波との決着
直後に後ろから波が現れる。
それも5個ぐらいはいるのだろうか。
「!? こっちは無」
理だ!! と言い切る前にその波は消え失せた。
「よそ見をするんじゃないぞ? ユウト。」
オリジナルスキル【オルグ・ザ・スターネイト】の一部、【放出】で破壊光線を放ち、手から煙を吹き出したルミゲルがそこには立っていた。
「あ、あぁ。すまん。これからはちゃんと周り見るよ。」
そう言い俺は足に力を込める。そして跳んで拳を上げる。
横から落ちてくる波を貫くように......
着地するとあたり一帯の村の風景が見事に消え去っていた。
「おぉ。本当に森林だ。」
「む? ユウト。お前も【千里眼】持っておるのか?」
「あぁ。さっきな?」
「さっき?.....まぁ良い。にしても.........こいつどうしようかのぉ。」
そう言いそれを見せびらかすルミゲルはとても疲れているように見える。
それもそうだ。先程からスーリアを抱えたまま、彼女に振動や衝撃を起こさないように戦っていたのだ。疲れるのも無理はない。 逆にその状況で疲れるだけの方がおかしいのだが.............
「俺が守るからそこに寝かせとけ。」
「おう。 あっ また来おったな?今度はルミゲル超振動波を食らわせてやるわい!!」
........相当ルミゲルって名前が気に入ったんだな......にしても
と、俺はルミゲルを見送りその先の景色へと目を移すと、
まだ滝のように流れてくるものたちが跡を絶たない。
いつまで続くのだろうか........
そう考えた時だった。
「う、うん?」
スーリアが目をゆっくりと開け、そんな声を出す。
どうやら体とかに傷は出来ていないようだ。 流石ルミゲル。 魔王を名乗るだけはあるな。
「大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。 ちょっと見たものが気持ち悪くて気絶しちゃっただけだから.......」
......気持ち悪い物を見て気絶するのはなかなかのビビリだな........
「立てるか?」
そう手を伸ばす俺にスーリアはその手を握る。
「ありがとう。」
2人して立ち上がり周りを見回す。と
あたりはルミゲルが倒した波の藻屑と波達でまるで戦場と化していた。
「なんかいろいろと凄いことになってんなぁ。って..........ん?」
ふとスーリアを見ると、
「あっ、目の前が真っ暗に........」
「お、おい!!気絶しようとするな!!!耐性無さすぎだろ流石に!!!」
俺がそう叫び倒れそうなスーリアの体を支えていると、
ドン
そんな音と共に目の前に何かが降って来た。
勿論、人。
......真上から....人?
そう思い、真上を見上げると......
「ギャァァシャァァァァァ!!!」
見上げた俺とスーリアの目の前には顔の半分がなくなったものがいた。
「「ギャァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」
さらに上から落ちてくる大量の波に思わず悲鳴を上げる2人。すると
「シャルングル。」
そんな声と共に波達は消え失せる。
そして今に至る。
俺は立ち上がり【パワー・オブ・ザ・キング】を発動させ、第2波を備える。
ルミゲルは【オルグ・ザ・スターネイト】の吸収で敵の衝撃に備える。
スタさんもきっと何かで攻撃を備えるつもりだろう。
スーリアはルミゲルの肩に乗せられ肩車の状態になっていた。
そして備えて1分が経った頃、やはりそれは現れた。
ただし、計算外だったのが.....
.........先ほどの倍以上の大波となって押し寄せて来たことだ。
「「「「な!?」」」」
そんな声を全員が漏らす。が、皆はそれぞれでスキルを波に打ち付ける。
「【パワー・ザ・キング】!! パワースマッシュ!!!」
「【オルグ・ザ・スターネイト】!!!【放出】!!焼き尽くせ!!グランドオブフレア!!!」
「【デストロイ】!! グラビティ!!!」
3つの波動と巨大な波はぶつかり衝撃が空を伝って襲いかかる。
そしてその波は消え失せる。だが
「あっ!!」
その声の方へ向くと、スーリアがあまりの衝撃で飛ばされていた。
「ヤベッ!!」
俺はすぐに脚力を上げて、スーリアの方へと跳ぶ。
空中でスーリアをキャッチし、お姫様抱っこの状態で着地する。
「ふぅ。」
そう息を吐き、スーリアを下ろす。
「ま、また助けられちゃったね。」
あっ、確かに。 でもこの波を止めない限りでは...........
と思った時だった。
ペリ、ベリベリベリベリ
そんな、何かがひび割れたような不可解な音が流れる。
「な、なんだ? この音。」
そう呟き、あたりを見回すと。
「少年。 この犯人が分かったぞ。」
仁王立ちするスタさんの姿があった。
「犯人ってなんだ? この人みたいなものをどんどん流し込んでくるやつか?」
その言葉にスタさんは ふっ と笑い首を振る。
「犯人というのはだな、」
そう言いスタさんは誰も居ないはずの森に指を指す。
すると.........その指差した部分に亀裂が走り粉砕した。
「「「!?」」」
そう思った時。そいつは居た。
「こいつが犯人だ。」