アーバレス山
あの出来事からようやくして僕はようやくアーバレス山の入り口についたのであった。
遠くから見ても大きかった山だ‥。それが眼前にあるとこんなにも大きく感じるとは‥。きっと神様に試されているのだろう。みんな、みんなこの試練を乗り越えてきたんだ。僕にもできるはず。そして、祝福を得て‥お母さんやリエナを守る。望んだ祝福を与えられなかったとしても、みんなの役に立ちたい。
僕は強い思いを胸にアーバレス山に入った。
「なんだこれ‥‥」
アーバレス山に入った視界が不思議と明るく感じる。木々で陽の光が遮られているにもかかわず。決して僕が初めて見る山だからそう見える訳ではない。よくよく見ると光の玉のようなものが浮遊している。村では見られない光景だ。それに…不思議と体が軽いような気がする。浄化の力は体にも作用するのだろうか?
「この光の玉とくに触っても問題ないみたいだ」
ゆらゆらしていて、これといった感触はない。とても不思議で見ていて飽きない。生き物なのだろうか?それとも植物なのだろうか?
「今度来たら持って帰ってもっと観察しよう」
あふれる好奇心を抑え、僕は休むことなく登り続けた。
——そろそろ山の中腹に来たのではないだろうか。すっかり夕方になっていた。中腹に来たところで夜になると思っていたのに。僕は予想外の進歩に驚きを隠せなかった。自分の体力的に考えてこの結果はありえない。村に帰ったら知ってそうな人に聞いてみよう。何かわかるかもしれない。
「少し冷えて来たな…もう少し厚着にすればよかったかな」
この調子で頂上の祠を目指して早く休もう。あそこの近くには祝福の儀を受けに来た人が休むための休憩小屋がある。それにちょっと卑怯ではあるが、先人の人たちが辿った道‥‥草が生えてない場所や、成長が遅い場所。残った足跡を辿っているから地図を持ってなくても、楽な道のりを選ぶことができていると思う。まるで多くの人たちに背を押されている…感謝に堪えなかった。
「足が重たくなってきた…」
山を登るのはこんなに大変だとは思わなかった。平地とは全然違う。道中ども思ったが帰ったら、体力つけよう。多分あの体が軽くなる感覚は気のせいだ。
「おや?」
重くなった足を引きずりながら歩いていると、突然目の前の視界が開けた。月明かりがまず最初に目に入り、目の前には広大な湖が広がっていた。どうやら山頂付近にきたみたいだ。あたりを見渡すとまず最初に休憩小屋が目に入った。そして、アーバレス山の山頂‥祠は見当たらなかった。
「小屋の近くに見当たらないから‥もしかして反対側だろうか?まさか頂上にあったりして‥」
幸いなことに休憩小屋は近い少し休んでから祝福の儀を受けるのも悪くないと思う。流石にいろいろあって疲れた。お腹も空いたし‥。
「そうと決まれば、お邪魔しまーす!」
誰もいないけどそう言って、今までの疲れを忘れたのかように僕は小屋に向かって走り出した——
「うーん‥非常食はどこに‥?」
木製の何も装飾が施されていない質素な外見をしていただけあって、中も殺風景だった。本棚があるだけまだ僕の部屋より劣っているだろう‥。そう大して違いなんてないのだけど。
「この床だけ木目が違う。もしかして‥」
木目の違う板を触ると動かせることがわかった。木の板をどかすと非常食があった。全部乾物だけど‥こればかりは仕方がない。少しだけもらって食べて休むことにした。水筒は空になってしまっていたので湖の水で喉を潤し、補給した。この湖の水はとても綺麗だから飲めると村長は言っていた。透明でとても清純そうだった。少し怖いのは水草も、魚も、水生の昆虫など全く見なかったことだ。水はまあ、村の井戸水見たいな感じだった。
「もう十分休んだし、祠を探そうかな」
もうかなり遅い時間になってしまった。別に祝福の儀の時間は特に指定されていないが待ちきれないそういった気持ちがとても強かった。
「よし行こう」
僕は勢いよく立つと休憩小屋を後にした。