帰宅
村長の家を後にした僕は自分の家に帰る最中である。2日後が楽しみで仕方がない。村長の家からはそこそこ距離があるのだが、いつの間にか半分くらいきていた。たった1日しか経っていないというのにずいぶん時間が経ったように感じる。
しばらく歩いているとよく見知った2人が歩いてきたのが見えた。友人のアリエとハンリだ。短髪の赤髪が特徴で活気にあふれた少女と対照的にとても薄い青い髪の大人しそうな少年だ。アリエの両親は行商をやっていて祖父母と一緒に暮らしている。ハンリは帝都でも有数な騎士の出である父親の息子だ。
僕より一足先に10歳を迎えアリエは富の神であるデイエス、ハンリは武の神であるバルガナに祝福された。この年で10歳になる子供は僕が最後で、僕を含め、レイズ、アリエ、ハンリの4人だけだ。
仲の良さはレイズと比べるといい方だと思っている。
「やあ、アリエ、ハンリ」
「あ、レイ。おはよう。もう帰ってきてたんだね。僕とハンリは誕生日が近かったから一緒に祝福の儀を受けたけど‥心細くなかったかい?」
「ハンリったら、レイは意外としっかりしているから大丈夫でしょ。ね、レイ?」
「そうでもなかったかな‥‥‥いろいろあったし‥」
「そうなの?まあ、何事なくてよかったわ!」
どうやら最後の方は聞こえていなかったみたいだ。突っ込まれなかったことにホッとした。あのことはできれば思い出したくない。
あ‥村長に魔物に襲われた話をするべきだったかな。また今度でも大丈夫だよね?
「ねぇ、やっぱ祝福を受けてから何か変わった?」
今のところ自分の中でないかが変わったと言う感覚はない。
「そうだね‥。僕はすぐにわかったかな。僕ってみんなの中で駆けっこが一番遅かったの覚えてる?ちょうど祝福の儀が終わった後だったかな。自分でもビックリするほど足が速くなったんだ」
確かにそうだハンリは僕より足が遅かったはずだ。なのに祝福を受けた今では村の子供達の中で一番足が速くなっていた。
「私はすぐにはわからなかったかなー。というか今でもそんな実感ないんだ。なんか今までよりも物の質や価値とかが分かるようになった気がする」
「へー。みんな違うのか。教えてくれてありがとう」
どうやら人によって差が出るみたいだ。武の神に祝福されたハンリやレイズ(多分、力と凶暴性が増した)が分かりやすく表れているから僕は武の神ではないのかもしれない。
「レイは頭がいいから智の神かもしれんなぁ」
「きっとそうだよ」
アリエとハンリはうんうんと頷いている。
「冗談はよしてくれよー」
冗談でもウソだったとしても嬉しくて頬が少し赤くなる。智の神から祝福された人はこの村の子供達の中にはいない。大人の村人でも元冒険者だったウェルじいさんくらいだ。
「冗談じゃないってー。この目を見てよー!」
綺麗な朱色の瞳が僕を見つめた。少しドキッとしたが‥。僕は騙されないぞ!こんな感じの時は冗談をいっているときだ!
「アリエ、もうこれくらいにしよう。レイのお母さんも帰りをまっているだろうし」
「そうねー。今日はこれぐらいにしてあげる。それじゃあ、落ち着いたらまた遊びましょう」
「じゃあね、レイ。また祝祭で」
「うん、またね」
別れの挨拶を済ませると再び帰路についたのだった。
10分ほど時間が過ぎただろうか?ようやく我が家が見えた。特に目立った外装もない家だがなぜだか輝いて見えた。
「ただいまー!お母さん、リエナ」
「おかえりなさい。レイ」
「お兄ちゃん。おかえりー」
どうやら、お母さんは昼食の準備を妹は人形遊びをしていたみたいだ。
「初めての冒険は楽しかった?」
「うん‥いろいろあったけど楽しかったと思う」
「そう、強くなったのね。お母さん、嬉しいわ」
「本当にそうかな?別に力が強くなったとか、足が速くなったとかしてないけど‥」
「ふふ‥えらーい、えらーい」
何が強くなったのか考える僕をしり目にお母さんは、僕の頭を撫でまわした。それを見た妹が加わり僕の髪の毛がくちゃくちゃになるまでそれは続いたのだった。