アジト内で.......
「何してくれとんのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「仕方ないじゃろうが!!!我慢できなかったんじゃよ!!!」
「仕方ない訳あるか!! また、『やってみたかったんじゃ。』とかで誤魔化す気だろ!!まず言い訳にすらなってねぇけど!! ってかお前本当に魔王かよ!!」
「き、貴様!!言わせておけば何をベラベラと!! 魔王を侮辱するじゃないわ!!」
「ね、ねぇ!!今逃げてるのになんの話ししてるの!? っていうか魔王がどうしたの!?」
走りながら会話する俺たちの後ろから全速で俺たちを捕まえようとする者達の罵声が聞こえる。
.........今、俺たちが一番起こしたくなかったトラブルが起こってしまった。
まさかルミゲルがあんな行動して逃げようとしたら足を滑らせ木から落っこち、結局アジトの中に入って廊下でひたすら追っかけ回されるとは..........
........ルミゲルを連れてくるんじゃなかった。
俺は過去の自分を恨み、必死で2人と揃って足を動かす。
「くそ。 らちがあかないな!! .....弱めなら大丈夫か!?」
俺は入って足を止め、メトロド達の方を向く。
「お前たちは先に行ってろ。 俺が少し足止めする!!」
そう叫び俺は拳を握る。だが弱く、優しく握り、
うおおおおおおおおおおおお
叫ぶメトロド達に腕を振る。
すると、
うわああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
建物の中だというのに突如俺の前には突風......否、竜巻が現れ、メトロド達を吹き飛ばした。
その竜巻は止まる気配がなく次々とメトロド達を巻き込み吹き飛ばして行った。
........うん。絶対これから人には使わないわ、この力。
そう決心し2人の方向に俺は走った。
にしても湧いてくる湧いてくる湧いてくる。 何この人の量!? ここってアリの巣だっけ!? 人多すぎじゃないか!?
《きっと地下にも部屋などがあるのでしょう。分析した結果、地下奥深くにまで建造物が感知できました。》
成る程ねぇ。地下か、あっそうだ。ナビ。ここからボスの部屋までどう行けば良いんだ? 屋上近くに部屋があるのは知ってるけどどのルートに行けば効率いいのか分析してくれ。
《.........その必要はありません。》
え? でも。あの断面図だとボスの部屋は確か屋上近くにあるんじゃ........
《そこの扉を開いてみてください。》
俺はナビの指示通りのドアを開ける。
「ん? ユウトどうした? トイレでも行きたくなったか?」
そんなルミゲルに対して俺は反応せずその部屋に足を踏み入れる。
「どうしたのユウトくん。 何か見つけ........」
スーリアが廊下から顔を出すが途中で声が止まる。それもそうだろう。
まさかここがボスの部屋だとは思わないだろうからな。
「おやおやぁ。何やらお客さんのようだな。まさかあの罠に掛からないとはぁ、面白くないですねぇ?」
その人物はいかにも会社の社長のような椅子に腰掛け、机に大量のガラクタを置き、手元で何かを摩っていた。スーツの服を着こなし、髪は濃い紫色で顔の左下だけを晒した歪な仮面を被っていた。きっとその声から男性だろうと言うことは認識できる。
「お前は誰だ。」
ユウトくんが問うとその者は摩っていた手を止め下を向いていた顔をこちらに向けてきた。
「誰......とは? 君達はこの私に会うために来たのではないのかね?」
「あぁ そうだ。だがなメトロドの親玉さん。俺はお前の名前を知らないんだ。 俺の名前はユウトだ。」
ユウトくんがそう名乗り、指を自分に向けていた。
「ほぅ。ユウトかぁ。珍しい名前だなぁ。もしかすると.......まぁそんなことは置いておこう。」
そう切るとボスはその手に持っているものを片手に持ったままポーズをとると.......
「 我が名は○☆△!!メトロド達の親玉にして自称なんでも屋さんだ!!以後お見知り置きを....」
「「「は?」」」
私とユウトくんとルミゲルさんは同時に声が重なった。
だって仕方ないでしょう。 名前おかしいんだもん。
「え〜っと.....丸星三角さん? っでいいのか?」
「いかにも!!ちなみに本名は『マルガレーダー・ザ・スタールト・ア・サンクラット・カタクリコ』という者。私は歌って踊ってスキルも使えるなんでも屋さんという物も営業しているのだ。そうだなぁ、お近づきの印になんでも屋さんの私に一度は頼める無料券を贈呈しよう。」
そう言い私達はその○☆△さんに一枚の紙をもらう。
.....しっかりと住所まで書いてある......
「ってちょっとまて!!!!!!」
流石にそのユウトくんの怒鳴り声は私でも驚いてしまった。
「うん?なんだ美少女さん?私のなんでも屋さん切符が気に食わなかったかね? それならもっとキャピキャピとした切符もあるぞ?」
「そんなことじゃねぇよ!!俺たちはお前を倒しに来たんだぞ!!なのになんでお前は切符なんか配ってんだ!!!!!しかも俺は男だ!!!」
「な、なんだと!?」
その倒すという言葉に驚いたのか○☆△さんはオーバーリアクションをとっている。
「ま、まさか........」
そう切り、ユウトくんに目を向けうーん。と悩むと。
「どう見ても女にしか見えんのだが?」
「そこかよ!!!」
そのツッコミに○☆△さんは奥の椅子に腰掛け、また手にある物を摩り始めた。
「しかし私に用があるのは知っているのだが、倒しに来た?メトロドの子達がどうかしたのか?」
そう言い、まるで何かしたの? というかのように首を傾げる。
「どうしたもこうしたもあるか!!たった1人の子供が自分の足で転んだからとその子を蹴るような真似をする連中のどこが!!!」
とユウトくんが言った時だった。
ヒュン!!バキッ!!!!!!!!
風を切る音が聞こえ、私は思わず目を瞑ってしまっていたが 目を開くと、そこには壊れた机があった。その机は少し時間がたってから破壊された音を出し、崩れた。
「........なんだと?」
先ほどまでの楽天さはどこに行ったのか。
○☆△さんのそのきっちりと整えていた髪の毛は爆発でもしたかのように跳ね、手に持った物は原型をとどめていない。顔の画面には亀裂が走り、口はこれでもかというほど歪めていた。
そして気のせいか、その後ろには化け物でもいるかのような殺気と背筋が凍るほどの寒気を感じさせる幻影が見えた。
「子供を蹴った.....? メトロドの子達が?.........そんな....」
そう呟き、血管が浮き出ているのが見て取れる。
「その話は本当か?」
「あぁ。 確かに俺とスーリアは見たぞ。」
そう言いユウトくんが自分と私を指でさす。
「成る程。では君達はそんな酷いことをするメトロド達が嫌と、そしてそのボスを倒せば解決する。そう思っていたのだな?」
その言葉に私は恐怖で呂律が回らないので縦に首を振る。
「あぁ。」
「その通りじゃ。」
ルミゲルさんとユウトくんもそう言う。
すると
「ではこうしよう。 私はメトロドの親玉.......嫌違うな。幹部を辞めよう。」
「「「!?」」」
その言葉に俺たちは驚く。
「えっ!?どうして!?」
ありきたりなことを言う私に○☆△さんはそのひび割れた仮面を向ける。
「私は人と戦いたくはないのだ。そもそも私はただ頼まれただけだ。この部屋に居座ってくれ。と、そしてこの建物の中でなら自由に動いて構わない。とな。あいにく私はなんでも屋さんの家を壊されたばかりで困っていたのでな、良い取り引きだと思ったのだ。それにこの建物に住んでいるメトロドの子達は私に優しくしてくれたのだ。人とは楽しく過ごしたいと言っていたのだ。平和にしたいと言っていたのだ。それなのに.........」
そう言い○☆△さんは歯をギリッと鳴らす。するとその仮面がさらにヒビが入る。
「じゃあええっと スタさん。」
? すたさん?
私の思考が停止した時にいつの間に冷静になったのか、ユウトくんがさらに口を開く。
「お前の名前も長いからそう呼ばせてくれよ。」