正式雇用のようです
みなさんこんにちは、クローディア・ベルフォート七歳です。私、パーティーでいじめていた女の子を新しく専属のメイドとして雇うこととなりました。
「………」
お父様の書斎からセリアさ…じゃなくて、セリアを連れて自室へと帰ってきた。先程お父様の前でセリアさんと「さん」付けで呼んだらクローディアには立場があるのだから使用人に「さん」付けをする必要のは良くないと注意された。そのセリアなのだけどすっかり私は怯えられてしまっていた。部屋の隅で縮こまっているセリアを目にしたモナには「今度はなにをしたのですか」という目で見られるし。むぅ…確かにこうなったのは私が原因ですが納得できません。とにかく、いつまでも怯えているままでは可哀想ですし、私の精神衛生上も非常によろしくない。
「そんなに怯えなくても、何もしないから大丈夫よ」
私はなるべく優しめの声で話しかけ、笑顔を浮かべる。笑顔を、、、意外と難しいわね、うまく笑えているかしら。ちょっとでも気を緩めるとお父様譲りの凶悪な笑顔が出てきそう。
「ぇっ」
「セリア?……モナ?」
私の笑顔を見たセリアは固まってしまった。えっ、そんなに私の笑顔は下手だったのかしら。自分ではうまく笑顔を作れているつもりだったのに。気付けば入り口付近の壁際で控えていたモナまで私の方を見て固まってしまっていた。
「あ、だだだだじょぶです!」
だじょぶってなんなのよ、全然大丈夫に見えない。もうおかしいならおかしいと正直に言ってもらえた方が私の精神衛生的にも良いのだけど。
「成り行きとはいえ既に決まってしまったことですし、セリアには今日から私の専属メイドとして働いてもらうわ。仕事内容についてはモナが詳しいから何かわからないことがあったら彼女に聞いて。なるべく希望には応えるつもりだから何かあれば言ってね」
お父様のありがた迷惑のせいで彼女は私のメイドにされてしまった。お父様のことですから手回しは既に済んでいるでしょうし、貴族の令嬢をメイドにするなんてどれだけの準備をしたのかを考えると、今更「やっぱりいらないですー」なんて取り消すわけにもいかない。彼女には申し訳ないけどこのままメイドとして働いてもらうしかない。せめてもの償いとしてセリアの希望を私にできる範囲で叶えてあげたい。
「はい、ありがとうございます……あの、お優しいのですね」
「?どういう意味かしら」
「申し訳ありません。ただ、あまりにもあの時のクローディア様とは違うので別人のように思えてしまって」
「ふふっ、そうね」
「「?」」
事情を知らない人から見たら私は瓜二つの別人と言われたほうが納得できるかもしれない。これからは周囲の人に対し、真摯に向き合っていくと決めた。それは私自身の今までの行為に対する贖罪の意でもあるし、私はもう私ではないということの証明でもある。
「とにかく、これからよろしくね。セリア」
「はい!」
こうして我が家に新しいメイドが一人増えた。