたレベルは何と!レベル751だって!
何世代か前に魔王を討伐した勇者らしいけど、凄いね!どんだけ強かったんだろう...。僕もまだまだ頑張んなきゃ。
そのあと僕は気分良くニーナさんと家に帰りました。
「う〜ん、わかりません。若様がレベル189しか無いなんて...。レベル測定の魔道具の正確性は確立されてますし...。でも、若様には旦那様や奥様や私ですら敵いませんし、それにあのグレイ殿ですら「若様が本気を出されたら...。」と言っていましたが...」
ニーナは一人、首を傾げていた。
レベル測定魔道具が三桁迄しか測定出来ない物とは、誰も知らない...。