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心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
1章 凱旋の二重奏
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戦いの後の静けさ

「あー疲れたぁ」

そう言いながら雫は、リビングのソファへとダイブしていった。

雫はそのままソファの上で動かなくなり、寝息を立て始めた。

「そこで寝るなよなぁ…」

そう言って俺は一度ため息をついたあと、雫を抱えて部屋のベッドまで運んでいった。

俺と雫には10年前の記憶がなく、帰るべき家もなかった。

そんな俺達を拾ってくれたのが、今俺達が住んでいる家の元持ち主であるお爺さんとお婆さんの夫婦だった。

二人には雫の事は見えていなかった為、実際はあの二人からすれば俺一人を拾ったと思っていただろうが、雫は二人の事を物凄く気に入っていたらしい。

しかし二人は二年前に業鬼になってしまい、悔しくも俺達の手で殺すことになってしまった。

「よっと」

俺は抱えた雫をベッドに降ろして、机の引き出しから布と二個の砥石を取り出して、ナイフの手入れを始めた。

まずナイフについた汚れを布で拭き取り、砥石で研いでいく。

それを全てのナイフにやっていく。

そんなことをしていたら、いつの間にか真夜中になっていた。

「…寝るか」

俺はナイフを鍵の付いた箱に入れ、布と砥石を水で洗って外で乾かしてから、部屋に戻って雫の寝ているベッドの横の床に寝転がった。

すると、ベッドの上から声が聞こえてきた。

「ありがとうね、ベッドまで運んでくれて」

言いながら雫が顔を覗き込むように出してきた。

「ああ、今後はできるだけソファで寝ないようにしてくれ」

「はーい」

そんな返事をしたあと、雫は俺に悪戯っぽく、

「そうだ、お詫びとして、一緒に寝よっか」

と言った。

俺はその言葉に動揺することもなく、その言葉の本質を見抜くことができた。

「寂しいだけだろう…」

俺が呆れたように言うと雫は、「バレたか」と笑顔で言った。

「いいぞ、少し待っていてくれ」

俺は床から起き上がり、雫の横に横たわった。

「えへへ、拓也と添い寝だ…」

雫は嬉しそうな顔をしながらそんなことを呟いた。

俺は一度雫の頭を撫でたあと、早く寝るよう雫に促した。

「おやすみ、雫」

「うん、おやすみ」

二人でこの日最後の挨拶を交わしたあと、俺達は眠りに付いた。

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