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剣の師

あれから僕は眠り続いて気がついたら朝だった。

やっぱり6歳児に旅は精神的に厳しかったらしい。

久しぶりのベッドが気持ち良かった。


「ふぁ〜。よく寝たな。久しぶりの気持ちいい寝起きだね。お腹空いたなぁ。」


"トントントン"ドアをノックする音が聞こえる。


「若様。おはようございます。お目覚めでしょうか?朝食の準備ができておりますので宜しければダイニングにいらして下さいませ」


執事のグレイさんの声がする。

タイミングバッチリだよ。グレイさん。


「うん。今起きたから着替えたらすぐ行くね」


「分かりました。お待ちしております」


そう聞こえたと思ったらドアの向こうの気配が消えた。


「さぁ今日も楽しもうかな」


両腕を上に上げ欠伸をしながら背伸びした。


ダイニングに行くと給仕係のメイドさんに椅子を引かれ座らされた。今日の朝食はベーコンとスクランブルエッグ、パンにスープ。凄く美味しそう。


朝食を残らず食べてリビングに移動しまったりしているとグレイさんがやってきた。


「若様。本日は如何なさいますか?まだ王城より登城の連絡は来ておりませんが。」


「ん〜。昨日寝過ぎたから午前中はちょっと体を動かしたいな。誰か相手になってくれる人はいますか?」


「それでは私がお相手致します」


「それじゃ宜しくね。グレイさん」


そして模擬刀を持ってグレイさんと中庭に行った。

中庭はテニスコートぐらいの広さがあるので動き回るには充分だ。


「それでは若様。若様がどの程度お動きになられるか少し素振りをして頂きます。宜しいですか?」


「わかった。んじゃ、ちょっと型を振るね」


そう言って僕は模擬刀を正眼に構える。

構えを見たグレイさんの表情が一瞬真剣になった。


僕は正眼から突き、薙ぎ、袈裟、逆袈裟に振り最後は正眼で残心。そして一呼吸し、納刀した。

グレイさんは終始真剣な表情で見ていた。


「若様。流石でございます。お噂は聞いたおりましたがこれ程とは。旦那様が冷や汗をかくはずです。私も多少本気を出さなければいけません」


えっ?本気出すって、軽く運動したいだけなんだけど...。


「それでは若様、行きます」


「はっ、はい。」


グレイさんが踏み込んだと思ったら目の前にいた。


「うわっ!はやっ!」


僕は不意を突かれ慌てて剣を振った。


「悪手です。若様」


そう言ってグレイさんはスウェーでかわし、僕の剣の戻りに合わせて模擬刀を首筋に寸止めした。


「チェックメイト」


グレイさんは一呼吸入れてゆっくり納刀する。


「凄い!凄い!グレイさん!」


「旦那様の師として、この程度は致しませんと」


涼しげな顔でカミングアウト。

なんと!グレイさんは父様の剣の師匠だった。


「グレイさん!王都にいる間、僕に稽古をつけて頂けませんか?」


忙しい執事の仕事を邪魔しちゃうけどお願いしてみる。


「若様、分かりました。若様には非凡なる才がお有りのご様子。私も久方ぶりに楽しみました。微力ながら若様のお相手を勤めさせて頂きます」


そうして僕は剣の師をゲットした。


その後も何度もグレイさんと剣を合わせたけど一太刀も当てる事は出来なかった。

グレイさんはその都度、僕の動きを理論的に解説し、修正してくれて、父様の感覚的な指導より分かり易かった。


その事をグレイさんに言うと、"旦那様は超感覚派ですから、人の指導には向いておりません。"と手厳しい事を言っていた。しかも、"旦那様は少し鍛錬をおサボリになっているご様子。王都へいらした際は少々稽古して差し上げます"と少し怖い顔で笑っていた。


剣の稽古を終えた後、少しグレイさんと話をした。なんと!グレイさんは父様の前任の剣聖で【静寂の剣聖】と言われてたんだって。通りで強い筈だ。

僕の剣なんて子供の手遊び位なんだろうな。頑張んなきゃ!


楽しい時間は早くもうお昼近くになっていた。

ニーナさんが昼食が出来たと呼びに来た。何故かグレイさんに"グレイ殿だけズルい"と言って、"若様、明日は私と魔法の稽古をしましょうね"と飛びっきりの笑みを浮かべている。でも目が笑っていませんよ、ニーナさん...。


僕は、"明日ね"と言ってダイニングへと走る。


「若様!走るとはお行儀が悪いですわよ!」


そう言ってニーナさんが僕の後を追う。


その様子を静かに見ているグレイさんがボソッと

「若様は武神に愛でられていらっしゃる」と言っていた事を僕は知らない。







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