刑死者の試し 其ノ二
(取った、これで…!)
攻撃の反動の隙をつき、ベレッタ一撃を決め込もうとする。
しかし、構えた時には男は既に次の攻撃に移っていた。
「どうした、タナトスの子供とはそんなものか!」
咄嗟の攻撃を避けきれないと判断した俺はナイフを身代わりにして防御した。
「知るか、俺はタナトスの子供達なんかじゃない!」
身代わりになったナイフが空を切り、壁に衝突する。
「いいや、残念ながらお前はタナトスの子供だよ…!」
そう言い男は大剣を俺に投げつけた。
それを避けてベレッタを数発撃ち込む。
(不思議だ、こいつと戦っていると妙に体の反応が早くなる…)
「気づいたようだな、お前の体の変化に」
ベレッタの玉を腕に付けたガントレットで防御した男は、そう言いながらまた、いつの間にか大剣を構えていた。
「…なんだと?」
俺は尚もベレッタを構えながら男の言葉に疑問を抱いた。
「お前さんのタナトスの子供達としての能力だ、強い相手と戦えば、自身もそれに合わせて強くなる。死神にぴったりな力じゃないか。まぁ、死神と言うにはまだ弱すぎるがな」
「なら俺は本当に…?」
「ああ、お前さんは正真正銘、タナトスの子供達の1人さ」
構えた大剣を地面に突き刺し、男は言う。
「なら、俺以外の奴はどこにいるんだ?」
俺はふとした疑問を口にしていた。
「他の奴らなら死んださ、10年前の災害時にな」
「なん、だと?」
男に合わせてベレッタを下ろした俺は、その言葉に驚愕した。
「なんで死んだんだ?」
「単なる事故のようなものだ、お前はその生き残りと言うだけだ」
10年前の災害については俺も知っているが、そこに関する記憶が抜けているので、俺にはその事故についての心当たりなどなかった。
「用事は済んだ、俺は帰るぞ」
そう言うと、またいつの間にやら大剣をどこかにしまいこんだ男はそのまま俺に背を向けていた。
「待てよ、話はまだ終わってないぞ」
俺は男の背中にベレッタを向けて、男を睨んだ。
「俺は終わった、だから帰るだけだ」
そう言い、男は建物の影へと消えていった。
「なんだったんだ、一体…?」
俺はそう一言呟いて、雫の元へと向かった。




