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心無き少年は悲劇を謳う  作者: 西村暗夜
1章 凱旋の二重奏
12/29

Because everything is you

「ここは、どこなの?」

いつの間にか私は、なにもない、ただ真っ白な場所に居た。

「えっと、確か私は…」

曖昧な記憶の中から、何が起きたのかを思い出そうとする。

しかし頭にノイズがが掛かり、記憶を呼び起こすことを拒んでくる。

「駄目ね…」

私は一度肩をガクンと落としたあと、回りに本当に何もないのかを確認した。

何もないことが分かり、私は移動することを決心した。

真っ白な空間をひたすら歩いていると、目の前にいきなり大きな鉄で出来た扉が現れた。

「ここに入れってことね」

私は扉を開けて中に入っていった。

「ッ!!」

扉の中には、大量のコードのようなものに繋がれた人が吊るされていた。

その人はまだ生きているようで、呻き声をあげたり、体をうねらせたりしていた。

「…助けなきゃ」

私がその人に近づき、コードに手を掛けて人から剥がそうとしたそのとき、その人の体に黒い靄がかかり始め、その人は黒い化け物へと変わってしまった。

「これは、業鬼…?」

私はすぐに戦う準備をして、とある言葉を唱えた。

「【剣よ、我が元へ集い、業を打ち払え】」

私がそう唱えると、私の足元に無数の剣が刺さるように現れた。

その剣は、一本一本が違う形をしており、その全てが美しい形をしていた。

腕を前に出して、剣にgoサインをだすと、剣は一斉に浮き上がり、業鬼目掛けて飛んでいった。

「アアアアアァァァァァッ?!?!?!」

死を前にして叫ぶ業鬼を、無慈悲に突き刺していく剣を見ながら、私は一言、こう述べた。

「業に飲み込まれし者よ、抗うなかれ、その剣達は貴方の救いの剣です」

それを聞いた業鬼は、腕をガクンと落とし、体を後ろへと倒した。

「…さようなら、名も知らぬ悲しい人」

私がそう言うと同時に、倒れている業鬼へと、全ての剣が突き刺さり、業鬼は闇に飲まれるように消えていった。

「やっぱり、ここはあの場所かあ…」

そう言いながら、私は奥の扉へと向かった。

私が扉を開けると、そこには一人の男が立っていた。

「久しいな、真凛(まりん)

そう言った男は私の前へと近づいて、微笑んできた。

すると、私の頭の中の記憶に掛かっていたノイズが消えて、ここに来る前の事が全て思い出される。

「まさか、和也くん?」

私が聞くと、男は頷き、私を抱き締めてきた。

「ごめん真凛、あのとき俺は、君を守れなかった…」

和也が涙を流しながら、優しい声で言ってくる。

私は和也を抱き締め返して、こう言った。

「いいのよ、私は自分を守れなかっただけだから。それに、拓也を守りきれたから」

そこまで言って、私は大切な事を思い出す。

「ねぇ、拓也は?あのあとどうなったの?」

私は和也の肩を揺すって、答えをあおいだ。

和也はそんな私を見て、顔を俯かせて言った。

「拓也は、一応生きている。けど、雫ちゃんを救うために、心を失った…」

和也が目に涙を浮かべながら言う。

私は和也の涙を指で拭って、頭を撫でながら、

「それは、拓也の意思だったんだよね?だったら貴方が気に病むことはないよ」

と言う。

それを聞いた和也は安心したような顔をして頷いたあと、私を抱くのを止めて、私に聞いてきた。

「…これからどうする?」

そう言いながら、首を傾げた。

「そうだなあ…」

私は少し考えたあと、近くにあったモニターへと顔を向けた。

「拓也がどうやって生きていくのか、それを見るっていうのはどう?」

私はそう言いながら微笑み、和也の顔を撫でた。

和也は微笑しながら、

「それはいい。やっと、親らしいことがしてやれる」

と言った。

そして、私たちがモニターへと顔を向けると、画面に拓也の姿が写り始めた。



きっと、君はこの二人の事を覚えていないだろう。

――――拓也、俺はお前に何もできなかった。

――――拓也、私は貴方に何もできなかった。

けれど、この二人は親として、最後まで君の事を見守るだろう。

――――でも、僕は君をずーっと見守ろう

――――でも、私は貴方をずーっと見守るよ

それが、この二人の覚悟だ。

――――全ては、お前の為に

――――全ては、貴方の為に


Because everything is you END

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