第九話 私は何を踏んで転んだか。それを、私とBちゃんで推理する!
頭を打ったせいだろうか、こんなに感傷的になったのは。あまりに横道に逸れてしまった。
私が今知りたいこと。それは何だ! それは、私はあのとき、何を踏んで転んだか、だ。それを推理しなくてはならない。
ちょっと頭の中だけで考えるのは無理があるな、と思った私は、先ほど、動くのはやめておこうという考えを浮かべたことをすっかり忘れ、ベットから出て、動き出そうとしていた。
するとBちゃんが止める。
「まだ安静にしておいたほうが。Aちゃん。」
とっても心配そうにされたのでそれに従うことにした。だが、じっとしているつもりはなかった。できることをやろうと私はBちゃんに頼む。
「私学校の制服着てるよね。ってことは、ある! よね。上履きはどこ?」
そうして、私たち二人の謎解きが始まった。
「うん。ちゃんと持ってきてるよ。」
Bちゃんは白いナイロン袋に入れられたそれを私に見せた。
「それはいてこっから駆け出すつもりはないから、ちょっとそれこっちに。」
すると、Bちゃんは一切疑うことなく、すんごい素直にそれを渡してきた。
私は当時の記憶を振り返る。私は確か、左足で何か踏んで、つるっとした筈。となれば、左足の上履きに踏んだもののヒントが残っているのではないか。そう思ったのだ。
なんかなかなか破れない袋をがんばって裂きながら、私はBちゃんに考えを述べる。
「これのね、裏側ね、見るとね、踏んだものが何か分かるんじゃ、ないかな、って。あ、やっと破れた。」
そして、生唾を飲み込んだ私は、左足の上履きを取り出し、その裏側を見た。すると、真っ赤な血とともに、何かくっついていた。
「うわあ……。」
「うわあ……。」
私たちはハモって同じような顔で同じことを言った。
二人でそれをよーく見る。何かヒントがないかと。
「ねえ、Aちゃん。何か張り付いてるよ。」
そう言って、私の血でべったりの何かをAちゃんは取り外した。それが何か全く検討がつかない。
「ねえ、Bちゃん。悪いけど、それ、水で洗ってみてくれない?」
そう言うと、Bちゃんは厭な顔一つせず、それを部屋の洗面器で洗った。すると、Bちゃんが声を上げる。
「これ、紙だよ、Aちゃん。掲示板に貼ってあった、学年便りだよ。」
あっさり謎は解決した、わけではなかった。どうやら私は紙を踏んで転んだらしい。だが、それなら、あの音は何だったのだ?
「Bちゃん。私が紙を踏んでマヌケに転んだのは分かったよ。でもさ、じゃあ、あの私が滑るときに響いた、シャラッ!!! って音は一体どう説明したらいいの?」
「紙のぐしゃって音じゃないの?」
そっけなくBちゃんは答えた。だが、私はそれに納得できない。
「たぶんそれもだけど、それだけじゃあなかったの。何か他にもあったような気がする。足りない。」
「あ、それならこれじゃない?」
洗面器に手を伸ばし、何か指先でつまんだBちゃんはこっちにやってきた。
「えぇぇぇぇぇっ!」
そうして、私たちの謎解きは、開始10分程度であっけなく終了したのだった。