人生・日常 PART3
「碧いおもちゃ箱」シリーズでご覧下さい。
「移ろう心」
弱いから
どうしようもなく弱いから
差し伸べられた手に縋りたくなる
けれどその手は取った途端
崩れ落ちてゆく
砂の城のように
何もかも虚像でしかない
愛も恋も
確かに誓った言の葉さえも
「孤独の街角」
人の流れに身を任せ
夜の街を一人彷徨う
誰でもいい私に気付いて
私が私であるという事を
誰でもいい認めて欲しい
鉛の想い飲み込んだまま
今日も私は独り彷徨う
電源をOFFにした
携帯を握り締め……
「つぶやきの音符」
ショパンにバッハにベートーヴェン
モーツァルトにブラームス
リストにシューマン、シューベルト
偉大なる古今の楽聖達は
今も尚
天上で音を紡いでいるのだろうか
そんな他愛ない空想と戯れる
至福のひととき
指は軽やかに鍵盤を駆け抜ける
「一日の始まりは」
頭の上でベルが鳴る
寝不足の目をこすりこすり
FMからはバロックの響き
ヒーターを入れる間だけど
もう一度ベッドに潜り込むけれど
容赦なく朝はやってくる陽は昇る
ガウンを羽織って珈琲を淹れたら
まだ夢の中にいるあの人に
モーニング・キス!
そして今日も一日が始まる
「都会の雨」
アスファルトの上に夕立
書類ケースを頭に掲げ
慌ててカフェへと駆け込んだ
濡れたパンプスを気にしながら
ぼんやり外を眺めていると
人工的な木々の緑が葉を揺らしていた
雑踏の埃を落とし深呼吸している様に
不味いブレンドに舌を打ちつつ
何故だろう理由もなく
雨の匂いを感じていた
にわか雨が止みかそけき虹を映しだしても
そんな事は知らぬ気に再び都市は動き出す
「キャフェテリアにて」
ある夏の休日
アイスティー片手に
「若い娘ていいわね」と
思わず知らず呟きが漏れる
溜息をついた私の向かい側で
「年を経るのもそんなに
悪いことではないよ」て
私と同い年の彼女が明るく笑う
物憂気に氷をかき混ぜていた私の
ストローを持つ手が一瞬止まって
私はほんの少し悔しい気になる
「泣かない」
日常のささやかな諸々に悩み
過去のひとひらになお傷つき
未来に希望もみつけられない
それでもあの日あの人と約束
したから何があっても絶対に
私は泣かない生きてるかぎり
「生きてく辛さ」
たとえようもない悲しみに覆われた時
人はどうやってその身を支えることが
できるのだろう……
たったひとり誰の助けも借りることなく
「孤独」
求めしものは彼方にありて
苦悩の霧に覆われし
闇の中、つぶやきて
独り
「白昼夢」
あの夜の想い出に抱かれた時
彼方にあなたの幻を
見た
「流れ星」
涙ひと雫光って落ちた天翔る流星のように
了