道中にて
「さて、問題。コインを入れたのはどちらの手かね?」
「う〜む..............こっちじゃ!!」
「ざ〜んね〜〜ん!!ハズレ〜!!」
「何故じゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そんなどうでもいい遊びを1時間続けているのだからもう呆れるしかない。
俺たちは今。次の都市 アルトルードニへと向かっており、その途中 歩きながらそんな無駄話を聞き流し、地図を見ていた。
俺たちが町から出たのは昨日。
そしてこの調子で行くと三、四日程度で着くであろう。
食料や寝床用の道具は大量に持っているので心配ない。
そして、1時間おきに食料に手を伸ばすルミゲルの右手を引っ叩き、俺は水筒を飲む。今から少し休憩だ。
「ふははははは。なかな当たらぬなぁ。青年。運が悪いなぁ。」
「ぐぬぬぬぬ。次こそ!!次こそは当ててやるのじゃ!!」
そう言いやる気を入れるルミゲルに対してスタさんはコインを投げる。
それをスタさんは自分の後ろに手を組んでキャッチすると、そのコインを尻ポケットに入れて.........ってあれ?
「さぁ。どこにコインはあるかな?」
そう言い両手共に何も入っていない手をルミゲルに差し出す。
........成る程。 イカサマか。.......いや別に賭け事じゃないからいいことはいいけど。
「おい。スタ。お前コインを尻ポケットに入れたじゃろう?」
ほら。ルミゲルさんも気づいて........へ?
それを聞いたスタさんはやれやれとでも言いたげに尻ポケットからコインを取り、コインをさっき同様に、ただ尻ポケットに入れずに両手を差し出す。
あれ? なんで気付いてんの?
そんな俺の疑問を置いて ルミゲルが右手を選択する。
「残念!!左でした!!」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
《どうやらルミゲルさんは普通に悪運のようですね。》
............うん。ルミゲルってそんなに運悪いんだね。
そうナビと考えを深めていると、
「そういえばみんな種族ってなんですか?」
そんな疑問がスーリアから出た。
......種族?
《はい。例えばマスターの知っている者であれば、耳長族や巨人族、魔物族や悪魔族などの者たちのことです。他にも妖精族や土竜族や化物族、屍腐族など、様々な種族が存在します。》
へぇ。成る程ね。
結構いるんだな。......ん?待てよ?ってことは.........
............ポク...........ポク...........ポク................チーン。
そんな音と共に俺は思考速度が急激に上がった。
まずい!!ルミゲルが魔王だとバレる!!そんなこと知られたらいくらスーリアでも変なことになりそうだぞ!? いや!? でも......まず魔王と思われないんじゃないか?
うん。大丈夫。ルミゲルならきっと大丈夫だよな? やってくれる。俺の心配にはおよばn......
と思った直後。
「儂は魔物族の上の上の上!! 魔王ルミス・ゲル・ガ・ライオットじゃ!!!!」
俺の嫌な予感は的中した。
「ま、魔王!?」
スーリアが驚きすぎて腰を抜かしている。
いやそんな急に驚くのもすごい気がする。 なんで魔王だってことをすぐに信用したんだろうか。
それに対してスタさんは、
「では魔王殿。次はどちらかな?」
まるで何事もなかったかのようにさっきのゲームを続けるようだった。
「スタさん!!なんで驚かないんですか!? 魔王なんですよ!!メトロドよりも脅威なんですよ!!!怖いんですよ!!!」
そう子供のようなことをいうスーリアにスタさんは......
「え? だって私、魔物族だからな。」
などと言い放ち.............今なんて?
「ん? あぁ。言ってなかったか。私は魔王の幹部にして人間大好きの何でも屋さん。スタさんである。改めてよろしくである。」
いやいやいやいや。よろしくできねぇよ。ってかお前魔王の幹部だったのかよ。
そう突っ込もうと思っているとスタさんがこちらを向き、
「うむ。 私はある方の側近でな。 ただいま幹部をストライキ中なのだ。」
幹部にストライキとかあんのかよ。 ってか
「なんで俺の思ったことに反応できてんだ?お前。」
俺はふと思ったことを口にする。
「ふっふっふっ。よくぞ見破った!!少年!!そう。お前の心が読めるのは私のオリジナルスキルの力なのだ!!!!」
いや、なにも見破ってないよ。っていうかオリジナルスキル持ちか。
「ちなみにどんなスキルの内容だ?一応確認しとかないと後々めんどくさいからな。」
《整理は後に私がしておくので大丈夫です。》
お、 ナビさんも大丈夫みたいだな。
そう頭で呟くとスタさんは口を開く。
「私のスキルの名は『追跡者』一瞥することでその者の情報を全て把握することができる。というものだ。」
それを聞きナビがきっと俺の頭の中で整理してくれているのだろう。中
「ん? じゃあなんでお前ってあの時に騙されてたんだ?」
唐突にスタさんがメトロドの元幹部だった時のことを思い出す。
その能力さえあればあんな者たちのことなど等に分かっているはずなのだが........
「それなのだがな。実は後で調べてみた結果。あの部屋には仕組みがあったらしくてな。なんらかの電波のようなもので私のスキルを曖昧にさせていたのだよ。」
そんな電波をどこで........メトロド 地味にめんどくさいな。にしても
「メトロドの奴らが急に消えること.....お前知ってるか?」
そう。スタさんが懲らしめたというメトロドたちも、あの店の時同様に 突如として全員消えたのだ。
「うむ。それだが、私のスキルはその者が知らない情報を読み解くのは出来ないのでな、すまんな。」
そう言い、コインを前に出すスタさん。
まぁそれなら仕方ない。 ほんとうにメトロドという者たちは人類の敵で間違えなさそうだ。
ふとルミゲルを見る俺はさらに思い浮かんだことを言う。
「あれ? 魔王って確か11いたんだよな? 」
「うむ。 だがしかし、今のこの時代には魔王が増えとるかもしれぬし、減っとるかも知れん。」
「私が幹部で出た時は12人はいらっしゃったぞ? それに、私は一度ルミゲル殿とも会ったことがあるぞ?」
「「!?」」
俺とルミゲルが驚愕し、
「あ〜〜〜!! お主あれか。あのペトロフのとこのまだ幹部になったばかりだのと言ってたひよっこか!!」
「あっ、覚えてくれてたんですな。 嬉しゅう思います。 あの時にルミゲル殿に助けられた時は一生ついていこうとしていましたよ。」
「ふん。あの程度で弱音を吐いていた時は懐かしいのぉ。よし今度は儂についてこい。」
「はい。よろしいのであれば、火の中水の中!! ついて行きますぞ!!...........さぁどっちかな?」
「こっちじゃ!!」
「ハズレです。」
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
なんかへんなことを思い出しさらに遊びを続ける2人を置いて、俺は腰を未だに抜かすスーリアを立たせる。
「な、なんかこの集団にいたらそのうち死んじゃいそう。」
たしかに思うかもしれないけどメトロドを倒すための仲間がそれしかいないからな。
と、思った時だった。
「ん?」
俺は近くの茂みを見つめる。
ナビさんの敵反応が一瞬漏れて構えたのだか、ただの勘違いのようだ。 まぁ失敗ってのは起こっちゃうものだからしかたない。
そう思いリュックをからう。
そして俺は歩く。
茂みに一匹のスライムがいたことも知らずに..........