お小遣いが増えた
冒険者登録が終わった僕は異次元倉庫内のワイバーンの買取をして貰う事にした。
登録カウンターとは別のギルドの奥まった所にあるらしい。
僕が買取場所を見つけて呼び鈴を鳴らすと奥からがっしりしたオヤジが出てきた。
「おぅ?呼び鈴を鳴らしたのは坊主か?受付はあっちだせ?」
何も持っていない6歳の僕を見て間違えて買取カウンターに来たと思ったらしい。
「買取をお願いします。」
そう言った僕に頭の中に?を浮かべて変な顔になっている。
「おっ、おぅ。買取はいいが獲物は何処だ?兎か?野鳥か?」
「え〜と、ここじゃちょっと出せないんですけど、少し広い場所は有りますか?」
「ん?何だ。外にでも有るのか?はは〜ん。親が外で待ってんだな。よし!ついて来な。」
何か勘違いして一人で納得してるけど、まぁいいか。黙ってついて行こう。
カウンターの奥へと着いて行った。
奥には体育館ぐらいの広さの解体場があった。
「さぁ着いた。ここだぞ坊主。さっさと親に伝えて来な。待ってっからよ。」
「んじゃ、出しますね。」
そう言って僕は異次元倉庫からワイバーンの首と身体を出した。
「ん?なっ!何じゃ〜そりゃ〜!!!」
目が飛び出しそうな位顔を真っ赤にして叫ぶオヤジさん。
「異次元倉庫ですが、何か?」
「何がじゃねーんだよ!何もない所から獲物が出て来たじゃねーか!しっ、しかも、こっ、こりゃ、ワイバーン?」
何故に疑問形?
「はい。旅の道中で襲われたので、ちゃちゃっと殺りました。」
「ちゃちゃっと殺ったって、誰が?」
ジーと僕を見ているので僕は頷いた。
そしてオヤジは崩れ落ちた。
「あーと。大丈夫ですかー?意識を強く持ってくださいね。」
そう言う僕を"きっ"と睨んで
「お前が言うなーー!」
一際大声で叫ばれました...。
「はぁ、はぁ。ふぅ。もう大丈夫だ。すまなかったな。」
この人、若干青ざめてるが大丈夫だろうか?
「...買取だったな。んじゃ、ちゃっと見せて貰う」
そう言ったオヤジはキリッと真剣な眼差しでワイバーン見定め始めた。流石職人。
「こりゃなんだ?首を一閃で仕留めてやがる...。身体の傷は打撲だけ?おい坊主、こんな状態の良いワイバーンなんて俺ゃ見た事ねーぞ。如何やったらこんな事が出来るんだ?」
僕はワイバーンを仕留めた時の事を話した。
「アー、ソウデスカ。ワカリマシタ...。」
それから暫く放心していたオヤジさんだったけどようやく正気を取り戻した。
「坊主。買取金額は白金貨で2枚だ。普通ワイバーンだったら傷だらけで持ち込まれるもんだ。だから白金貨1枚が相場だが、こんなに鮮度も状態も良いとなれば多少上乗せしても足りない位だ、すまんな」
えっ?白金貨2枚だって...。そんな簡単に貰えるものなのか?ただ飛んでるだけのトカゲだよ?
でも上乗せ金額に本人は納得いかないのか済まなそうにしているし。ギルドの規定で決まっているらしいんだけど。
「良いですよ。たまたま襲われただけなんで」
そもそもワイバーンが勝手にやって来て、斬っただけで白金貨2枚も貰えるんだからラッキーとしか言い様がない。
「ワイバーンに襲われて何でそんなに普通に出来るんだ...」
何故かガックリしてるオヤジさんだった。
「坊主...。ところでお前の異次元倉庫だったか...。ありゃなんだ?アイテムボックスは何度か見た事が有ったがあんな容量の物は今まで見た事ねーぞ。」
「えっと。無色の魔力を空中に集めて割ったら違う空間に繋がったんです。中に物を入れてみたら吸い込む様に入っていって、いくらでも入るみたいで好きに取り出せるし、時間も止まっている様なので便利なんですよね」
僕としては何時も使っている便利なバッグ位の感じだ。
「...。坊主。それを知っているのは他にいるのか...」
「ん〜。両親と家臣さん達と風雷さん達位かなぁ?」
あっ!イリスも知ってるんだっけ。
「そうか。まだそんなに広がってねーな。坊主。大事な話だ。その異次元倉庫は余りしられちゃなんねーぞ。そんな魔法なんざこの世に使える者がいねーだろうから、もし権力者や悪党にでも知られでもしたら坊主の身があぶねー。買取には直接俺んとこに来い。間違ってもカウンターなんかで使うなよ。その内、ダミーでアイテムボックスが手に入ったら上手く誤魔化しながら使いな。風雷の二人は信用できる奴らだから大丈夫だろ。おっと、まだ名乗ってなかったな、俺の名前はガッツだ。皆は親方と呼ぶがな。ガハハ。」
そうか。結構危なかったんだな僕。親方がいい人で良かった。
「はい、親方。僕はソーマと言います。親方言われた事は気をつけます」
「しっかりしたガキ...いやソーマだぜ」
その後、換金して白金貨2枚を受け取った。
何はともあれ、お小遣い増えちゃた。