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心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
2章 黄昏のワルツ
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刑死者の試し 其ノ壱

「和也、裏路地に2体逃げ込んだよ!」

「了解」

2体の業鬼を追い、俺は雫が指示した裏路地へと入っていく。

そして、業鬼をこの目で捉えて路地の行き止まりへと誘導した。

「追い詰めた…」

そして2体の業鬼に近づき、手に持った2対のナイフでトドメを刺そうとする。

その時だった。

「ッ?!」

俺の周りを囲うように、6体の業鬼がいきなり出現したのだ。

「…なるほど、追い詰められたのは俺の方だったか」

そう言って俺は片方のナイフを仕舞い、腰のホルダーに仕舞っていたベレッタM9を出した。

「弾が高いからあまり使いたくなかったんだがな」

そう言って俺は右手でベレッタを構え、左手でナイフを逆手に持ち、ベレッタの斜め下に置いた。

先ずは一体を仕留めようと、目の前の敵に2,3発打ち込み一気に間合いを詰めてナイフで心臓にあたる部分を貫いた。

業鬼になろうとも、人間の弱点は変わらずに存在するため、その一撃によって一体はその場で消滅した。

しかし、その攻撃の隙に2体の業鬼が俺の背中をバツ印を描くように切り裂いた。

「グァっ!」

幸い攻撃は内臓までは届かなかったため重症にはならなかったが、それでも奴らの爪は俺の肉を深く裂いていた。

この状況は非常にマズい。

今追撃を喰らえば完全に再起不能になる。

その上、先程の攻撃で自分は拳銃を落としてしまった。

ナイフを落とさなかったのが不幸中の幸いだが、それでも状況は変わらない。

この好機を逃すまいと7体の業鬼が一斉に距離を詰め、剣の形に変わった腕を大きく振りかぶった。

その一瞬、世界は光に包まれた。

咄嗟に俺は目を閉じ、光から目を守った。

「タナトスのガキって言ってもガキはガキだな」

その声を聞き、俺は目を開ける。

そこには、先程まで居たはずの業鬼達は消え去り、代わりに目元をフードで隠した黒いコートの男が立っていた。

「ふん、この程度の数の業鬼を殺せもしないガキが、タナトスのガキだと?とんだお笑い草だな」

俺はふらつきながら立ち上がり、黒コートの男に質問をした。

「タナトスの、ガキって、なんのこと、だ?」

その言葉に男は表情を濁らせた。

「…まさか、自分の事すら知らんとはな。つくづく呆れるガキだ」

そう言って、男はポケットから緑色の液体が入った注射器を取り出し、俺に投げつけた。

「治癒促進剤だ、使っとけば10分もせずに傷は塞がる」

俺は罠の可能性を考えて、使うのをやめようとしたが、男に、「毒とかは入ってねぇよ、本物だ、そこだけは信じろ」と言われ、害意はないと見て、自身の腹に注射針を刺した。

少し時間が経ち、背中の傷口は完全に塞がった。

それを確認した男は、数歩後ろに下がったあと、信じられないくらいの殺意を向けて来た。

「それじゃあ、やり合おうじゃないか、お前が勝てればタナトスの子供達について教えてやろう。

ついでに前にお前が戦った男や、俺達の事も教えてやろう。

ただし負ければ、ここでくたばってもらう」

そう言い、男はどこから取り出したのか、自身の身長と同じくらいの大剣を肩に乗せていた。

「お前も構えろ、じゃなきゃすぐにでも死ね」

その言葉を聞き、俺はすぐさま2本のナイフを構えた。

「コンバットナイフか、そのような玩具で俺の剣をを受け切れると思わない事だな」

そう言い、男は剣を構え突進してくる。

それを避け、ガラ空きの背中に一撃を入れに行く。

だが、その一撃は虚しい金属音とともに弾かれる。

「速い…!」

既に男はこちらを向いており、剣は俺の頬に傷を入れていた。

「俺が早いんじゃない、お前が遅いんだ。俺の同胞なら今ので5発は入れていたぞ?」

そう言うと、男はまた剣を構える。

今ここに、この男に勝ち得る一手は1つしかない。

男の斬撃を間一髪で避け、俺は男の後ろに落ちていたもう1つの武器を拾いに走った…

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