メトロドへの意念
それは今から5年前、ある若者が殺される事件が発生した。
そして次の日 違う町にてある若者が殺された。
次の日もまた次の日も そのまた次の日も、毎日一度殺人が行われた。
更にその時期と同様にある町に謎の組織が現れこう言い放った。
「俺達はメトロド!!お前達人類を根絶やしにし、全てを無に還す者だ!!」
そしてその話は次から次へと広まり、ついにはそのメトロドに協力する者が現れたり、ある町を支配してしまったりと世間はどんどんと変わって行ってしまった。
「これがメトロドの誕生の真実。」
言い終わるとスーリアは目の前のぬるくなったココアを口に注ぐ。
成る程。つまりメトロドって奴らは急に現れて人類を消そうと企む悪の組織ってことか。悪い奴もいるもんだ。にしても。
「一ついいか?」
その質問にスーリアはいいよと言わんばかりに頷く。
「なんでお前はさっきまで追っかけられてたんだ?」
その質問の答えはすぐにきた。
「それは私が少しいけないをしましたからね。」
「いけないこと?ってことはメトロドからしたら困ることか?」
それを問うとスーリアは懐からある紙を取り出す。
これは?と聞く前にスーリアは口を開く。
「これはこの町のメトロドの住処を断面図として描かれた物、これをメトロドの人達から奪って来たんです」
そう言いまたココアを口に注ぐ。
成る程、だから追いかけられて......って
「ちょっと待て、じゃあお前ってメトロドの奴らが血眼になって探してる中ここに来たのか!?」
「え、はい。そうですが?」
こ、こいつ!!警戒とかそういうものはしないのか!? けれど確かに断面図は奴らから手に入れてるみたいだから何かしら考えてはいるんだろろうな。そう思い断面図に目を落とす。
そこにはこの町のメトロド達の行動についてなど、詳しいことが大量に乗っていた。
「ふむふむ。成る程のぉ。」
絶対わかってないだろうルミゲルがふぅむ。ほぉう。などと声を出す隣で俺はナビの分析を待つ。
そして10秒後。
《分析完了しました。》
早いな!?いや。別にいいけれども........っでどうだった?
俺はナビに聞く、内容は.......
《98%の確率で本物の地図と認識して良さそうです。》
そうか。なら安心だな。これは本物の地図だという。それと、
《このメトロドの本拠地を次の計画で沈めることが可能な確率は90%以上です。》
流石ナビ。俺がこの地図を見た時に俺の思考の計画から確率を分析してくれていたようだ。
ちなみにいきなりこのような行動をとっているには理由がある。それはさっき、この店に移動する途中の出来事..........
「.......ねぇ。はぁはぁ。 いつまで ....走るの!?」
「.......では少し休みましょうか。」
そう言われやっとこさ俺はベンチを見つけて腰を下ろす。
はぁ。疲れた。
そう思いつつ俺はナビにどのくらい走ったか聞くと、5キロほどは爆走していたようだ。
少女の方も疲れていたのか汗を布で拭いてベンチに座っていた。
「.....どこまで行くんです?」
「へ?」
俺が質問すると唐突で驚いたのか少女は変な声を出すと頬を染め、再度布で拭きながら....
「あと少し。」
「........どのくらいですか?」
「...........1キロくらい?」
「長えわ!!!」
思わず突っ込んでしまった。
少女は布をベンチに置くと立って背伸びを始めた。
........疲れてるように見えないんだが?
そう思った時だった。
「........あ.........」
そんな声とともに俺と少女の前で1人の女の子が転んだ。
俺が立った時、女の子が転んだ理由が理解できた。
ある男がベンチに座ったまま足を伸ばして女の子を転ばせたのだった。
それにその男が気付くと男は立ち上がった。
俺なりには謝るのか?と思った。が現実は違った。
「お前。誰の足に転んでんだ?」
そう言い放つと男はその女の子の腹に蹴りを入れた。
「「!?」」
俺と少女が驚く中、男は蹴飛ばされた勢いでむせている女の子に睨み言い放つ。
「メトロドのもんだぞ? よこそんな俺様と足に転んでくれたな。あ?」
俺はその男に殺意を向けた。
メトロド?知るか。ともかくこいつをぶん殴る。そう考え、一歩踏み出した時だった。
「やめて下さい!!」
少女が男と女の子の前に飛び出し女の子をかばうように身構えた。
「あ? なんだてめえ?」
「......この子の関係者です。」
「へん。お守りってやつか? まぁどっちにしろいいがな? だが お前が出て来てどうするんだ?」
その威圧をかける男に少女は歯をくいしばる。そして
「私がこの子のことはしっかりと言っておくので......どうかこのとおり。」
頭を下げ、そう口を開いた。
男はそれだこ見ると、ふん。と鼻を鳴らし去って行った。
「大丈夫か?」
俺が女の子にそう声をかけると少女はコクリと頷いて立ち上がった。
「痛くなかった?」
少女はそう言い、女の子の頭を撫でる。女の子はコクリと頷くと少女に撫でられ、頬を染める。
少し時間がたち、痛みが無くなった。と俺と少女に伝えると、女の子は
「ありがとうおねぇさん。おにぃさん。 うれしかったよ。 じゃあね。」
そう言い残し走って行った。
「.......なぁ。 あの男。誰だ。」
「..........この町を支配している人達。 詳しいことは私が行くところに着いてから。」
そう言うと少女はまた走り出した。
俺はそのことを思い出し、右手に力が入っていたことに気づく。俺はそれを抑えると女の子の顔を思い出す。
まるでこの町にいるのが辛そうに、ベンチで休んでいた女の子を.......
だから。
「スーリア。この拠点の地図を手に入れて.....何をする気だ。」
俺の問いにスーリアは真剣な表情で言う。
「この町はこのメトロドのせいで機能していない。それどころかあちこちでは人が死んでるの。」
スーリアは拳を握る。
「この町は私がお世話になったところ。 だから。この町のメトロドの奴らを追い出す。」
スーリアは手を伸ばす。
「協力してくれる? ユウトくん。 ルミゲルさん。」
その手を俺は即座に掴み、ルミゲルは頷く。そして言い切る。
「勿論だ。」