2017/11/4_0:48:4
「よぉ。待たせたな。」
そう吐き捨て、そいつは僕の前に立った。
髪は水色のロングで先にいくと赤色に染まっている。そんな長い髪を背中に垂らしている。
上には何やら肌色の布のようなマントを羽織っており、下には見たこともない素材のズボンを履いていた。
「くる、、、な、、、」
そいつの気に食わない顔とセリフにぼくは顔をしかめてそう絞り出す。
どうにもあの上に出している変なやつ........ぼくのスキルなのだが.......を出しているせいで力が抜けていく感じがする。
アレはマナで動くと聞いていたがこんな疲労感を伴うとは一言も聞いたこともない。
そもそもぼくのスキルやマナの管理はルドがしていたから今更マナだのスキルだの言っても仕方がない。
みんなが来てくれるまでのお預けだ。
そのためにも。
とぼくは再度そいつを見据えて睨む。
こいつを殺す。
そうしなければぼくはみんなとの約束を守れない。
みんなが帰ってくるのを待つだけだ。
そんな時にただ害虫が出て来ただけだ。
ただ追い出すだけだ。
出ていかないのなら。死ねばいいのだ。
それで全部解決する。
だから、
「おまえ、、、は、、、、コロス、、、、」
「やってみろ。」
そいつ........女のような外見だから女とよぼうか..........はそう言いその口を釣り上げて笑みを作り直後その右腕を振り上げる。
.........やってみろ.....だと?
上等だ。
ぼくは左の人差し指を立てる。
その時にぼくの前にそれは現れる。
まるで目の前にいた女と同じ容姿をしたそいつはぼくとその女の間に現れる。そして振り下ろすその腕を受け止める。
「なっ!?」
そう驚愕する女にぼくは口を歪める。
そいつはその動きと同様の動きを繰り出す。
右手を振り上げて振り下ろす。
それを女は左手で受け止める。
「ぐっ!!これもスキルの力か..........!!」
その歪む女の顔にぼくは優越感に浸る。
あんな憎い自信満々の顔もぼくのスキルの前ではすぐにくしゃくしゃになって潰れる。
ぼくはさらなる優越感なため、今度は小指を立てる。
「っ!?」
そう吐き、女はぼくからみて左の方向へと突如飛ばされた。
理由としては、横から【非生命体魂】を幻影として出してその女に突進させたからだ。
ぼくは【幻影】、つまりは幻を出すことができる。
それは対象の者達の目に混乱を与えて本当にいるかのように再現できる。
それにこの混乱を与える影響は目だけではない。
この幻影は相手のあらゆる部分に混乱を与える。
その幻影を相手に突進させれば、相手の皮膚一つ一つは混乱され、本当に突進されたかのように反応する。つまり自分の体に反動を与える。
つまり幻影を具現化していると言ってもおかしくない。
それがぼくのオリジナルスキル。
【幻影操作王】だ。
女は立ち上がると顔を上げる。
まだ心は折れていないようだ。
.......はやくおわらせてみんなをまつんだ。
邪魔なおまえたちは.........
「きえろ」
そう呟き、ぼくは薬指を立て、更なる幻影を召喚しようとして、
吹き飛ばされた。
「っ!? ぐっ!?」
それだけしか声を上げれずにぼくは宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられる。
「......な、いったい、、、、、なにが、、、?」
ぼくが状況を確認しようと、顔を上げる。と
影が僕をさす。
「さっきのお返しだ!!」
そう聞こえて咄嗟に右側を向く。
そこには右腕を振り上げて前かがみになった状態の女が片足で立っていた。.....簡単に言うと走って突っ込んで来たのだ。
「なっ!?っが!?」
顔に熱がこもり、直後焼けるように熱くなる。
ぼくは思い切り殴り飛ばされてもう一度宙を舞う。
地面に再度叩きつけられて、腹に激痛が走る。
「これで返したぞ。 飛ばされた分!!」
そう拳を手のひらに打ち付けて女は言う。
その顔にはとても折れないような顔で歯をニッと見せる。
ぼくは顔を上げて状況を整理しようとして咄嗟に思いつく。
、、、、こいつもスキルをもっているのか、、
確かにスキルをもっているものたちは何かと強かった。
だがぼくのスキルの前では誰も勝つことができずに逃げて行った。
だからぼくはスキルに頼っていた。
これまでも、これから先もずっとぼくに勝つ者はいないだろう。
そう考えてぼくはみんなを待っていた。
その時まで僕の前から何十万人逃げたのだろうか。
もう数えるのも疲れて来た。
次、そして次。
次々とここを通ろうとする者たちを何人殺しただろうか、何人逃しただろうか。
そう考えているうちにまた朝が来て人の相手をした。
そして今日。何故か僕に面と向かって立っているこいつは逃げようとしない。
奥の三人も同様だ。
この者たちは今、逃げようとする素振り一つ取らずに敵うはずもない化け物の相手をしている。
何故こいつは逃げないのか、何故あいつらは逃げないのか。
僕には分からない。
何故。何故。何故?
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
あの時、僕は聞いていた。あの顔のほとんどを面で隠した者の言葉を、
「信じる」と、
昔どこかで聞いたこの響きに僕は思い出せない。
でも何かが引っ掛かる。
何だ。何だ?何だ!?何だ!!??
僕は頭を抱えてその乾いた荒野に頭を打ち付ける。
何があった。何があった?
何が?何を?どうした?
その問いはずっと残り続ける。