第2話 「 再会 」
冬の終わり頃、3月。
最近昼間は特に暖かくなってきた、北国ではもう雪が溶けているとか、普通よりだいぶ早いらしい。
そんな今日この頃も彼 仁地 明 はいつもの様にコンビニバイトだ。
いつものように昼過ぎに起きて、準備をして、家を出て駅について、電車に揺られて、出勤していつも通り働いて。
いつもの様に過ごしていた、けれどその日の夜、家へと帰ると突如として”いつも通り”でなくなった。
夕方から夜10時まで勤務の彼が家につくのは買い物等をすると11時近く。
両親も夜遅くまで働いているから、皆が帰ってから遅い晩飯をとる。
食事を済ませて、風呂に入って、これから彼は朝方まで好きな事をする。それから寝て、また昼過ぎに起きて。完璧な昼夜逆転生活で不健康極まりないが彼はそれを変えるつもりもない。仕事前は趣味嗜好の類に集中出来ないとは言い訳にもならないか。
「おやすみ〜」
「ん〜おやすみなさーい」
リビングにいる親にいつもの様におやすみを告げればいつもの様に間延びしたおやすみが返ってくる。
階段を登りながら、帰りの電車の中でまた突如として頭に浮かんだ映像を思い返す。
中世のフランス、どこかの町に平凡に暮らしていた俺に、顔見知りのジャンヌがわざわざ会いに来た光景。俺は冷たく接しているのにジャンヌは笑顔で話しかけてきて。
いつだって俺はジャンヌに冷たく接していた。優しい彼女を突っぱねる様に。
何故かと言われてもわからないしこんな妄想かもわからない物について深く考えるつもりはない。幻想だといつもの様に言い聞かせて。
けれど、ふと思う。
もしも前世、とやらで本当にジャンヌと知り合いだったとして、もしもこの光景や夢が本当にあったことだとして、いや、戯言なのはわかっているをけれど、昔あぁして冷たくしていたジャンヌが、
今
目の前に現れたとしたら、自分は……
どうするのだろうか
「…………」
そこまで考えて何を考えているんだとバカバカしくなった。
ため息を一つ吐いて、自分の部屋のドアノブを捻った。
部屋の中に、自分の部屋であるはずのそこに、見知らぬ、いや、けれど、知っている人物。
ジャンヌがいた。
「……は?」
「貴方は…!」
バッチリとかち合った目に硬直して、間抜けな声が漏れた。
彼女は彼女でこちらを見ては目を見開いて、硬直している。
先程考えていた事が現実に?いいやそんなまさか。また幻覚かなにかだろう、と思っても、目の前の綺麗な彼女はいやにリアリティがあって。
どうしてか、なんとなく。
動けなかった。