表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
3章 消失のカルマート
27/29

目論み 一項目

「世界は、闇に落ちた。

正確には世界が堕ちたのではなく、人間が堕ちたのか。

10年前に突如として現れた業鬼と呼ばれる怪物により、日本の領土9割が壊滅。

それから3時間後、地球上の全ての国が業鬼により壊滅した事が確認された。

もちろん、人類は必死に抵抗した。

白兵戦も、空爆も、時には核弾頭さえ使った。

しかし奴らを倒す所か、傷を付けることさえ不可能だった。

結果、軍の上官たちは人類の手に負えないと判断し、全軍に全ての戦場の放棄を命令。

しかし、撤退作戦中に業鬼の猛攻に会い、軍は兵士の7割を失った。

その後、民間人が業鬼となる事例が発生し地下シェルターを放棄、民間人は様々な施設を転々としながらほとぼそと生きながらえていた。

それから2年、つまり現在から遡って8年前だ。

生きながらえた研究者たちは業鬼についての研究を始めた。

まず手始めに、業鬼の捕獲から始まり、最後には人体実験まで行った。

捕獲作業は至って簡単だった。

人間1人がおびき寄せ、他の人々が箱に閉じ込めた。おびき寄せたその人間ごと。

そして、捕獲された豪鬼にワイヤーによる捕獲を実施。

見事に成功し、そのまま研究者たちの元へ届けられた。

その後、どのような成分なら豪鬼を傷つけられるのか。ということを調べるために様々な金属で出来たナイフで豪鬼を刺した。

最終的に、傷つけられる物質は存在しないと結論づけられ、業鬼は拘束されたまま放置。

その数週間後、放置された業鬼から体の一部が剥がれるという事が起きた。

その事に科学者達が無視をするはずもなく、すぐさま破片を回収。

その後、様々な議論の結果、「人に移植すれば良いのではないか」と言うおぞましい結論を出した。

そして、そのおぞましい移植をされた人間は、1人の少女だった。

以降計画は、タナトス計画と言う人の心を様々な用途に使う計画の一部となった。それにより、業鬼を使った実験に国の為の実験と言う名目が出来た。

科学者達はそれを良いい事に様々な実験を行った。

研究者は、移植を行った少女にひとつの命令をした。

「あの化け物をナイフで刺してみろ」と。

少女は彼等の言う通りにナイフで業鬼の腹を刺した。

業鬼の腹からは黒い液体が溢れ出るわ、豪鬼は暴れ始めるわでしっちゃかめっちゃかだったが、科学者達に始末を命じられた少女の手によって始末された。

科学者たちは喜んだ。

自分らの思った通りだ、業鬼は業鬼になら傷つけられる、と。

その後、より多くの実験体を得るために、彼等は豪鬼の捕獲を行った。

そして捕獲した業鬼を少女に解体させ、体の中を調べた。

彼等の行動は次第にエスカレートして行った。

更に効率を良くするために子供を誘拐し、業鬼の欠片を埋め込んで行った。

そして、そんなことを続けているうちに、彼等は自らに豪鬼の破片を埋め込む事にした。

結果、彼等は自らの強欲によって業鬼と化し、自らの危険を感じたタナトス計画の被験者達によって始末された。

その後、タナトス計画の被験者はタナトスの子供達と呼ばれ、業鬼を殺すことの出来る英雄となったが、数ヵ月後には何者かに暗殺されていた…

そして、時は戻り現在だ。

我等対業鬼特殊部隊は、あの科学者達と同じことにならない様。業鬼の一部を武器に埋め込む事によって業鬼と戦う力を得ている。

この武器は持ち主の心を反映し、力を与える。

あぁ、この話は少し蛇足だったな。

ともかく、ここまでは分かったかな?月島雫さん」

目の前の白衣を来た男が、手に持った資料を下ろしこちらを向く。

私は、星と名乗った男に誘拐され、この実験室のような部屋に閉じ込められていた。

いや、実際には自由に行動して良いと言われ閉じ込められてはいないのでこの白衣の男、テオドールと名乗る人物に足止めを食らっているだけなのだが。

「まぁ、分かりましたけど、なんでそれを今私に?」

私がそう言うと、男は手元の資料を置き、椅子から立ち上がった。

「これを見てみたまえ」

そう言って男が差し出したのは、2枚の写真だった。

写真を受け取り、少し警戒しながら目を写真へと移す。

そこに映っていたのは、愚者と言う男と対峙した時に暴走した時の拓也と、拓也と同じように暴走している少女の姿だった。

「これ、は…」

「片方は見ての通り君の相方の拓也くん、だったかな?その男が暴走した時の写真だ、近くに潜ませていた小型ドローンで撮影されている。もう1人は、タナトスの子供達のうちの1人が暴走した時の写真。

それを見て、君はどう思った?」

白衣の男はそう言いながら、コーヒーメーカーの電源を入れた。

ウィーン、という少しうるさい程度の機械音を聞きながら、なぜ拓也の名前を知っているかという疑問を抱いたが、それは後で聞くことにして私はその問いに答えた。

「似ているって、思いました。暴走の仕方はもちろん、この子の雰囲気が…」

「そうか。君は確か、彼と今までずーっと行動してきたんだろう?ならばその感覚に間違いはないのだろう」

そう言いながら白衣の男は、既に挽いてあるコーヒー豆をコーヒーメーカーに入れ、水を注いだ。

「しかしだ、今の私の問に関する正解は雰囲気などではなく、暴走の仕方に関するほうだ」

コーヒーメーカーの蓋を占め、コーヒー抽出のスイッチであろうボタンを押した男は、コーヒーを待つ為にまた席に着いた。

「なぜ、この2人は同じ暴走をしていると思う?」

「まさか、拓也がタナトスの子供達、だから?」

恐る恐る私が聞くと、男はそれが自身の求めていた答えだ、と言わんばかりにニヤリと笑った。

「そう、まさにその通り。彼、倉崎拓也はタナトスの子供達の被験者の1人だ…。と言いたいところなんだが」

男はそう言うとにやけていた表情を少し曇らせ、落ち込んだように言った。

「実は、確証がない。研究所のデータベースにも彼の名前は入って居なかった」

「ではなぜ、拓也をタナトスの子供達と呼ぶんですか?」

私がそう聞くと、まるで狙ったかのようにコーヒーメーカーがコーヒーの完成のアラームを鳴らした。

男は席を立ち、コーヒーメーカーのポットからマグカップにコーヒーを注いだ。

「ミルクと砂糖は?」

コーヒーを注ぎながら言う男に、私がコーヒーは苦手と言う事を言うと、「コーヒー美味しいのになぁ」と零し、マグカップに注いだコーヒーを飲んだ。

「…拓也くんをタナトスの子供達と呼ぶのには、大きく分けて2つ理由がある。

まず1つ、彼の力はタナトスの子供達が持っていた力に物凄く近い。彼が【愚者】交戦し、暴走した際の影も、彼が先程【刑死者】と戦った時の戦闘能力の上昇も、全てタナトスの子供達が持っていた能力と同じものなんだ。これだけでも十分に彼がタナトスの子供達だと言う証拠に成りうる」

男はコーヒーをまた少し飲み、言葉を続けた。

「2つ目は、彼の両親についてだ。」

その言葉を聞いて私は脊髄反射のように素早く、大きな声を出していた。

「拓也の親を知っているんですか!?」

「ああ、もちろんだとも。私達は曲がりなりにも国家機関だ。

国民の個人情報など容易く分かる」

それは色々と問題なのでは、と思うが敢えてここは言わないでおこう、言ってもこの人には意味なさそうだし。

「また少し、これを説明するには時間が掛かるのだが、良いかね?」

男はそう言って、コーヒーを一口飲む。

「彼の事が少しでも分かるなら、私は時間なんて惜しくありません」

「そうか、では話そう」

そう言って男はコーヒーをテーブルに置き、椅子の肘置きに肘を置いて顔の前で手を組んだ。所謂ゲン○ウポーズだ。

「彼の両親、倉崎和也と倉崎真凜はタナトス計画の業鬼を使う以前の研究、心を力に変えると言う計画の被験者だった…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ