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心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
1章 凱旋の二重奏
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その後・無心編

謎の男との戦いが終わり、俺は意識を失った。

その後、俺は薄暗い部屋のベッドで大量のコードに繋がれた状態で目を覚ました。

横では根暗、陰湿、研究女こと美那里奏がカルテ用ボードを持ってパイプ椅子に座っていた。

「ん、やぁおはよう。気分はどうだい?」

美那里は俺が目を覚ましたことに気づくと、ボードを机に置き、俺の方へと体を向けた。

「最悪だ…」

俺はそう言いながら体からコードが剥がれないように、ゆっくりと上半身を起こした。

「あー、頭がガンガンする…」

「それはそうだろう、あの戦闘で君は脳に相当な負担を掛けたようだからね」

痛む頭を押さえながら苦悶を溢すと、美那里は机に置いてあったタブレットを取り、俺に見せつけた。

「一応、君の検査結果なのだが、君の残念な脳では理解不能だろうから、赤ちゃんでもわかるように説明しようと思う」

「あんた、いつも思うけど俺のこと好きなのか嫌いなのかよくわからないな」

罵倒のような言葉を述べる美那里に、俺は突っ込む。

「嫌いでもなければ好きでもないよ。ただ、人がほとんど居なくなってしまったこの世界で、嫁の貰い手の候補として考えているだけさ」

「そんなものの中に入れるな、虫酸が走る」

俺が心底嫌そうに言うと、美那里は少し驚いたような表情を浮かべた。

「その話し方…。君、感情が戻ったのかい?」

「…いや、戻ってはないと思う。だが…」

俺が少し言葉を濁すと、美那里は「だが?」と返してきた。

「…だが、なんか、たまに憎いって声が頭の中に響いて、そのあとこのように話せと指示してくる事がさっきからあるんだ」

「…本当かい、それは?」

美那里は俺の言葉を聞き、少し考え込んだ後そのように聞いてきた。

「ああ、今だってウザったいほどに響いていやがる。クソッ、なんなんだこれ…」

俺は尚も響き続ける声に従わないようにしながら話すが、少しばかりその言葉が入ってしまった。

「君は、もしかすると…」

「なんだよ、分かるなら言ってくれ」

言い淀む美那里に俺が続きを促す。

「…うん、君には多分、感情の一部が戻ってきているのだと思う」

無かったはずの感情の一つが帰ってきた。

それは俺にとっては思っても見ないことだった。

「正確には戻ったのではなく生まれたと言うべきかな」

「生まれた?」

美那里の訂正に俺は首をかしげる。

「本来、心というのは育む物だ。心を育むことによって人は成長する。しかし君はその途中で心を失ってしまった。

心を持たない君は、簡単に言えば器だけの状態となり、新しい中身を作り上げていた訳だ」

「新しい、中身…」

美那里は俺の言葉に頷き、話を続けた。

「そして、何かの拍子にその作っていた心が刺激され、中途半端な状態で発現してしまったのではないかと思うよ」

話を終えると、美那里は一度ため息をつき、机に置いてあったコーヒーを啜った。

「…そう、か」

俺にとって、心が戻ることはその内達成しなければいけない事の1つだった、それが叶った事は本来喜ばしい事なのだろう。

しかし、俺は嬉しいとか言うと感情は無く。

そこにあったのは何故か、罪悪感と呼ばれる感情だった。

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