Because everything is you
「ここは、どこなの?」
いつの間にか私は、なにもない、ただ真っ白な場所に居た。
「えっと、確か私は…」
曖昧な記憶の中から、何が起きたのかを思い出そうとする。
しかし頭にノイズがが掛かり、記憶を呼び起こすことを拒んでくる。
「駄目ね…」
私は一度肩をガクンと落としたあと、回りに本当に何もないのかを確認した。
何もないことが分かり、私は移動することを決心した。
真っ白な空間をひたすら歩いていると、目の前にいきなり大きな鉄で出来た扉が現れた。
「ここに入れってことね」
私は扉を開けて中に入っていった。
「ッ!!」
扉の中には、大量のコードのようなものに繋がれた人が吊るされていた。
その人はまだ生きているようで、呻き声をあげたり、体をうねらせたりしていた。
「…助けなきゃ」
私がその人に近づき、コードに手を掛けて人から剥がそうとしたそのとき、その人の体に黒い靄がかかり始め、その人は黒い化け物へと変わってしまった。
「これは、業鬼…?」
私はすぐに戦う準備をして、とある言葉を唱えた。
「【剣よ、我が元へ集い、業を打ち払え】」
私がそう唱えると、私の足元に無数の剣が刺さるように現れた。
その剣は、一本一本が違う形をしており、その全てが美しい形をしていた。
腕を前に出して、剣にgoサインをだすと、剣は一斉に浮き上がり、業鬼目掛けて飛んでいった。
「アアアアアァァァァァッ?!?!?!」
死を前にして叫ぶ業鬼を、無慈悲に突き刺していく剣を見ながら、私は一言、こう述べた。
「業に飲み込まれし者よ、抗うなかれ、その剣達は貴方の救いの剣です」
それを聞いた業鬼は、腕をガクンと落とし、体を後ろへと倒した。
「…さようなら、名も知らぬ悲しい人」
私がそう言うと同時に、倒れている業鬼へと、全ての剣が突き刺さり、業鬼は闇に飲まれるように消えていった。
「やっぱり、ここはあの場所かあ…」
そう言いながら、私は奥の扉へと向かった。
私が扉を開けると、そこには一人の男が立っていた。
「久しいな、真凛」
そう言った男は私の前へと近づいて、微笑んできた。
すると、私の頭の中の記憶に掛かっていたノイズが消えて、ここに来る前の事が全て思い出される。
「まさか、和也くん?」
私が聞くと、男は頷き、私を抱き締めてきた。
「ごめん真凛、あのとき俺は、君を守れなかった…」
和也が涙を流しながら、優しい声で言ってくる。
私は和也を抱き締め返して、こう言った。
「いいのよ、私は自分を守れなかっただけだから。それに、拓也を守りきれたから」
そこまで言って、私は大切な事を思い出す。
「ねぇ、拓也は?あのあとどうなったの?」
私は和也の肩を揺すって、答えをあおいだ。
和也はそんな私を見て、顔を俯かせて言った。
「拓也は、一応生きている。けど、雫ちゃんを救うために、心を失った…」
和也が目に涙を浮かべながら言う。
私は和也の涙を指で拭って、頭を撫でながら、
「それは、拓也の意思だったんだよね?だったら貴方が気に病むことはないよ」
と言う。
それを聞いた和也は安心したような顔をして頷いたあと、私を抱くのを止めて、私に聞いてきた。
「…これからどうする?」
そう言いながら、首を傾げた。
「そうだなあ…」
私は少し考えたあと、近くにあったモニターへと顔を向けた。
「拓也がどうやって生きていくのか、それを見るっていうのはどう?」
私はそう言いながら微笑み、和也の顔を撫でた。
和也は微笑しながら、
「それはいい。やっと、親らしいことがしてやれる」
と言った。
そして、私たちがモニターへと顔を向けると、画面に拓也の姿が写り始めた。
きっと、君はこの二人の事を覚えていないだろう。
――――拓也、俺はお前に何もできなかった。
――――拓也、私は貴方に何もできなかった。
けれど、この二人は親として、最後まで君の事を見守るだろう。
――――でも、僕は君をずーっと見守ろう
――――でも、私は貴方をずーっと見守るよ
それが、この二人の覚悟だ。
――――全ては、お前の為に
――――全ては、貴方の為に
Because everything is you END