王都の家で
冒険者ギルドでの用事を済ませた僕は風雷の二人と別れて、待っていて貰ったメイドのニーナさんと王都での自宅へと街並みを見物しながら帰る事にした。
ギルドをでてしばらくは平民区の様でいろんなお店や出店が立ち並び、とっても活気に溢れている。
区画整理もきちんとされていて、とても清潔な感じに見えた。
出店を見ながら歩いていると小物が綺麗に並べられている出店が目に付いた。ニーナさんを見るとニーナさんもチラチラ見ている。臨時収入も入ったし、日頃お世話になっているニーナさんへ何かプレゼントしよっかな。
「ニーナさん。あそこの出店をちょっと見ても良い?」
「はい、若様。しかし、予定より少し遅れておりますのでお早目にお願い致しますね」
「ん。わかったよ」
そう言いながら僕は小物を見始めた。
ニーナさんも僕を気にしながら小物を見ている。
ちょっとの間見ているとニーナさんがピアスを取って耳に当てて鏡を見ていた。日の光に煌めく真紅の石のピアスが彼女の亜麻色の髪に映えて見える。
「おばちゃん、彼女の今持っているピアスを頂戴。彼女がつけて帰るから包まなくても良いよ」
そう言って僕は小金貨を5枚支払った。
「えっ?若様!こんな高価な物は頂けません」
慌ててピアスを戻そうとする彼女を押し留めた。
「ニーナさんには何時も世話になっているし、さっき耳に当てていた時とても似合っていたからね。僕にプレゼントさせてくれない?」
「若様...。ありがとうございます。家宝にさせて頂きますね」
ニーナさんは若干涙ぐみながら素敵な笑顔を見せてくれた。
「家宝だなんて勿体よ。僕は普段から付けて貰った方が嬉しいな」
ニーナさんは頬を染めながら頷いてくれた。
「若さん、確かにお代は頂いたよ。このピアスには結界の魔法が付与されているからね。守ってくれるはずだよ」
「ありがと、おばちゃん。」
「若様、ありがとうございます。」
そう言ってニーナさんがピアスをつけた。
とても似合っている。嬉しそうなニーナさんを見ていると僕も嬉しい。
その後、母様とイリスの分もちゃんと買いました。
母様には藍色の石のネックレス。イリスにはサファイアブルーの指輪を選んだ。どちらも結界の魔法が付与されているらしい。
出店で買い物をした後、貴族や豪商の家が立ち並ぶ区画を歩いて王都の家にたどり着いた。
僕は王都の家に来るのは初めてだったので家を見て正直ビックリした。
だって、洋館風のホテル並みに大きいんだもん。
なんでも、王都では何かとパーティーやらがあるらしく必要最小限でもこの大きさなんだって。
扉をニーナさんが開けるとホールの両脇にメイドさんが10人並び一糸乱れぬ動きで、お辞儀をしながら出迎えてくれた。その後、素敵なナイスミドルがやって来て挨拶をされた。
「若様、お帰りなさいませ。若様には初めてお目にかかりますが、私、王都にて執事の任を承っております、グレイと申します。以後お見知りおきの程を」
全く無駄も隙もない完璧執事がそこにいた。
「はい。グレイさん、僕の方こそ宜しくね」
「若様、私の事はグレイと申し付け下さい」
「ん〜。僕はグレイさんと呼ぶから、これ主家の命ね」
すかさずニーナさんが口を挟む。
「グレイ殿。若様はこの様に下々にも分け隔て無く礼を尽くされるお方なのです。お諦めくださいね」
「...はい。メイド長殿にそう言われてしまうと言う事は諦めた方が良さそうですね。若様、このグレイになんなりとお申し付けください」
ん?ニーナさんってメイド長だったの?
「うん。分かったグレイさん」
「さっ、若様。長旅お疲れでしょうからまずはお部屋へ」
「うん。じゃあ案内宜しくね」
「それではこちらへ」
グレイさんに僕の部屋?へと案内された。ここは僕が生まれてすぐに僕用としてグレイさんが準備してくれていたんだって。なんだか初孫が生まれたお爺ちゃんみたいだな。
前世での孤児院のお爺ちゃん先生を思い出す。
なんだか心が暖かくなった。
「若様、私はおそば近くに控えておりますのでご入用の際はいつでもお呼び下さいませ」
「ありがと。グレイさん」
そして部屋に入って旅衣装脱ぎ、体を拭いて着替えベッドに横たえたら急に眠気が襲い、そのまま寝落ちした。